紙の本
満天のゴール
2020/07/06 09:30
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投稿者:kotep - この投稿者のレビュー一覧を見る
旦那に浮気され離婚を突き付けられて実家に戻ってきた奈緒。僻地医療に従事する医者の三上。病に冒されながらも一人で死を迎えようとしている早川。
何の変哲もない3人が過去に微妙に絡み合い、それぞれの生き方を見直す。
3人のつながり、そしてそれぞれのゴールとは・・・。
藤岡陽子作品は読んでいて気分が晴れる作品が多いですね。過去の作品のいい表現や言葉なども所々に散りばめられているので、読みごたえがある。
紙の本
生き延びること、生き抜くこと
2019/04/12 19:38
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投稿者:ナツメグコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
生きるのが苦しくなった時、人はふと死を求めてしまうことがある。でも、本当は誰だって「よりよく生きたい」「幸せにこの命をまっとうしたい」と願っているのだ。
主人公は、不倫したあげくに自分と我が子を捨てようとする夫から逃れて帰郷した女性。母の死に際して医療不信を抱き、資格を取得した看護職から離れていた。生活のために看護師となった彼女は、僻地の高齢者医療に携わり、そこでいろいろな人たちとの出会いと再会を通して、最後まで生き抜くことの尊さを知る。
作中で、生き延びるために深い悲しみを抱えたまま大人になった人物が登場し、昨今の児童虐待報道と重なって胸が痛む。
けれど、結末には救いと希望が提示されている。
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歳を取って来ると、自分の親との別れが身近なものとして感じられてくる。いつか必ずくるその日が怖くて怖くてしかたない。そんな日が来なければいいと思ってしまう。
そんな不安は多分いつになっても消えることはないだろうが、でももしかすると不安の種類は変えることはできるのかもしれない。
人生の中で誰かと出会い、その関わりの中でその誰かを大切に想う気持ちが生まれる。そんな想いがあれば最期のときも心穏やかに過ごせるのかもしれない、というこの物語がそんな恐怖を少し和らげてくれた。
そしてこの物語は、誰からも大切にされない救ってもらえなかったという思いの中で過ごしてきた人を、小さいけれど確たる光で照らしてくれるだろう。救ってもらえなかったのなら救う人になればいい、その一言は暗闇の中でもがいている人たちへのよく頑張りましたというキラキラ輝く星のシールとなる。
地域医療、過疎の町、高齢化社会、そしてシングルマザー。たくさんのどんよりとしてしまう社会問題がつめこまれてはいるけど、この一冊には光がある。温かく足元を照らしてくれる光がある。
あふれる温かい涙がこんなに心を満たしてくれる物語、藤岡さんにしか描けない。
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丹後半島を舞台にした、生と死を温かいまなざしで綴る物語。私たちは最期をどう生きるか、登場人物ひとりひとりの過酷な人生が、ラストの場面で鮮やかに収束する。重いテーマを、小学生の涼介の存在が和らげてくれる。藤岡氏の作品は、派手な演出がまったくないが、心に響く言葉がたくさんちりばめられている。陳腐な言い方だが、本当に感動した。このような上質な作品を、これからも変わらず創り出していってほしい。
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大好きな藤岡さんの新刊。読まねばならぬ。
夫から一方的に離婚を突きつけられる奈緒。
その夫の身勝手さに私も正直
「死ねばいいのに」
と思った。
私の心の汚泥をかき乱すようである。
力無き奈緒が生きて行くために
息子を育てるために
心に決めた後は物語が加速していく。
ペーパー看護師というのはちょっと怖いけど。
私の友人の元看護師は
「20年ぶりの看護師に注射されるの嫌じゃない?
