紙の本
生誕することは害悪なのか
2022/09/22 21:38
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投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
原題の「反出生主義」の代表的な著作。文章はくだけて基本的に読みやすく哲学書のような難解さはあまりない(でも言葉の用い方は特徴的でクセがある)。アフォリズムではなく論証形式で、おなじみのはずんp概念に新しい視点で語り直すのが新鮮に感じられて最初の3章まではかなりおもしろく読めた。でも後半になるとその関心が保持できず後半は失速。生誕することは害悪、という主張そのものに抵抗はないが、この著者がさいていた労ほどには感心できなかった。
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表題通り、「人間は生まれてこない方がいい(今生きている人間はすぐに自殺しろという意味ではない)」という主張の本。
このような主張には周囲の人から多くの反論が来たことが容易に想像がつく。
反論の声を封じるために、事細かに前提や例外についても説明してあり、やや回りくどく感じる。
最初に章の構成に関する説明があり、要旨を掴みたい場合は2章、というふうに何章を読めばよいのか説明してあるのは長所。
また、論文のように参考文献が事細かく記してあるので、同様の主張の本が読みたい場合にも有用な本。
生まれてきて良い・悪いは人の主観であり、どうしても他人に納得させるのは難しい面がある。「バラは美しい」「いや、バラは醜い」という議論を思い浮かべるとわかると思う。
万人に「バラは美しい」ということを証明するために、少し抽象的な話が多くなっている面は否めない。
しかし、主観の押しつけであるというのは「自分は生まれてきて良かったから他人を産む」という出生主義者にも言えることであり、反出生主義者に反発する出生主義者には読んで欲しいと思える本だった。
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論理とレトリックを駆使して、存在してしまうことの悪、存在しないことの「ましさ」を論証した2章は読み応えがあった。
ポリアンナ効果を基盤にした3章はちょっと粗雑な印象をもった。
4章 子供を持つということは、著者の論からはずれるが、力無き生まれてくるものに焦点を当てる貴重な視点だ。
5章 妊娠中絶は考えさせられた。哲学的でアクチュアル。いつ人間は道徳的な存在になるのか。一度は立ち止まって考えるべき論点だ。
6章 人口と絶滅は、特に絶滅について最終盤、絶叫するように主張する論が説得的だ。
7章 結論も哲学書とは思えない情緒にあふれ、不思議な読後感を抱いた。
全体を通して、たしかに直観には反する主張だ。しかし、耳を傾けるだけの理路はたしかにあった。
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べネターの主張は明快で納得できない点もあるが理解しやすい。
積極的に人間を減らす必要はないが、新たに誕生させるべきではないという論点についての言及は、論理的な破綻を認める一方で共感する自分もいる。
森岡先生の本と合わせて今後も考えていきたいテーマだなと思う
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反出生主義に対する興味から読んだ。
この本を読む前は、出生しないことは不幸だと思っていたが、この本で取り上げられた、出生することとしないことの比較やポリアンナ効果、人口と絶滅といった話題から反出生主義というのはむしろ合理的な考えなのかもしれないと思った。
格差や少子高齢化によって先進国の庶民にとって幸福を感じられなくなっている現状で、反出生主義という一種の終末論が受け入れられるのも仕方がない。
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読み終わらせた。
ベネターはタイトル通りの主張を手を変え品を変え執拗に繰り返す。当人もこの主張が一般に受け入れ難いことが分かっているので、先回りして反論するなど構えは盤石だ。ほぼ水掛け論だが。
生まれてこない方が良い、というペシミスティックな考え方はベネターに始まったことではない。原始仏教にもみられるしベネターが引くショーペンハウアーなんかも似たようなことを言ってる。
ベネターが画期的だったのは、このペシミズムを倫理的問題にまで敷衍していったことにあるのでは。
にしても、生まれてこない方が良かった、存在してしまうことは害悪だと理詰めで言われましても‥感覚的に首肯するところはあるが、んなこと言うたら終わりじゃないですか。そこで、さまざまな議論が沸き起こってるので注目です。
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筆者の立場は反出生主義。倫理と話というより論理学というか哲学の…いややっばり倫理の話なのか…。 存在の話なので不在についてもかなり突っ込んでいて興味深かったと思う。
目についたからと漫然と読む本ではなかった。目的意識がないと頭に入ってこない。快不快の有無で話をするならそれは不均衡であり人は常に人を害するので最初から存在しないほうが望ましい。……みたいな…頭に入ってこなかったなりにまとめると…いや違うかもしれない。今度読むときはちゃんとウォーミングアップしてからにしよう。
150
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(偉そうなことを言ってしまいますが) 邦訳が酷いです。原文を読まなければ、意味が通じない箇所がいくつかあります。
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中々掴みどころがない。単に苦痛から逃れる訳でも、自分の人生を肯定出来ないだけかなと思っていたが、生まれたからにはより良い人生をとも言ってるので、それとも異なる。まぁ人生なんぞ、落ち込んだり泣いたりする価値も値打ちもない。鼻で笑い飛ばしたい。できる事なら。この頃は親ガチャなる言葉も無かった故に子作りロシアンルーレットなるワードにはパンチラインを感じた。あと、中絶賛成派がpro・deathと言うのも初めて聞いたと言うか見た。pro・choiceじゃないんだ。