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ストーリー展開は面白いし、邪馬台国に関わる持論の出し方も上手だと思うし、女流漫画家のキャラクターも面白いし、自分でももっと星がたくさんついてもよいと思いました。
それなのに☆3つなのは、なんだか読みにくかったからです。特に、この本の本質的な謎をめぐるパートが読みにくいのです。女流漫画家をめぐるところではあんなにそれぞれのキャラクターが面白く書き込まれているのに、それを挟むように書かれている部分では、どうも人間像がうまくつかめない。それは、きっと、話を展開させるに当たって視点が変わるから。そして、その視点となる部分の書き方がはっきりしていないからではないかと思うのです。全編通して3人称で書かれていたら、私は文句なく面白い本、というと思います。
視点の変更って、漫画なら文句なくできるところだと思うけど、文章だとけっこう丁寧な描写が必要だとも思うんです。
ストーリーテラーとしてとても面白い本だなあと思います。
違う語り口の本を読んでみたいと思います。
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久々の醍醐編集長、面白かった。特に、短編かと思っていたらまさかそういう風に繋がっていくとは驚き。次も読みたいね。
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フリー編集者醍醐真司が主人公の第二作。一作目と三作目の後に読みました。4つの短編集で構成される内容なのですが、最後まで読むと、1つの作品ともとれる内容だと思いました。
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博覧強記のマンガ編集者、醍醐真司を主人公とした四作の連作短編もの。
一話完結ものなのだが、全体として一つの長編物を読んでいるような気になる。
失踪したホラーマンガ家の行方を探す第一話。そして、かつて「女帝」と呼ばれたマンガ家を、醍醐が編集者として復活させる第二話。
この二話では、マンガ家の新作に、邪馬台国と卑弥呼をテーマとしてとりあげるのだが、博覧強記というキャッチフレーズにふさわしく醍醐が持論を繰り広げる。
また、映画館での醍醐と親子の奇妙な出会いを描いた第三話。
そして、四話では、一話に登場したマンガ家の子ども時代のトラウマが解き明かされる。
博覧強記の編集者というので、うっとうしい人種と想定したのだが、どちらかというと、バランスの取れた人物像で、良い意味の裏切りだった。
そもそも編集者は、厄介な作家を操らなければならないのだから、バランス感覚は優れているのだろう。
二話の邪馬台国にしろ、三話の映画話にしろ、怒涛の情報量で、殆どついていけなかったが、その蘊蓄を読んでいるだけでも面白かった。
ただ、四話の中で、「悪行」を情状酌量して、見て見ぬふりをしたほうがいいのかと迷う醍醐に対し、現代でマンガがメジャーになった理由を語った作家の「悪は悪。善は善。そこの基準だけは曲げなかった作品が多かったから。」そして、
「どんなに悲しいことになるか分かっていても心を鬼にして悪は悪と言い切る…それが、マンガを生む人間のつとめだ」という言葉が心に残る。
複雑であいまいな構図もあってしかるべきなのだが、やはり、エンタメ作品は、「正義を貫き、正義が勝つ」というわかりやすいものがいいなと思うのだ。
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邪馬台国最大の謎をメインテーマに、フリー編集者・醍醐真司が挑む封印された誘拐事件の真相。漫画界のカリスマが描くノンストップミステリー。
何気なく読む漫画のひとコマに、大きな意味が隠されている。それは映画のワンシーンや歌詞の一言などと同様に、創作者の思いが込められているからだ。作中の「信念」の定義や、善と悪に係るマンガ論など、著者の思いが伝わる作品である。
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すごく面白かった。中篇集かと思って読んでたら、最後に全てが繋がって長篇とも読める構成で唸らされた。醜男なのに醍醐の人間的魅力が深く描かれててそこもとても良い。漫画は善たれという作者のメッセージも熱い。
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○ 総合評価 ★★★☆☆
〇 サプライズ ★☆☆☆☆
〇 熱中度 ★★★★☆
〇 インパクト ★★★☆☆
〇 キャラクター ★★★★☆
〇 読後感 ★★☆☆☆
長崎尚志といえば,漫画雑誌の編集者からフリーの漫画原作者になった人物であり,MASTERキートンなどの浦沢直樹作品との関わりも深い。この作品は,フリーの編集者,醍醐真司を探偵役に据えている「醍醐真司の博覧推理ファイル」の2作目。漫画編集の世界や歴史などの長崎尚志の得意分野の知識が生かされた作品になっている。
前作,「闇の伴奏者」は長編ミステリだったが,この作品は4つの短編からなる短編集。ただし,4つの短編には緩やかなつながりがある。そのつながりは30年前に殺害された少年の死。農地を舞台とした大型詐欺事件を発端とする少年の誘拐事件とその少年の殺害にまつわるエピソードが4つの作品に伏線として描かれる。
よくできた作品だと思う。個々の短編はミステリというより,長崎尚志の漫画原作の世界や歴史,映画などについてのウンチクを楽しむことができる奇妙な味テイストの作品で,長崎尚志の作品のテイストが好きなら十分に楽しめるデキ。作品全体の中盤から終盤の盛り上げ方や,ちょい役として出てきていると思った人物が意外な関わりを見せるという,これも長崎尚志の作品に共通する物語のお約束どおりの展開を見せるが,安定のデキともいえる。中盤~終盤の盛り上がりに対して,ラストのオチがやや弱いというのも長崎尚志らしい。オチが弱いというより中盤の盛り上げ方がうますぎるともいえる。読んでいるときは抜群に面白い。
