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往復書簡というのははまれるかどうかがなかなか難しいのだけれど、これは当たり。読みやすかった。深かったし、確かな感じがした。
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カリーマさんって、「テレビでアラビア語」の人だ!と思いつつ、時事的でセンシティブな話が続くのかと身構えて読んだら、意外とそこまでじゃないというか、感応するところの多いもっと深い所の話だった。もちろん単純に肯定できないと思うところもあるけれども…。異文化の摩擦の生まれる時、共感の水脈はどこにあるのか。文化の発露としての、個人。信仰。
二人の丁寧なやり取り、往復書簡という形だからこその、相手の言葉一つ一つから滴り落ちるニュアンスや背景、思考も掬い取るように書かれる手紙の美しくやさしいこと。
「絶えざる関心の鍬を持って、深い共感の水脈を目指したい」という気持ちがお互いに慎重に、言葉を尽くしてやり取りしつつ物事の深みへ潜っていく姿勢にみなぎっている。
「信仰」のくだりには打ちのめされてしまった。
「神と、自分しかいないと措定された場……人間が自らの切実な必要のためにたどり着く場所」
「信仰が『人と世界の対峙を司る自我の領域と重なった』とき――それは本来の信仰と違うものに変容し、その途端、スイッチが入ったように何かが(意地、かしら?)加速するのでしょう」
私は、どちらも身に覚えがあって読んでいて頭がぐらぐらするようだった。棚から出してはまた上げて、としていたことをずばりと切り落とされた気持ち。
今は確かに、群れに帰属するというのがあいまいで、異文化の波に揺さぶられている。本来自分の内側の信仰と同じ領域に属するものが、望まない形でむき出しにならざるを得ないことがあるのかも。それで、こういうことになるのかしら。梨木さんとカリーマさんのように、少しづつ歩み寄って、ゆっくりと打ち明けあえば、こんなに楽しく、心震えることもないのに、難しいものですね。
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梨木香歩さんと、諸岡カリーマ・エルサムニーさんの往復書簡。数々の人気小説を柔らかいタッチで書き続けてきた梨木香歩さんは、実はエッセイもなかなかイケる人。「春になったら苺を摘みに」のエッセイのころからわかるように、異文化や宗教への感度の高い方です。一方カリーマさんは、半分アラブ人でエジプト育ちのムスリムの女性。翻訳家としてや、大学での教鞭、テレビのアラビア語講座等で活躍してる、非常に稀有なバックグラウンドをもち、豊かな感性と知性を持ち合わせている方。この二人がイスラームやナショナリズムや異文化共存について、率直で優しくて深い対話を重ねます。なんという贅沢。
ー 何か道があるはずだと思うのです。自分自身が侵食されず、歪んだナショナリズムにも陥らない「世界への向き合い方」のようなものが、私たちの日常レベルで。(梨木香歩)ー
カリーマさんの文章は知性に溢れ何度も読み返したくなります。梨木香歩さんの文章は、声に出して読みたくなるリズムとタッチで、実際はじめの章は音読してしまいました。
時は2016年。アラブの春やらISやらテロやら国会議事堂前デモなど、思いかえすと世界も日本も不穏な空気がただよい、そこここに噴出する妙なナショナリズムに世間が戸惑っていた時期でした。四年後の今や、誰も予想だにしなかった感染症で各国混乱、もはや、やや偏りのあるナショナリズムは規定路線のよう。ムスリムやハラルや彼らの礼拝習慣については、当時よりも世間の知識は高まったように思うけども、果たして世界は平和的共存に歩みを進められているのか。
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寛大さ、フェアネス、否定から先へと到達する知性を、お2人の往復書簡を覗かせてもらったような本だった。安っぽい「多様性」が多用されるいま、この本に出会って読むことができてありがたく感じた。あとがきにもあるように、まるで生きているような、瑞々しい往復書簡だった。
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とっつきにくい宗教と思い、「スルー」して過ごしてきたイスラム教という存在が、梨木さんの紡ぐ美しくサラサラと流れる詩のような文章と、カリーマさんのダイナミックな体験談と、その中で揺れる微妙な心に動きが見え隠れする文章に、引き込まれて何度も何度も読みました。
何度でも読みたい作品です。