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話の内容的には地味かな。左織の一生といったところか。ただ、自分とタイプの違う友人を持つ描写が素晴らしく、嫉妬もあり葛藤もあり、それでも何かのたびに一緒にいる、頼ってしまうというところもなかなか共感できるところが多く、自分と重ねてしまった。
タイトル好きだなー。美しい。
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「本の雑誌」40年の40冊より。文庫化を待ってました。とある家庭3世代の日常を、家族関係の葛藤を中心に綴るという、パターンとしては目新しいものではなかったけど、人物造形と物語構成が絶品でした。家族以上に家族みたいな親友の存在が、要所要所で良い味出してますね。結局本人の口からは真意を明かされなかったけど、その辺もまた、うまく見どころになってますね。あと、帯を見て”ホラー的な要素があるのか?”と思ってしまったけど、全然関係なくてびっくり。”この帯、販売促進に対して有効なの?”とか、余計な心配しちゃいました。「八日目の蝉」よりこっちのがずっと好き。となると、他の作品も読んだ方がいいかも。
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数奇な運命で一生を共にすることになる左織と風美子。
その出会いは疎開先で始まっていたが、左織は覚えていない。そのことが、次第に左織を疑心暗鬼にさせる。
風美子は一体なぜ自分の側にいるのか…。
昭和という時代に型通りの生き方しかできなかった左織の、風美子への複雑な心境がなぜかよく理解できた。そんなことはない、被害妄想だと思っていても、左織の暗い気持ちに引っ張られて読んでいて辛い場面もあった。
左織に限らず、人は60を過ぎてようやくあるがままの人生を受け入れられるようになるのだろうか。
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ストーリーには引き込まれて一気に読みました。
が、主人公の佐織がどうにも好きになれず、自分の母と重なるところも多くて、読むのが苦しかったです。。。
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角田光代著「笹の船で海をわたる」
同じ学童疎開を経験した佐織と風美子はそれぞれその経験を消したい過去、引きずる過去として自分の生き方に絡めて戦後を生きる。自分の人生は自分で作り出していくものなのか、誰かに選択を迫られ自分以外の力に引っ張られて行くものなのか。
戦争という異常事態の中で幼少期を過ごした少女達が、戦後、そして戦争がまるで無かったかのように振る舞う現代までの激しく移り変わっていく世の中で価値観の変化に翻弄されながら、あるいは変化の波に乗りながら生きる。
相反する性格の二人の女性から見る昭和史のようだ。
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さすが、、角田さん。女性の内面が鋭く描かれてる。主人公が、いつも疑心暗鬼でいらいらしながら読み進んだ。が、結局、子供達はまとも?に育ったし、住処も満足なところを見つけたし、羨ましい限り。もっと、ミステリー性あるのかなと思ったけど、ハッピーエンド?
作中いつ、タイトルの文が出て来るのか、ワクワクしながら読むのも、楽しみの一つです。
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私は角田さんのファンだから贔屓目で見てしまうのかもしれないけど、にしてもやっぱり良かった。角田さんお得意の、なんかようわからんけどこうなった、的なテーマ。戦時中の疎開体験とか、親からみた子への思いとか、老年の思いとか、が戦後の歴史とともに綴られているのだが、自伝でもないのに、よくもまあこんなに細やかに書けるもんだと、感心する。だからこそ逆に、ところどころサラッと流し過ぎと感じられる箇所もまだあり、本当はもっと書けるんじゃないかとも感じさせる。
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ずっといらいらしながら読んでいた。主人公沙織の心の一人語りが気持ちのいいものじゃない。娘に嫌われ、「お母さんみたいにはなりたくない。自分の頭で考える」という。自分もこの気持ちはよくわかる。戦争を知ってる親を持つ人にはわかるのかな。とても平凡で自分で何かすることができないと子供がこんな風になるのかな、て考えたり。そんなことは誰にもわからないはずだけど沙織の心の内を聞いてるとそんなことも思ってしまう。物語の根幹である風美子、人生を見返すために現れたのか?その夫潤司と一瞬共感していることを知る沙織。今まで誰とも心を通わせていないのでやっと解放された気がした。悲惨な戦争、女性が自分の考えを持つことが浸透していなかった時代背景。そして戦争と同じように自分が人にしたことを人は忘れてしまうのか、というのが全体を通して感じたこと。さ
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最初は暗そうな話だなぁと思いながら読んでいたけど、だんだん引き込まれて行った。
風美子の真意が知りたくて読み進めたけど、結局最後まで左織目線で真意は分からずモヤモヤ。。
風美子みたいな人がずっと自分の近くにいたら、、私も左織みたいになっちゃいそう。
いろんな意味で怖い話だと思った。
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ああ、こういう女性、本当にいそうだなーと思う。
人生って難しい。
長く生きて、自分の経験が拠り所で、そことは違う価値観や生き方に、畏怖を抱いたり、憧れたり、嫉妬や妬みを感じたり。
それでも自分は自分のまま、流されるように生きて行くしかないと思う。
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祖母または、母親の年代の女性の話
中年女性あるあるかな?
戦争は知らないけど、よくないことがあると あのときのバチが当たった?とか、
自分はとても優しくない人間なのではないかとか、ぐずぐず考える時ってあります! 読んでいて なんだかゾクゾクしました。
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何なんだろう、この人。左織。
超マイナス思考?