個々の作品の感想は後で記すが,全体の出来としては★3かな。そもそもうんちく満載のミステリは好み。その点でまず加点。個々の短編は,やや冗長で退屈と思わせる部分もあるが,最後の闇の少年の中盤の盛り上がりは,さすが長崎尚志と思わせる。しかし,真相が予想の範疇止まり。長崎尚志作品でいつも思わせるところだが,物語の整合性は取れているが予想を超える意外性がない。この作品のポイントは椋洸介というホラー作家。椋洸介が子どもの頃に一緒に遊んだ少年と少女。少年は謎の死を遂げ,少女は行方が不明。少年は,父親が30年前の誘拐事件と誘拐した子どもの殺害を実行していたことの制裁として自らが死ぬことで介護が必要な父を殺すという行為を行っている。
少女は途中でちょっと出てくる江波麻美。この江波麻美も,誘拐と殺人に関与していた母親を殺害しており,椋はそのことを醍醐にも隠して江波を守ろうとしていたという部分がオチになる。このオチが予想できてしまう。話の作り,スジがしっかりしすぎていて,もう江波以外が少女で母親を殺害しているのだろうということが,読めてしまうのである。その一段上を行く真相があれば傑作となりそうだが,それは話の作りとしてアンフェアになる可能性もある。作品として意外性以上に伏線がきっちりしている物語の整合性を高く評価する人であれば長崎尚志の作品をかなり好きになりそうな気がする。モンスターや20世紀少年のラストの世間の評価を見る限りでは��一般の人は意外性を好み,玄人=物語を作る人は伏線がきっちりしている物語の整合性を高く評価する傾向があるように思う。そういった意味では長崎尚志の作品は,一般受け以上に玄人受けする作品なのかもしれない。個人的には,多少アンフェアでも意外性のあるオチの作品が好みなので,その点は割引き。
個々の作品の評価を。
〇 消えた漫画家
失踪した漫画家の行方を探すというミステリ。椋洸介の過去の作品やネームを手掛かりにどこに失踪したかを突き止める。いかにも長崎尚志の作品と思わせる作品。漫画を手掛かりに真相を引き出すという手法を丁寧に描かれている。意外性に欠けるのが難ではあるがよくできている。★3で。
〇 邪馬台国の女帝
卑弥呼をテーマとする作品を書く予定の朝倉ハルナという人物の漫画の取材のため,醍醐と朝倉が九州を巡りながら,邪馬台国がどこにあるかの醍醐のウンチクを聞く話。これも漫画編集世界の裏話などを盛り込んだ長崎尚志らしいテイストの作品。歴史ミステリが好きならそれなりに楽しめる。歴史のウンチクも多く,雰囲気は嫌いではないが,傑作というほどの作品でもない。★3で。
〇 天国か地獄か
映画マニアの少年と醍醐がたまたま出会う。その少年の父親が死亡するが,自殺か,事故か真相が分からない。醍醐は少年のために,少年の父親の死が自殺でなかったことを証明しようとする話。いい話系の話だが消化不良。映画に対するウンチクこそあるが,長崎尚志らしい中盤の盛り上がりにも欠けるやや退屈な作品になっている。★2で。
〇 闇の少年
消えた漫画家の主人公だったホラー漫画家の椋が再登場。椋が少年時代に会ったなぞの少年。九州で見つかった白骨死体がその少年の死体なのか。その謎を解明するために椋と醍醐が九州に向かう。醍醐は椋が何かを隠していると疑う。
椋が隠していたのは少女=江波麻美の存在。江波が母親を殺したのではないかと疑いながら捜査をし,江波が母親を殺害したのだと思ったが,それを醍醐にも隠そうとしていた。
中盤の盛り上がりはさすが長崎尚志。そしてオチが読めてしまうのも長崎尚志らしい。物語づくりの教科書のような丁寧な作品だが,それだけに型破りな傑作にはなれない。★3で。
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サブタイトルに「推理ファイル」とあるので、ミステリに分類はしてみたが... 謎解きと言うより、作者の「蘊蓄自慢」ばかりが鼻について、正直 読んでいてあまり楽しくなかった。
何の予備知識もなしに、「邪馬台国」のタイトルに惹かれて買ってみたが、そちらは話のメインではない。一応4作の「連作短編集」とも言えるが、最初と最後にメインを張る「とあるホラー漫画家の失踪と復活」を軸に据えた長編として読むこともできる。そして、どうやらこれは同じ醍醐という名のフリー編集者を主人公にした、シリーズ物の二作目らしい。そのため、醍醐氏の紹介があまりきちんとなされず、それも消化不良の一因となっているか。
が、第二作でメインとなる邪馬台国の話も、失礼を承知で言えば「自説を披露したいだけ」で、無理して「小説の体を取っている」という印象が強くて(- - 一応強烈なキャラ(という設定の)女性漫画家が、再起を賭けて邪馬台国をモチーフにした作品を描くので、その取材旅行に行く、という筋立てはありますが...読後の印象は、あくまで「俺の話を聞け」って感じで(^ ^; 全編通して、まったく「可愛げ」の無い一冊である(^ ^;
作者は、浦沢直樹氏のマンガ「Masterキートン」の原作者の一人らしいが... マニアックな知識の膨大さは、確かに原作者とかには向いているのかも。が、ご自身が「表現者」としてどうなのか、という話になると、いかがなものか、と思ってしまう。
文体は読みにくくはないが、説明臭い台詞が多く、登場人物の心の機微がさっぱり伝わって来ない。リズムも平坦な印象で、「文章で読ませる緩急」がなく、読中のワクワク感がない。小説の体を取らず、学術論文として書いた方が、邪馬台国の説などは説得力が増すのでは、という感じ(^ ^;