紙の本
コロナ禍の今読んでみても
2020/07/07 17:13
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
SF代表作の魚舟・獣舟、華竜の宮等とは違った系列の本なので読んでみた。
序盤は淡々としたルポルタージュ風の描き方なので「あれ 期待したものとずいぶん違う。はずれだったかな。」と心配したが中盤からがぜん盛り上がってきた。
コロナ禍の今読んでみても、生物 細菌 ウイルスの改造というものの危険性、生物兵器の反社会性 がしみじみ分かる。
しかし物語の出来としてはSFシリーズほどのメッセージ性はない。
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圧倒的な情報を著者のセンテンスで紡ぐ。
一歩引いた目線は、むしろ緊迫感とことの恐ろしさを倍増させ、ただただ圧倒されるのだ。
圧巻。
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未来系のSFであるオーシャンクロニクルと違い、第二次世界大戦中の中国における細菌兵器の話なので、その災厄の重さがよりリアルに感じるが、どうしようもない状況の中で、思惑の異なる人々が交差する様子はオーシャンクロニクルと同様面白い。
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2018.4 上田早夕里さんの小説というより服部真澄さんの小説みたいでびっくりしましたが、変に大袈裟ではなく上質なハラハラドキドキ感で読ませてもらいました。
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とても面白かった!
日中戦争下における細菌兵器に関する話。いろいろと難しい専門的な部分もあるのに読みやすく書かれていた。
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読んだのは2018年はいってからだったけど間違いなくベストオブ2017だった。
第二次世界大戦前夜の上海を舞台の中心に、謎の細菌兵器に命と矜持をかけて向き合った者たちの物語。まるでノンフィクションのような情報量と語り口にひたすら圧倒される。決してすべてのキャラクターが幸せになったわけでも本懐を遂げたわけでもないはずなのに、ものすごく幸せな読後感で胸がいっぱいになった。
補記のラスト三行であっこれSFだったのか……? と思った。舞台設定と登場人物設定的に、ジョーカー・ゲームシリーズが好きな方にも楽しめるかも。
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731部隊が題材ということで、やや身構えながら読み進んだのだが、その辺はとても上手に扱われていて、一級の冒険小説として読めた。
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第2次世界大戦前後の支那、満州を中心に、日本人の関わりを描きつつ、新種の細菌にまつわる兵器開発と阻止の重厚な読み応えのある展開。
前半は、時代や土地の状況がなかなか入ってこず、読むのに時間がかかったが、中盤以降はテンポよく読めた。
18-82
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今回の候補作の中で一番印象に残ったのは本作でした。
とはいえ、手放しで絶賛できるかというとそうでもなかったりするのですが。
まず気になったのは、人類が滅亡するかもしれないというスケールの大きな話の割には、真須木という科学者がR2vを作った動機がやや安直に感じられた点です。
人間なんて所詮その程度ということなのでしょうが、個人的には物足りなく感じました。
また、全体的に説明調の部分が多いところも、スリリングな展開の勢いを削いでいる印象です。
いっそのこと歴史的事実なんか全部無視して、もっと大胆な筋書きにしてもよかったのではないかという気もしました。
とはいえ、戦時下における個人の矜持、そして科学者としての倫理はどこまで国家に対抗できるのかというテーマは現代にも繋がるものがあり、とても興味深く読めました。
日中戦争下の中国という、一歩間違えばネット民から袋叩きに遭いかねないような舞台を選んでいますが、不特定多数の読者を意識してでしょうか、とても丁寧かつニュートラルな立ち位置で描かれており好印象です。
史実と創作の融合についても、これぞプロのお仕事という感じで違和感のない仕上がりになっています。
最後に描かれるサプライズについては、人によって評価は分かれるところかもしれませんが、私はあの形でいいと思いました。何のことか気になる方は、是非読んでみてください。
