紙の本
訳者の長野徹氏による丁寧な一作ごとの解説
2023/02/02 10:33
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
長篇の「タタール人の砂漠」、短篇の「七階」がとても大好きな私、彼の作品は前述の2作品に限らず寝てもいないのに見ていまう悪夢のような話がたくさんある、今回はどんな話に出くわすことができるのかワクワクする。この本の巻末には訳者の長野徹氏による丁寧な一作ごとの解説があるのもうれしい。「屋根裏部屋」では禁断のリンゴを食べてしまった男が、もうこれ以上リンゴを食べないと神様と約束することによってご褒美を貰おうとするという調子のいい話、そこに目に見えない男が「神様何ていないんだから、あのリンゴを食べてしまえよ」とエデンの園の蛇のようにささやきかける。この男は主人公の分身なのだろう、彼ともう一人の彼は激しく対立していく、他の作品の中でも意志の弱い男、ふんぞり返っている男、俗物的な男、彼らにも物語の中でしっぺ返しがある
紙の本
次も楽しみ
2018/05/03 09:19
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投稿者:鯖 - この投稿者のレビュー一覧を見る
表紙もブッツァーティぽくていい。
自分の妄想のはずなのに外からやってきて侵食される感じが好き。『チェーヴェレ』『個人的な付き添い』『勝利』がよかった。
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「もしいつか、神、病気になって、力失えば、おまえたち、喜んで、冒瀆する! それが、おまえたち、人間!」(巨きくなるハリネズミ)
ブッツァーティの未邦訳短篇集。楽しいんだけど、物語に耽るというよりは、エッセンスのみという印象。「変わってしまった弟」「エレブス自動車整備工場」「ヴァチカンの烏」が好み。
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このところブッツァーティ作品の刊行ラッシュが続いている。死後50年弱経つ作家が見直されているのにも驚かされるし、いくら刊行されてもまるで作品が尽きる気配がないことも凄まじい。自分がブッツァーティの短編集を読むのはこれで5冊目だが、『聖アントニヌスの誘惑』の一作以外はいずれも初読である。さらにクオリティは一定して高水準、各作品がバラエティに富んでいながら、一貫した人生哲学の裏打ちがあるときている。はっきり言って至れり尽くせりじゃなかろうか。
本作にも例に漏れず不条理、無常観を極めた作品が並んでいる。収録作のうち『あるペットの恐るべき復讐』『勝利』はいずれもキレのあるショートショート。
表題作『魔法にかかった男』はブッツァーティ作品の中でも傑作と言えよう。自分は長編『タタール人の砂漠』のアングスティアーナを連想した。『ヴァチカンの烏』『偶像崇拝裁判』は一見宗教に寄り添うような姿勢が見られるが、『待っていたのは』収録の『冒涜』を見るにブッツァーティが興味をもっていたのはむしろ宗教と現代社会の間の軋轢にあるように思える。一歩引いた目線と言うべきか。
末尾を飾る『屋根裏部屋』は分量の割にやや内容が薄いか。しかしそれも他の歯切れが良い作品あっての感覚だろう。
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大変スタイリッシュな表紙。あんまそういうオシャレっぽいのじぶんわむり。。。
でもこの人の作品って良くできたドラマCMを見てるような感じする。昔のクロード・シャブロルの映画のような、役者の表情と効果音だけで場面が切り替わるような。
物語とは別で、大変きめこまやかな精神を持ってらっしゃり、我々が日々ぎすぎすして傷ついてへこんでる部分に、しっとり染み渡るそういう要素がある。死後の世界や動物を描いていても、不安や奇妙さはあるが、恐ろしさは感じられない。さっと読み溶けるようでいて、深読みもできそうな作品。
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ブッツァーティの未邦訳短編集。
出ていたのは知っていたが、何となく買い損ねていた。2巻が出たところで一緒に購入(しかし1巻の方はもう余り在庫が残っていないようで、紀伊國屋では店頭在庫が無かった。増刷がかかればいいのだが……)。
岩波文庫から出ている『タタール人の砂漠』のように、代表的な長編は読んだことがあったが、短篇は読んでいなかったので新鮮だった。それにしても、イタリアの幻想小説って、カルヴィーノのように、けっこう寓話的というか、ある種の教訓を含意している内容が多いような気がする。ヴァチカンというカトリックの総本山が身近にあるからだろうか。
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『背後から誰かにじっと見つめられているような気がして、猊下はふたたび振り返った。だが、後ろには何も見当たらなかった。田園風景と沈みかけた太陽、そして、まるで警戒を与えるかのように長い腕のようなものを伸ばしている黄色い雲を除けば』―『剣闘士』
プッツァーティの短篇はどれも似たようなテイストだと思う。翻訳家が言うように様々な設定、文体はあるとは思うけれど、何か強迫観念とでも言ったようなものが通底しているように感じるのだ。それを敢えて喩えるなら、背後からのぞき見される人生、とでも言おうか。
