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NHK『銀河テレビ小説』を見たかのような、ゆるめのほっこり、毒にも薬にもならない良くも悪くもいい暇つぶしになる作品。
主人公はバツイチ独身、ガラケーを使い、60-70年台のロックを愛する昭和臭をプンプンさせた45歳の自動車教習所教官。日々教習車に乗り込んでくる様々な人との交流を描くのかと思えば、冒頭いきなり、別れた妻と同居する17歳の娘が妊娠したという報せから物語はスタートする。教習所なら即刻注意されそうな急発進だ。 まぁ、まどろっこしくなくて話の本筋がすぐに把握できてよい。
以降は高校生の娘の妊娠問題を軸に、別れた家族との絆を少しずつ回復する主人公と、彼を取り巻く教習所の同僚と教習生の絡みがゆるく描かれる。
章立てが月毎に7月から翌3月まで。これは教習所の規程にある1時間目を受講してから、第2段階後の技能講習(卒検)を終えるまでの期限が9ヵ月であることを示している。娘の妊娠が発覚するのが冒頭なのも、その期間を経て出産に至ることを暗示させる。
この教習所の期限と妊娠期間の符合は本作品の肝で、そこに思い至ったのは作者の功績というか、構想する時点で「やったね!」とでも思ったのではなかろうかと想像する。
著者の作品ははじめて。悪くはないが良くもない。気の利いた台詞、言い回しもあるが、膝を打つほどのものでもない。総じて、男がダメで、女性がしっかり者として描かれ、まぁ、世の中もそんなもんだろう。渦中の娘の毅然とした態度は胸を打つ。
妊娠を理由に学校も辞めることになる娘(美月)。母親との会話で、
「やめる」と美月。
「本気?」
「本気」
「後悔しない?」
「してもいい」
おお、強いな。すかさず主人公の父親も
「やられた。いい答えだと思う。しない、じゃない。してもいい。後悔はするのだ。することはわかっている。だが受け入れる。いい。ちゃんと見えている感じがする。」
と心の中でエールを送る。11年の間ずっと離れていた娘と”事件”をきっかけに再会を果たし、少しずつ心を通わせていく物語進行はちょっぴりホロっとさせるね。
作者の年代も近いことから、主人公の感性や子供に対する思いは著者自身のものに近いのだろう。その他、昭和な想い出、感慨も作者自信のものだろうなと思わせる。自分の感慨にも近いものだからなおさらそう思う。非常によく判るところだ。
「S字、クランク、ロックンロール!」は、本書のキャッチコピーだが、本文の中にも出てくる。60年代、ヒッピー文化の三種の神器?「SEX,ドラッグ、ロックンロール」をもじったものだが、ロックも本書ひとつのキーアイテム。とは言え、各章ごとのタイトルでもあるが、BGM程度の使われ方で、最終章の「When I paint My Masterpiece」(The Band)くらいかな、ピタリと内容ともハマっているのは。
ともあれ、60、70年台のロックの(というよりカントリーに近い)BGMは、読んでいる間、YouTubeで流しておくには心地好かった(このあたりも同世代的共感?!)。 ロックがかかる主人公が通う地元のバー「So and」関連の人たちも、程よい脇役っぷりを発揮している。
教習所に通う��徒たちも、それぞれ個性があって面白い。が、クセ者やアクの強い人物がひとりもおらず平均的。悪くないんだけど、総じてNHK『銀河テレビ小説』的なんだよな~。
嗚呼、昭和。
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小野寺史宜 著「本日も教官なり」、2017.9発行。蜜葉市四葉自動車教習所の教官をしている益子豊士(ますこ とよし)45才の物語。S字やクランクの感覚、運転で特に注意することや心構えを教習者と同じ気持ちで聞きながら読み進めました。しかして、本題は、11年前に離婚した元妻美鈴、そして娘美月との関係が中心テーマ、美月が高校2年で妊娠したことから父親としての役割が生まれ、始めはぎこちない関係から徐々に父と娘の心が通い合うといったハートフルな物語。そして、それに呼応するかのように元妻との復縁の兆しも~。
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さくさくさくっと読めました。
高校2年の娘に子供ができたという
なかなか大事件で始まったにもかかわらず、
そこはすすすーっといくのです。
それ以外も全部すすすーっといくのです。
年末、読むにはもってこいでした。
重い話はできれば読みたくないので。
でも、しのさんという高齢者の方とのやりとりは
なかなか考えさせられました。
教習所の教官という立場を超えて、
相手を思って言う男気、ロックですね。
私もそうありたいものです。
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自動車学校の教官、益子。
妻と別れ、転職し、職場と自宅と行きつけのバーを回遊するような生活を送る45歳。
ある日、別れた妻から電話がかかってくる。
「美月が、娘が妊娠した」
相手は誰?産むつもり?学校は?