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731部隊の話は、過去何度も耳にした事があるが、ここまで詳細に書かれているとは・・。
登場人物がほぼ実名なのも驚いたのと、部隊所属の研究者が戦後大手メーカーや有名大学で重職についている事実には震えが来た。
薬害エイズ宜なるかな・・
戦時下の満州を舞台に、新種のビブリオ菌・R2v(通称キング)を巡り、各国の細菌兵器開発の思惑に科学者の怨念が絡まり事態はカオスへ・・。
軍人・灰塚が科学者・宮本を従え、キングの正体を探る中二人の間に生まれる奇妙な友情。
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第二次世界大戦の前後で開発された細菌(R2v)をめぐる群像劇。細菌兵器として使われる恐れがあるR2vを日本と中国、ドイツなどが奪い合うような廃棄しあうような戦いがある。戦争が引き起こす狂気により、細菌の恐怖を感じつつも、細菌ひとつに振り回される関係者の姿は滑稽でさえある。人が戦闘であれ細菌であれ、たくさんの人が死ぬことを滑稽であると表現するのは良くないことと認識はしている。人の生き死にをかけた戦争が悪いのだ。
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2018年上半期直木賞候補作品。初読み作家。
1943年、上海自然科学研究所で細菌の研究員として働く宮本敏明は、灰塚少佐から呼び出される。そこで新種の細菌 「R2v」 (キング) についての機密文書を見せられ、治療薬の製造を依頼される。しかし、治療薬を開発することは、細菌兵器として完成することにもなってしまうということだった。。。
登場人物の中には実名の者もいて、ノンフィクションなのかとも思ってしまう。時代背景の説明に割かれる分量が多いが、勉強にもなった。戦時中の故、通常ではあり得ないことも正しいことになる場合もあるのだろうが、だからこそ最後は人間一人一人の良心が問われることも。
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1943年太平洋戦争中の上海。細菌学科の研究員の宮本は、日本総領事館から呼び出され、領事代理と大使館附武官補佐官である灰塚少佐に重要機密文書の精査を依頼される。その内容は、治療方が未だみつかっていない細菌兵器であった。宮本は治療薬開発を頼まれ、灰塚少佐たちは細菌を追う。直木賞候補作ということで読んでみた…濃かった…そして長かった(歴史物が苦手なので流れを掴むまでやたらそう感じた)。開発者と細菌の行方で話が進む一方で、戦争の詳細の話、人体実験の話、大きな流れには逆らえないということ、非常に重いお話でもありました。読み応えあり。戦争は人を変えてしまうのか。何が正義かわからなくなってしまう。偏った欲望が戦争により人を狂わせるのか。登場人物たちはしっかり描かれ、特に軍人として生きる灰塚、科学者として生きる宮本、それぞれの運命がくっきり出ていました。欲を言えば、世界を守る物語でしたが、細菌が軸となり少々広げすぎか、宮本のより深い心情を出したり宮本灰塚色がより濃くても良いのでは。
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第二次世界大戦時に悪名名高い731部隊の細菌兵器開発や人体実験をモチーフにした作品と思われます。エンターテイメントに針を振っているので、社会派というよりもスパイ小説の風情です。
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第二次世界大戦中の上海を舞台に、細菌兵器の開発をめぐる各国の研究員や特務機関の攻防を描いた作品。直木賞候補作。
731部隊による細菌兵器の開発や人体実験という実際の出来事に基づいたストーリーは、戦時中の狂気と暴走を詳細に伝えていて、そのおぞましさには身の毛がよだつ。
欧米の支配からアジアを解放するという名目のもと、強引に満州国をつくった日本人。国のため、人類のためと言いながら、力をもった者はすべてを手中に収めたくなり、蛮行に及んだあげく破滅に向かう。これが現実の出来事を踏まえていると思うと、重苦しくつらい読書になった。
さらには、実験にかかわった研究者や医師たちが、責任を問われることなく医学界で権力者となり、現在に至っていることにも背筋が寒くなる。
読んでいる最中は、戦時中の蛮行という素材ばかりにとらわれがちだったが、読後改めて全体を俯瞰してみると、小説としてのストーリー自体や主人公の魅力にはやや物足りなさも感じた。
さらには、何年か前に観た野田秀樹の舞台「エッグ」を思い出す。音楽とスポーツという表面的には爽やかでおちゃらけた導入から、一転して満州での日本軍による残虐な人体実験にシフトしてぞっとさせる芝居は圧巻だった。DVDでもいいからまた見てみたい。