アルファにしてオメガであるところの全知全能、オムニポテンツである筈の神は、恐ろしく庶民の行いに無頓着だ。日頃から手を差し伸べて罪深き我等を導き給うて下されば、審判の日に裁かれるのを待つまでもないじゃないか、と部外者である自分などは思ってしまう。しかし要点はそこではない。それに引き換え、悪魔の方は随分と熱心に市井の人々を誑(たら)し込むじゃないか、ということ。一体何百万人の悪魔がいるのか知らないけれど、ありとあらゆる場面で悪魔に唆(そそのか)される話がある一方で、滅多な事では神の恩寵には与れない。スピノザによれば無限の属性を持つ筈の神であるなら分身するまでもなく、ありとあらゆる場面で迷える仔羊たちを正しく導くことも可能であろうに、悪魔の熱心さに比して神の行動は至極無頓着なように見える。それに比べれば、悪魔の方はカスタマーサービスが行き届いている。その代償がいかなるものであれ、契約者の希望に沿うケアを提供する事に余念がない。契約しても結果は本人の努力次第、ということもない。本書に収められた短篇の一つに風変わりな地獄が登場するが、考えてみればこの世で清貧に暮した見返りに行き着く先の天国で、人は何をして生きて行くのか。余りにストレスの無い世界は、いってみれば刺激の無い世界でもある。案外と悪魔が熱心に人々を誘惑するのは、そんな行く末を見越しての事なのかも知れぬ。
そんな疑いの気持ちを抱きつつ、それでも小さな罪を犯した我が身を誰かが背後からのぞき込むような気がして、何か得体の知れないものに怯えながら生きている。それが、プッツァーティの想定する人間の在り方なのだろうか。それを反語的に表現しながらも、同時にプッツァーティには独自の正義感のようなものがあるとも思う。少し時代劇風に喩えるなら、お天道さまとこの桜吹雪がお見通しだ、と言う時の桜吹雪を背中に背負った人物とプッツァーティは重なって見えるのだ。もちろんそれは時代劇風の痛快さとは無縁の、一重にも二重にも諧謔的な正義感ではあるし、その正義の判決が下る時でさえ、神の存在は不可視のままである。でもそれは、北町奉行の裁定の場に将軍が臨席しないのと同じ事なのかも知れぬ。曰く、神の不在は神の存在の否定の証明ではない。このジレンマから人が逃れる術はない。
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「騎士勲章受勲者インブリアーニ氏の犯罪」「変わってしまった弟」「新しい警察署長」「巨きくなるハリネズミ」「あるペットの恐るべき復讐」が特に好き。とことん不条理で恐ろしくて最高でした。
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タイトルのとおり短篇集。短い時間で読めてそれでいて面白かった。「屋根裏部屋」は主人公の屋根裏に禁断の果実であるとても美味なリンゴが出現してしまい、その魅力に取りつかれてしまう物語。印象に残った。神の救済や罰、願掛けを主人公が考えていく様子が面白いうえにリアル。
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短編集は初めて読んだけれど、ここでもブッツァーティの特徴である奇妙な雰囲気は健在。ただかなり短い話が多く、もう少し膨らませたらもっと面白くなるのになーと思うものも結構あった。屋根裏部屋が1番良かったかな。
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やっぱりブッツァーティは良い!
この本はほとんどが初めて訳されるものばかりで、ちょっとお値段がするけど読めて良かった。
宗教的な話と寓話的な話が多い。
特に好きだったのは、
『変わってしまった弟』
『剣闘士』
『家の中の蛆虫』
『エレプス自動車整備工場』
『巨きくなるハリネズミ』
『新しい奇妙な友人たち』
かな。
『家の中の蛆虫』は特に嫌で好きだった。
安部公房にも少し違うけどこんなような話があったような。
ジワジワと自分の場所をとられていく恐怖。
それと、今回も時間を無駄に費やしてしまい気づいたときには取り返しのつかないくらい老いてしまっていて…というような話も多かった。
よっぽどブッツァーティはそれを恐れてたんだろうなと。
確かに怖い。私も無駄に費やしちゃってる自覚はあるから読むたびに胸が痛い…。
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文学ラジオ空飛び猫たち第31回紹介本。 イタリアを代表する作家の幻想と不条理の短編集。どこか不穏な空気が流れている作品が多く、幸せな話や明るい話はないですが、ユーモアはたっぷりあります。寓話の中に人の本質が描かれているので、非現実的な話なのに自分事のように迫ってきます。 「屋根裏部屋」は人の弱さが痛切に描かれていて、現代の屋根裏部屋を考えたら、それはスマホかもしれないという話もしています。ラジオはこちらから→https://anchor.fm/lajv6cf1ikg/episodes/31-eqcqeh
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動物奇譚集が良かったので。
未邦訳短篇集。
動物を題材にしたものは特に好き。
苦悩や悲劇、人間の心の奥底に隠されている部分、不可解で非合理な不思議なストーリー。
とっつき難い宗教的、哲学的な物も、悲劇的で救われない終わり方もユーモアがありなぜか後味が悪くない。
今回も面白かった。