別れた元夫である自分に相談してくれた事実を嬉しく思いつつ、そして再び娘に会えたことを喜びつつ、少しでも娘を支えたい、守りたいと奮闘する益子。
さらに、自動車学校には様々な弱点を抱える生徒が益子を指名してくる。
カーブで膨らむ35歳女性。
孫のために免許に挑む69歳の女性。
サッカーにかける男子大学生(就職間近)。
完璧な人間ではない益子ですが、娘に対して、そして元妻に対して真摯に向き合っている姿に感動しました。
自分が悪かった、と思えば子供相手にもしっかり頭を下げて謝罪できる度量の広さや、言い難いことも誤魔化さずに伝える強さは、この作品の大きな魅力だと思います。
ただ、欲を言えば、もう少し「教習」のシーンを掘り下げ、じっくりと描いて欲しかったな、とも思います。
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さっくり読め面白かった。
娘(離婚した妻と暮らす)の妊娠から始まり教習所での生徒さんとのやりとりなどなど。
わりと希望を持てる感じで終わって良かった。
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11年前に離婚した教習所の教官益子、別れた妻と暮らす高2の娘が妊娠したという。
元夫だけれど父親、娘に会えるのは嬉しいが、現実にブルーにもなっていた。
益子がとにかく魅力的。
著者の作品に登場する多くの男性の様に、ゆるい雰囲気をまとっているのに、一本芯が通っている。
教官としても、生徒達との距離感がとてもいい。
こんな教官の元で免許取りたかったなと思います。
娘の問題にもきちんと向き合い、程よい距離感で助け船を出す、そんな姿に好感が持てます。
父親はどんなことがあっても娘を嫌いにならない、そんな深い愛情にもグッときました。
著者の作品にはハズレ無し。
胸の奥がポっと暖かくなるような、素敵な作品でした。
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「ポーグスの気分 」YouTubeで聴いて、分かった!
なるほど、そういう気分か。
便利な表現方法だと思うけど、言葉で表してこそ
作家ではないのか。
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すいすい読めた。
昔はヤンチャな、良太や七八のようなタイプを好きになっていた。
でも、大人になって、歳をとると
主人公のような、真面目で筋のとおった人がいい
と思うようになった。
今の私の歳で読んだからこそ、
色々感じられる事があったのだと思う。
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初読みの作家さんでした。
とても良かったです。
血の繋がりなんて…
と思っている私でもホロっときました。
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自動車教習所の教官の益子さんが主人公。
大きな事件もなく、教習所に通う人たちの事や益子さんの家庭の事情が書かれているのですが、読んでいるうちにホッとするというか、いい結末でした。
私が通ってた頃は怖い教官ばかりで優しい人がいると女の子たちは指名してたなぁとその時の教官と益子さんが重なって懐かしくなりました。
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教習所の教官の日常。
離婚した妻から、娘が妊娠したと告げられて、驚き戸惑う気持ち。
17歳で妊娠した娘を、影ながら支えようと奮闘し、
教習所では老若男女の人々の車の運転を指導していく。
とても柔軟な考えを持っていて物分かりの良い中年主人公だけども
ちょっと独りよがりにも感じたが
娘さん、無事に産まれてなによりです。
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バツ1・40代男性、教習所教官の物語。
七月 ウイスキー・イン・ザ・ジャー
八月 ハング・ダウン・ユア・ヘッド
九月 フライング・ハイ・アゲイン
十月 いつもの朝に
十一月 アイ・リアリー・ドント・ウォント・トウ・ノウ
十二月 ブラウン・アイの男
一月 テューズデイズ・ゴーン
二月 夜の精
三月 傑作をかく時
妻と別れて11年経った益子豊士のもとに、17歳の娘が妊娠したとの連絡が入る。
相手方の親との話し合いに参加するために、元妻・美鈴と娘・美月と久しぶりに会ったことから、心境が変化していく。
美月は産むことを決め、親は応援する。
教習所では様々な教習生を通し、自分の人生を見つめ直す。
「ガキでもないけど大人でもない」そんな大人たちのあがきをほんわかに描く。
この空気感好きです。
四葉が舞台です。
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先日『ひと』を読んで気になった小野寺さん、途中までは「どうかな~」という気で読んでました。
離婚後11年会っていない主人公の17歳の娘が妊娠したというのが物語のメインの流れなのだけど、その対応をあっさり決断しすぎて納得できない。どこか気力乏しく漫然と生きている主人公が、突然怒りを発したり、正義感を発露したり、人物像が揺れる。
本当は良くない事のだけれど、途中で他の人がどんな感想を持ったのかを調べたら「自動車教習所(主人公の仕事)に通う人必読」「ロック好きにお勧め」なんてものが多い。それだけの話なのか。。。
しかし、最初はチグハグだった登場人物たちがお互いに思いやる気持ちだとか信頼感を持つようになって行く姿が描かれた最終盤でぐっと持ち直しました。
主人公の趣味がロック鑑賞と言う設定で、各章に懐かしいロック曲のタイトルが付けられ、中でも様々な紹介がされています。私は興味が無いので判りませんが、ロック好きの人にはもっと堪らない話なのかもしれません。
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車の教習所を通して色んな人の人生が見えるのが面白かった!
豊士さん、素敵!美鈴さんも素敵なお母さん!出てくる人達がみんな素敵(陸以外)で終始幸せな気持ちになれた。
心にロックを!!ロックが好きじゃない人にも、心に○○
!!の響は心に届くはず!
しのさんも好きだー。。
あんな教官さんがいる所で免許を取りたい…!
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教習所に通っていた大学生の頃を思い出した。
この教官! と思ったらしつこく乗ってたなぁ。なぜかおっさん教官が好みだったけど。逆に若い教官のときは、自分、人気あるんですよね感が鼻についてたまらんかったな。教官目当てじゃなく、免許目当てですから、ここに通ってるのは。
逆に教官側からは、色々な人を見ていろいろな思いがあるのかもね。