紙の本
短編は娯楽性のあるミステリー
2019/12/27 23:13
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は葉真中の短編小説集である。今までは葉真中の作品とは縁がなかったが、BSでテレビドラマ化された『W県警の悲劇』を見て、興味を覚えた。本書は長編ではなく、短編6編である。この文庫本のために書き下ろしたものらしい。短編と長編では当然ストーリーの構想自体が異なるので、短編はダメだが長編はよいという作家がいるものである。
葉真中の場合は如何に。最後の短編が「政治的に正しい警察小説」というタイトルである。
本書のタイトルに幻惑されるかもしれないが、6編すべてが警察小説と言うわけではない。最後の短編も内容としては警察小説とは言えない。とりわけ『カレーの女神様』は楽しめたのだが、ややグロテスクで再読する気にはならない。
『推定冤罪』、『神を殺した男』はどちらも殺人事件を扱ったもので前者は、漫画家、後者は棋士という特殊な業界の殺人を描いたものである。いずれも上質のミステリーであると思う。『リビング・ウィル』は意識不明のままに生かされたくないという希望を遺した主人公だったが、意識不明の中でも自分の意志がそれとは逆に変化していく過程を描いている。高齢社会を迎えているわれわれは、その可能性が多分にあるという点で共感を持てる作品であった。
最後はタイトル通りの作品であるが、原稿の依頼を受ける作家は依頼者の希望に忠実過ぎるあまり、陥穽にとらわれてしまうという話である。小説の様々な設定ではついうっかり差別的な表現を使う場合があるが、この依頼者はそれを排することを望んでいる。ポリティカル・コレクトネスというらしい。真面目な主人公はそれに付き合ってしまう。
その作家の様子を描いている。何とも言えない内容である。なお、冒頭に配されている『秘密の海』は子供の虐待に関する社会的な話題を盛り込み、分かりやすさという点で難があるが、スリラーに近い構成である。いずれにしても今後も葉真中の作品、次は長編を探して読んでみたい。
紙の本
何とも不思議な世界に誘われた感じの短編集。
2022/05/28 23:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
何とも不思議な世界に誘われた感じの短編集。いずれも一癖も二癖もある意外な結末に翻弄されっぱなし。どちらかと言えば主題の明確な判り易い作品を書く著者と思っていたが、このような哲学的?SF的?風刺的?、何とも例えようのない不思議な作品も書くことにびっくり。短い中に様々な要素がぎっしりと詰め込まれた迷路を歩き回った感じの読後感でした。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:吉村ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
テレビ放送されたW県警の悲劇
に引かれ、同作者のこの本を手に取りました。
オムニバス形式もなかなかいいですね。
ブラックユーモアが効いていますね。
投稿元:
レビューを見る
ブラックで救いがなくてとことんどんよりしてしまう短編を読み続けて、もうどんなひどいのが来ても平気だぜ、なんて思ってたら最後にガハっって笑ってしまった。なんだこれΩ面白いじゃないか!
葉真中さんってよくもまぁ、こんなにもひどいことばかり思いつくよね。でもとことんひどい話なのにちょっと笑っちゃうのは自分だけは大丈夫だって思ってるからなんだよね。私にはこんなことは起こらないって根拠のない自信を持っちゃう。私たちのような凡人にはこんなことは起こらない、起こらないと思う、起こらないよね、起こったらどうしよう…
投稿元:
レビューを見る
介護現場から、現代の喫緊の問題を投げかけた『ロスト・ケア』を著した著者の、その作品とは異なるブラックユーモア・ミステリー集。
どんな警察小説かと、思わず手に取ってしまう表題作の『政治的に正しい警察小説』。パワフルでエキセントリックなこの短編は、まるで筒井康隆の世界。警察小説を期待したファンは、見事に裏切られる。
『カレーの女神様』は、何とも言えない味わいの恐怖小説の類か。
『リビング・ウィル』のオチは、星新一を思わせる。
その他、児童虐待、将棋、冤罪と、それぞれ多彩なテーマで、それなりに楽しめる。
投稿元:
レビューを見る
「ロスト・ケア」「絶叫」と衝撃的な社会派作品を描いた作家さんの書き下ろし「ブラック・ユーモア」短編集。
何の情報もなく、タイトルだけで手に取ったので、警察小説だと思い込んでいたが、警察が出てくる気配は全くない。そしてタイトルに使われた「政治的に正しい警察小説」にも警察は出て来ない…完全に自分の勘違いだった…
長編でも先が読めない展開が武器の作家さんだけど、今作に納めれたいずれの作品も、読み終わった後に「え?どういうこと?」と思うことがあり、「ブラック・ユーモア」と言うより、「イヤミス」感もある感じ。残酷な話が苦手人は読まない方がいいかも。
投稿元:
レビューを見る
著者あとがきがないので何とも言えないが、筒井康隆にインスパイアされたような短編集だ。「秘密の海」での児童虐待でブラックな雰囲気を感じた。「リビング・ウイル」は筒井作品「生きている脳」を彷彿とさせ、そのあとの表題作を含む短編2作は正常から狂気へと進む様が懐かしさを感じる。
投稿元:
レビューを見る
<内容紹介より>
飛ぶ鳥を落とす勢いの新鋭作家・浜名湖安芸は、「ポリティカル・コレクトネス」をコンセプトにした警察小説という”意識高い”依頼を受けた。パワフルでエキセントリックな編集者を相手に、ハマナコは超大作を書き上げる⁉(「政治的に正しい警察小説」)
大学生の僕は、偶然通りかかったカレー店で思い出の味に再会した。幼いころに生き別れた母の味だ。女店主にその「秘密の隠し味」を訊ねると……。(「カレーの女神様」)
そのほか、児童虐待、将棋、冤罪、尊厳死など、多彩なテーマの六編を収録するブラックユーモア・ミステリー集。著者初の文庫オリジナル作!