私は嫌やもん。」と言い、全く違う仕事をやっている。
高志少年の心を支えた祖母と早川さん。
そういう大人がいることは本当によかったけれど
あまりに大変な高志少年の暮らしに心が詰まった。
早川さんと再会が果たせて本当によかった。
そして、涼介が本当に気持ちのいい子で、
大切に育てられたのだなぁと思った。
育てた奈緒は偉いよ。
私達は満天のゴールをするために
今を一生懸命生きねばならない。
生きなければお星様はもらえない。
タイトルが秀逸。
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不倫の末に離婚を迫る夫のもとを離れ、33歳の専業主婦の奈緒は小学4年生の涼介を連れ、丹後半島の北端の過疎の村で一人暮らしをしている父を頼って実家に戻る。奈緒は地域の病院で看護師として働きながら、いまの日本の典型的な過疎の村で起きている老人たちの孤独、尊厳に満ちた死に立ち会うことになる。
できすぎたストーリー展開には若干違和感を覚えるが、登場する老人たち、小学生の涼介がほどよいスパイスを醸し出していて、爽やかな読後感を与えてくれる秀作。
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こんな巡り合わせあるか?と思いつつも、泣かせてくれる1冊。息子もめちゃめちゃしっかりしてるなあ。ちょっと考えられへん。
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京都の海辺過疎地帯の医療に携わる人達。
傷ついて子連れで故郷へ帰ってきた看護士、重い過去を持つ医者、そして生きる気力を失っている元看護士。
どんなゴールを目指すかは人それぞれ。
満点のゴールというタイトルが、読み終わった心に残る。
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夫と別居し、実家のある過疎の街で暮らすことになった奈緒。
過疎地の医療、死の迎え方、奈緒は様々な問題に直面する。
夫の不倫から別居に至る奈緒は不幸、という設定が全てと思っていたら、更に過去のある登場人物が次々と現れ、ずっと気持ちをかき乱されました。
高志くんの境遇が辛い。早川さんだけでなく、何か救いはなかったのか。
過疎の街での高齢者の死の迎え方に、胸が熱くなりました。
「全力で生きぬいた先に死があるのなら、死は生きたことの証に違いない。」「死から始まる明るい何かを信じる。」
医療現場にいた著者の言葉は深いです。
いい話でした。
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医療過疎の僻地で生きる老人と、ある理由からそんな地域で働く医師、そして、そこに関与していく母と息子。設定は新しいが、藤岡陽子の作品らしさが随所に現れていて、ある種の安心感さえある。それにしても、藤岡作品の中の人の死は、涙が出てくるくらい悲しい。老人の満ち足りた死であっても、悲しみがこみ上げてくるような切なさがそこにある。
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さわやかで、読み終わった後、前向きな気持ちになれる作品。
離婚からシングルマザーとして生きていくのを決めるまでは一緒に心を痛め、その後、地方の実家に帰ってからの周りの人たちとの心温まる出会い、交流、そして終末医療について、一気に読ませ、そして考えさせられる一冊だった。
映画化とかすればいいのに!と思っていたら、既にラジオドラマ化されていました。
ぜひ映像化も!
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表題に二つの意味がありました。生涯を終えて行く人にとっての「満点のゴール」…悔いなく懸命に生きた誇らしい最後です。そしてこれから日々を生きていく若者にとっての「満天のゴール」は、夜空を覆い尽くす輝きとなって人々の希望となれるような生き方を志すこと。高齢化甚だしい過疎地の僻地医療の現場では、ただの医療がそのまま終末医療になる。一人一人が納得できる死を得ることは正直難しい現代で、もしかしたら独居で自分自身の死と向き合いながら終わる人生も尊い最期なのかもしれないと感じてしまいました。泣けました。
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何気なく読んだ「テミスの休息」がすごく温かい話で、この作品も何気なく手に取った1冊。
夫との離婚問題で、京都の実家に息子と2人で戻った奈緒。特に何の目的があった訳でもないけれど、地元の病院の医師の三上を始め、地元の人達と触れ合うことで、何の自信もなかった奈緒が息子と2人で新しい未来を見つける話。
京都の過疎の町が舞台なので、高齢者の医療問題なども取り上げており、周囲が生きて欲しいと願っても、命を失ってしまうお年寄りもたくさんおり、綺麗事だけではないところもまた胸を打つ。
タイトルの「満天のゴール」には深い意味があり、読み終えた時、自分もこんな風に人生を終えたいと思った。
ちなみに作者さんは現役の看護師さんだそうで…とてもとても意外だった。
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ひと月ほど積読していたが、読みだしたら一日で一気読み。
ちょっとミステリー的な要素もあってぐいぐい読める。
夫の不倫による理不尽な離婚。限界集落で1人暮らす老人たちとそれを支える地域医療。虐待の過去等々、結構重いテーマが詰まっているが、主人公奈緒の息子涼介の明るさでいい感じのバランスが取れている。
細かい所が結構リアルで、作家の観察力ってやっぱり凄いな。
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ゴールとは死を意味する。
ままならないのが人生だとしても
ゴールに向かって自分らしく生きていくことが出来れば
死は必ずしも悲しいものではない。
ゴールは明るく輝く。
小学生の息子涼介が良い味出している。