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紙の本
データ集なのだが物語を想像させるものがある。
2017/11/12 20:52
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
米の品種について、育成年や生誕地、両親の品種や特徴をまとめてある。一種は半ページ程度。その半分は写真だが、それでも多様な情報が入っている。「仕事で必要」になった人には有用なのではないだろうか。「素人」にはいろいろな想像をしながらの読みどころがあって楽しかった。
「酒米」という限られたニッチェのハンドブックと思って開いたのだが、米全体についてもいろいろわかって面白かった。作成者も個人があったり、農業試験場があったり、酒造会社があったり、農業高校があったり。改訂版なので、育成年には2015年という最近のものも含めてある。古来から日本人は改良を重ねているのだ、と改めて驚く。
いわゆる「品種改良」の話なのだが、掛け合わせるだけでなく選抜があったり突然変異があったりと手法もさまざま。復活した古来の品種などもあったりして来歴もさまざまだ。農林22号と農林1号の子どもがコシヒカリだったり。その辺を一つ一つ見ていきながらそれぞれの物語を想像してしまう。短いデータから想像が膨らむ。説明本文は簡潔で分かりやすい。欄外の「一言コメント」や「コラム」にもちょっとした話があったりして楽しめる。
名前だけでもまた別の面白さ。地域や親の品種から名前の一部をもらったものもあるが「名は体を表す」ものも多い。「白雪姫」なんていうのもある。「なんとか錦」「なんとか富士」なども多くて「何かに似ていると思ったら相撲のしこ名。日本古来の伝統を伝えるものにつく名前としての共通点がなにかあるのだろうか。
ササニシキとかコシヒカリとか、酒用にも使われる食用一般米も載っている。ここ数年新しい品種が市場にも増えてきたので、そういうもの中心でも良いから食用米で同じようなハンドブックを是非出してほしい。粘り気とか冷めてもおいしいとかだけでなく、きっと本書のような「物語」の楽しさがたくさんあるだろう。
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