――――
ミステリ作品として、どんでん返しがしっかりと書かれていましたし、テーマ設定も斬新で、エンターテインメントとして完成されているように思います。
「ブラックユーモア」と題されているだけあって、決して後味が良い作品集ではないので、好みはわかれるかと思います。
……教育的によろしい、というタイプの本ではありませんが、”どんより”というか”ねっとり”というか、そういった印象の読後感が嫌いでは無ければ、楽しめると思います。少なくとも、「腑に落ちない」という印象をもった作品はありませんでした。
投稿元:
レビューを見る
読後感がよいわけではない短編がほとんど(^^;だけど、奇妙な魅力がある。ハマる人はいそう。でもちょっと怖い…
投稿元:
レビューを見る
東野圭吾の◯◯小説みたい。秘密の海⇒△連鎖、認知症。神を殺した男⇒◯大局観、神をつくった。推定冤罪⇒◯本当に覚えていないんですか?私のことも。リビング・ウィル⇒✕生前の意思、もうひと捻りほしい。カレーの神様⇒△紫蘭、あなたを忘れない、母はどうなった。政治的に正しい警察小説⇒✕タイトルなのに一番今ひとつかな。
投稿元:
レビューを見る
文庫オリジナルで出版と聞くと、読む前から「自信がなかったんだろうな」という偏見を持ってしまうのだが、やはり。「問題作」と裏表紙に書かれているものは読まないようにしようといつも思うんですけどね…
投稿元:
レビューを見る
ストーリーテラーなのは間違いないと思うのだ。当初の印象とは裏腹に、思わぬ方向へ進み出す展開はとても魅力的だ。
ただ、その内容と表現が少々エキセントリックに感じてしまう。何もそこまで、、、、と思ってしまうところがしばしば。
6つの短編で構成された本作品。「推定免罪」「神を殺した男」はとても好き。「リビングウィル」「カレーの女神様」はうーん、、、。「秘密の海」はそっかなるほどね。「政治的に正しい警察小説」はあまりのぶっ飛び具合に苦笑い。
って感じでした。
また次作に期待します。
投稿元:
レビューを見る
裏表紙のあらすじに興味を惹かれ購入。収録順序は必ずしも発表順ではなく、巻末へ向かうに従いブラックなエピソードになっていくのは意図的?作品毎にテーマが盛り込まれ、それが上手に消化されており圧巻。まさか、表題作が一番エキセントリックだとは…。
投稿元:
レビューを見る
ブラックな読み口のミステリ短編集。一見心温まる物語のように思えるものもあるのだけれど、総じてブラックな印象です。もちろん、こういうのは大好き。
お気に入りは「リビング・ウィル」。嫌だなあ。これ、あまりにも恐ろしい物語で。でもあの人の視点なしで表面上をなぞれば「いい話」に思えてしまうところがまたなおさら嫌。
「カレーの女神様」も、前半は心温まる物語のように見えたのに。まさかここまでブラックだとは。でもどこかすこーんと突き抜けていて、読後感は爽快です(個人的な感想です、あくまでも)。
投稿元:
レビューを見る
表題の「政治的に正しい警察小説」は「小説家」というイメージが思い切り出てる。
段々とのめり込み周りが見えなくなり執筆に没頭する。昔からの「これぞ小説家!」が世間から逸れ、落ちていく姿が描かれていると思います。
全部で6話ありますが「カレーの女神様」が一番おもしろかった。読後気分悪くなるけど……(^^;