歳は私の母親と同じ世代。戦争中、親元から離れて疎開をしていたつらい経験を持ち、その疎開先で一緒だったという風美子という女性から、街中で声をかけられる。風美子はどんどん自分の生活の中に入り込んできて、ついには夫の弟と結婚し、義姉妹の関係になる。
風美子は明るく活発で、料理研究家として成功し、友達も多く華やかだが、子供のころ、疎開先で苛め抜かれた経験を持つ。その話を聞かされた時、左織はもしかすると自分はいじめた側で、彼女はその復讐のために近づいたのではないかと不安になる。真相は逆で、優しくしてくれた左織の本当の妹になりたかったと風美子は言うが、猜疑心は消えず、子供たちの風美子へのなつき方や、夫温彦との仲の良さを見るにつけ、家族を乗っ取られたという被害妄想が止まらない。風美子にはさんざん世話になっているのに、娘との関係がうまくいかないのも、息子が性障害になったのもすべて風美子のせい、彼女の思い通りの人生を生かされている、と考え始める。
自分の人生は自分のもの。結果や経過がどうあれ他人に責任を押し付けるものではないと思う。風美子を受け入れたのは誰でもない、自分自身なのだから。
約半世紀にわたる女の物語だが、時代が行ったり来たり、事象から入り、その後やっと状況説明に移るという、凝った作りではあるけれど、少々読みにくかった。
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平凡さを望むあまり、家族にも無意識にそれを押し付ける主婦・佐織の半生を、日本近代史と共に描く長編小説。
幸せ溢れる達成感があるわけでもなく、虚無感だけの寒々しさに陥ったわけでもない。客観的には平凡な人生といえる彼女が、死を迎える時何を思うのか。人生って自分が作るものじゃなく、周りに支えられて成り立つものなんだと思う。
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物語はある女性の一生(と言っても晩年あたりで終わるのだけど)を描いたもの。
第二次世界大戦での疎開を子ども時代に経験し、その後の日本の復興と発展を見、そして平成へと時代が突入していくなかで、仕事や結婚や子育てをする佐織という1人の女性の葛藤が描かれている。
子ども時代の知り合いで後々義理の姉妹になる風美子は先進的な考え方の持ち主で、バリバリ働く女性の先駆けのような人間で、佐織は幾度となく風美子に助けられながらも、彼女に対するコンプレックスやほのかな恨みのようなものを捨てきれないまま年齢を重ねてゆく。
過去の罪は果たして、後の自分に復讐をしてくるのだろうか。因果応報というものはあるのか。
佐織は、子ども時代にしてしまったかもしれない“ある罪”を忘れられないままで生きていて、自分の人生がうまく回らず立ち止まる度に、その罪が自分に仕返しをしているのではないか?と考える。
飄々と自由に生きる風美子には無さそうな感覚だし、夫にも「そんなことはない」と言われるが、やはりその考えを捨て去ることが出来ない。
はたから見たら佐織は充分に幸せで、優しい伴侶を得て子どもを2人もうけ、親兄弟にはやや恵まれないものの、支えてくれる周りの人もいて普通の生活が出来ている。
自分のなかでうまくいかないことを過去の何かと関連づけてしまって、「あのときのあのことのせいで今こうなってしまったのではないか」と悪い考えに囚われてしまうことはきっと誰にでもある。
人は自分の人生の道筋を1本のストーリーに変換してしまう性質を持つから、人生のなかのまったく関係のない出来事同士を関連させて考えてしまうことがある。過去の人間関係のトラブルによるトラウマを、新たに築かれた人間関係のなかに重ね合わせてしまったり。
日々は続くから人生は1本のストーリーのように思えるけれど、そんな風に関連づけて苦しむ必要はないのだと、読んでいて私は思った。無意識に関連づけて苦しんでいた自分に気づいた、という方が近いかもしれない。
佐織が人生の晩年を迎えたあたりから物語は始まり、過去の回想をして、再び同じ地点に戻って物語は終了する。
佐織のなかには長い人生を歩んだ上で得た気づきと、元の自分のなかにあって捨てきれないものが混在したままだけど、気づきによって少しだけ楽に生きられるようになっている。
角田光代さんはやはり、どんな人間のことも見捨てない作家さんだ、と思う。派手な救済もしない代わりに、そういう事もあるよ、と語りかけてくるような読み心地がある。
少し時間はかかったけれど、今の私が読むべき物語だった、と思う。
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戦時中から戦後の日本を生き抜いた二人の女性の人生を描いた物語。
二人の対照的な人生の生き方を見ていると
一体どちらが幸せだと思ってしまいました。
左織のような昔ながらの専業主婦で慎ましく生きる人生、
風美子のように仕事をバリバリとこなし周囲から羨ましく思える人生。
左織は常に様子を伺い何かするのに
臆病になっているところが見えますが、
まるでこれを見ていると自分の一部分を
見ているような気ににもなってしまいました。
だから風美子が羨ましくも思えたり、
時として不安に駆られることがあるのだなと思いました。
風美子のように自分の人生は自分で切り開いていく
ということが出来るタイプに性格は本当に羨ましいです。
こうしたくても出来ない左織の気持ちも分かるので、
娘となかなか折り合いがつかないところがまた否めないです。
それにしてもいつも風美子は何かにつけて、
左織の家族や人生にまとわりついているので
ちょっとドキドキしながら読んでしまいました。
過去にあった事に対しての因果応報というべき
ものがあるのかと思いながら・・・
風美子は左織がいたから生き生きと過ごすことができたのか、
それとも自分なりの生き方でこんな風になったのか
それは定かには分からないですが、
心の奥底では寂しさや辛さがあったからこそ、
左織という友達のそばにいたかったのかとも思えました。
不幸なできごとはあったけれど、
不幸な人ではないという言葉にちょっと救われたような気もしました。
どんな人生を送っていても、
隣りの芝生は青く見えるものなのかと思ってしまいました。
主人公の家族との相性と人生の切なさが何とも言えない余韻の
ある作品でした。