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壁一面の大きな絵画を間近で見ても、なにがなにやらわからない。けれど少しずつ遠ざかっていくと、だんだんと何が描かれているのかがすっと理解できてくる。
ケイト・モートンのこの作品はそんなふうに、ひとつの「事件」を核としながらも、なにがどうつながっていくのか不明で、この場面が何の意味を持つのか、この人はだれなのか、さまざまな疑問をあらゆる角度で持たせながら、長い長い物語の果て、最終的にはひとつのみごとな絵を創りあげていて…、感服しました。
核心へ至るまではバラバラにしか見えなかったピースが、どれもが意味があったこと、あらゆる場面にヒントがあったこと、その用意周到さは緻密のひとことです。
そのために、なかなか核を見せずに進んでいく物語にじりじりさせられるのですが…、終盤の胸をすくような真実は、ある意味出来過ぎかもしれませんが、素晴らしい収束だったと私は思いました。
人が人を想うことでなされたあのことそのものは、悲劇であり哀しい選択だったとと感じます。けれど、その行動の勇気、そして愛情の力の尊さを何より強く、かけがえないものであったとも思いました。
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ページをめくる手が止められませんでした。下巻を1日で読むはめに。実に緻密に編まれたストーリーで、素晴らしい読み応えでした。何となくそうじゃないか、、と思っていた通りの展開になり、かえって唖然としました。一年後のロンドン、そこには愛も恋もあって、ページの上から思わずよかったね、と言いたくなったほど。読者をこういう心境にさせてくれる、見事な作品です。
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違法行為をして謹慎中の女性刑事が,ひょんなことから70年前の幼児失踪事件に首を突っ込む話.話は現在と過去を行き来し,ある家族の肖像が徐々に浮き彫りになってゆく.イシグロ的な「信頼できない語り手」とまではいえないが,それぞれの若さ故の,年齢相応の誤解と思い込みが,長い年月を経て訂正されていく過程を経て,現在の刑事が抱えていた問題も含めた全ての伏線が回収された結末になだれ込む.エリナの役割は例えていうならば,「樅の木は残った」の原田甲斐,「蒼穹の昴」の西太后,といったところか.33章では,「何故エリナが1946年にああしたか?」について,会話で触れてもらうとよかったかな(分かるんだけどね
).
ケイト・モートンは「翻訳ミステリー大賞」を過去2回受賞しているらしいが,これまでの作品全てを読みあさりたいと思った.
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登場人物が多く、過去と現在を行ったり来たりする展開は、読者はを混乱させる。それがクライマックスに向けて収束し、見事な結末となるのだが・・・。やはり主要登場人物一覧くらいは用意してほしかった。これから読む人は、人物の相関図を書きながら読み進めるといいかもしれない。特に謎を解くのが好きな人であれば、解決の糸口になりえるだろう。私は相関図の作成をしなかったので、読了までの時間が長くなってしまった。プロットが良いだけに、丁寧に読まなかったことを悔やむ。
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70年前の乳幼児失踪事件の真相が解明される下巻。
探偵役の女刑事の推理が迷走した上に、真相を知っていたと思った次姉も長姉からの話を知って迷走しだして、読者はミスリードされて今います。
意外な大団円はハッピーエンドでした。
読み終わって、各章の構成を見直してみると、真相について自分の推定の一つにあってもよかったと思いますが、完全に裏をかかれました。
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1933年にある家族に起きた幼児失踪事件を起点に、謎が時を行きつ戻りつしながら解明されてゆく展開。
主要な登場人物それぞれに謎があるため非常に複雑なミステリに見えるが、それぞれの謎はそれほど複雑なものでもなければ奇想天外なトリックがあるわけでもない。しかしその人物たちが歴史の中で重なり合い、謎を解明するヒントが時間経過を前後させながら語られてゆくため、全体として大きな謎を感じさせるのがこの小説の上手さだと思う。
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章ごとに過去と現在、また複数の視点から描かれて、まさに薄皮を剥いでくように事実が少しずつ明らかになっていく。
途中似たような体験が複数出てきて、最後はちょっとやり過ぎなんじゃ無いのーと思ったが、大人の為のお伽話なのだという解説に妙に納得。なので読後感は良い。面白かった!
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「忘れられた花園」に続いて2作目のケイト・モートン。上を読み終えてから、どっちの方向で終わるのか心配で読み終えないと眠れない。。。ということですでに27時。。。こっちかー。
はー。
忘れられた花園の後味よりこっちの方が好きです。彼女の作品を秘密の花園以外で見ないのだけど、他のも探してみよう。
イギリスの方かと思うほど昔のイギリス文化を描写しているのだけど、オーストラリアの方ということに少し驚いた。
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上巻最後から面白くなった。
下巻になると、登場人物にいろいろな事情が現れてくる。
関係者が魅力的になることで面白くなった。
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初めてのケイトモートン。
上巻の最初はダラダラしていて読みづらく面白くないなと思ってたんですが、上巻の最後あたりから急激に面白くなってきて引き込まれてしまいました。
ラストにも衝撃を受けました。
読後感もすっきりとして非常に気持ちの良い終わり方でした。
上巻をざっと読んでしまったことがちょっと悔やまれますのでこれから読む方は我慢してでもじっくり読まれる方がいいと思います。
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70年前、イギリス郊外コーンウォールの湖畔荘で消えた赤ん坊。迷宮入りした過去の事件に興味を持ったロンドンの女性刑事。過去と現在がやりすぎかと思うほど往還する。人物相関図や出来事の結び付きも、時間の経過が複雑でややこしくなってくるが、下巻になって繋がり始めると先が気になりはじめて止まらない。読み終えてから思うことは、"もっと丁寧に読めば良かった"の一言に尽きる。多数ちりばめられたキーワードや、プロットの巧妙さをじっくり楽しむため、再読しようと思う。
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1910年代、1930年代、2000年代を行き来する。風光明媚なコーンウォールそしてロンドンの間で物語は進む。70年ほど昔、コーンウォールのエダヴェイン家のミッドサマー・パーティの夜に息子のセオドアが行方不明になって、警察の懸命の捜索にも関わらず迷宮入りとなってしまっていた。この謎を謹慎中でコーンウォールの祖父の家に帰っていたロンドン警視庁の女性刑事のスパロが未解決事件と知って興味を覚える。そしてエダヴェイン家の次女であり、高名なミステリー作家になっていたアリスも謎を解きたいと思っていた。
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前半は年代が交互に来るので、ちょっと入り込むのが難しかったけど、この書き方にももう慣れたかなσ(^_^;)
楽しんで読めました!
最後余りにも大円団過ぎて笑ってしまった!
そんな何もかも上手く行くか?!
安心してどっぷり楽しんでください!
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最後まで入り込めずに終わった。今の私には合わなかったということかもしれない。結末も予想通り。でも、これでもかというほど伏線が散りばめられていて、再読、再々読に耐えられる作品だと思う。
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1933年、イギリス、コーンウォールの湖畔荘ローアンネスに暮らす家族に起こる事件を中心としたミステリー。
過去と現在、過去の過去、1つの事象が多数の登場人物の視点によって見え方がかわり、その解釈によって進むストーリーが巧妙でお見事。
1933年の事件以外にも現在、過去の謎が多く散りばめられていて読み応えがあり、なおかつ一人一人の人物像が鮮烈であるがゆえにハウダニットからホワイダニットに重点が置かれて無理なく描かれている点も好印象。
最後に明らかになる謎には、偶然にも程がある!ご都合主義!言われる側面もありそうだが、これだけ悲惨な体験を通ってきた全登場人物の苦労が報われるためにも、この結末はありだと思う[じゃないと辛すぎる!)
初めは情報量にそれぞれの位置が掴みにくく感じて読む速度は鈍く感じるが、焦らず丁寧に読むと、進むにつれて謎や誤解がジリジリと解けていき加速度が増す。
読み終わりは(あとがきにもあるが)マラソンを走りきったような爽快感。いい読み応え。
舞台設定といい謎解き、人物像といい、大好物!
…どうしても、最後まで明確にならなかったエリナの死の瞬間。その謎だけが心残り。