電子書籍
近代の感染症史を振り返る
2020/03/29 16:06
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:akihiro - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は医師が感染症のメカニズムを解説したり、社会学者がデータを分析する類の書籍ではありません。著者は環境ジャーナリストであり、ご自身も世界各地で様々な感染症に罹患した経験があるようです。
過去のパンデミックにおける報道のされ方や社会の混乱などについて紹介しています。感染症が流行した当時の人々の危機意識を、ある程度知ることができました。動物由来のウイルス変異、劣悪な衛星環境による免疫力低下、性行為による感染など、先人の知見から学べる感染拡大の条件を意識しつつ、感染症対策に活かしたいと思います。
紙の本
コロナ禍は、始まりの終わりでも終わりの始まりでもない
2022/02/17 02:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
報道畑出身の著者が物した、
感染病と人類との戦いの歴史です。
疫学分野に関する記述が荒いのは、
専門上、已むを得ないところでしょうか。
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感染症と人類がどのように関わってきたのかを紐解いている。人類の敵としての感染症がほとんどであるが、奇妙な共存関係にある感染症も少なからず存在するところが興味深い。ウイルスの種類によっては人類という種が耐性を持ってしまったり、凶悪なウイルスであっても型によっては、人類との共生を選んだかのようにほぼ無害なものさえ存在しているなど、人類と感染症が深く関わっている様子が読み取れる。
衝撃的だったのは日本が感染症後進国という事実である。ハシカ、風疹は度々大流行を起こし、洞爺湖サミットでは注意喚起までなされてしまった。他の先進国においては、ハシカ、風疹はまずかからない感染症であるが、日本ではそうではなかったのである。原因は予防接種をやめてしまった。ただそれだけである。現在では再開しているが、空白期間の世代において流行し、またキャリアとして世界中に感染症をばらまいているのである。もうすぐ2020年の東京オリンピックであるが、ハシカ、風疹の大流行により中止などということは避けたいものである。
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一章を読み進めているところですが、
わかりやすい。
それに、エボラに関しては、
話題になる時は、ニュースは取り上げるが
その後どうなったかをメディアは取り上げないので、
その顛末が書かれているところも、よい。
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『チチカカコヘ』フェアで購入したもの。
エボラからインフルエンザ、結核、性病といった感染症をテーマにした人類史。
今回買った2冊はけっこうアタリだったので、今年の『チチカカコヘ』はもうちょっとチェックしたい。
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ちょうどコロナが拡大しはじめる直前に本屋でみつけた。ちょっと古いけど、著者の石さんは、学生時代に、『地球環境報告』なんかの本で知っていたので、手に取る。
ワクチン後進国・日本
いろんな意味で、沈没する日本。。。
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新型コロナウィルスが猛威を振るう今こそ読むべき良書。
初版当時に流行したデング熱やエボラ出血熱から始まり、2009年の新型インフルエンザ辺りまでの感染症の歴史が綴られている。どの感染症にも言えるのが人の移動だ。もともと細菌やウィルスの宿主は蚊やネズミなどの動物であり、これらは渡り鳥でない限り長距離は移動しない。だが、人間は文明の進歩に伴い長距離を簡単に移動する。現在のパンデミックもまさに人の移動が原因だ。また高齢者施設の集団感染も指摘されており、現に多発している。
新型コロナの一刻も早い終息を望む。
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感染症の世界史をわかりやすく。ジャーナリストがまとめてみた
●本の概要・感想
環境ジャーナリストの石井氏が感染症の歴史をまとめて紹介する本。「感染症の世界史」というタイトルだが、著者は感染症や感染症史の専門家ではないことに注意。本書では感染症史の大きな流れやストーリーを抽象化するような話はほとんど含まれていない。あくまで、ジャーナリストによって分かりやすく編纂された感染症の歴史である。ピンポイントで事実を抑えたい人にお勧めする。感染症史だけでなく、そもそもの感染症の原因であるウイルスの特性や発生源についても学べる。
●本の面白かった点、学びになった点
*なぜウイルスは宿主を殺してしまうのか?
感染症を引き起こすウイルスは免疫との戦いの果てに、宿主を殺してしまうことがある。免疫にウイルスが目をつけられれば、「どちらかが死ぬ」まで戦いが終わることはない。免疫がウイルスを殺す過程で人間を傷つけることもあれば、ウイルスによる作用で人類が傷つくこともある。感染症によって人が死ぬのは「ウイルスが人の免疫メカニズムに勝利」した証拠なのである。となると、ウイルスの運命も数奇なものだ。自分たちの勝利が決まった瞬間に、居住環境は壊れてゆき、やがて宿主からは何の栄養も奪えなくなる。免疫に勝っても負けても、いつかはウイルスは死ぬことになる..。
*ウイルスを取り込んで動物は進化する
ウイルスは常に悪者というわけではない。生物が進化する手助けをすることもある。>>「生物は、感染したウイルスの遺伝子を自らの遺伝子に取り込んで、突然変異を起こして、遺伝情報を多様にし、進化を促進してきた。人も含めて、どんな生物にもウイルスに由来する遺伝子が入り込んでいる。」
*都市開発によって未知のウイルスが人間社会に入り込みやすくなった
新しい感染症は、動物にもともと潜んでいたウイルスが人に侵入できるように進化してもたらされることが多い。野生動物との接触がより身近になった現代社会では、未知のウイルスがより入りこみやすくなったといえる。コウモリやサルが暮らすジャングルを開発し、人と野生動物の距離が近くなったため、感染症をもたらすウイルスが人に入り込みやすくなった。
加えて、かつてないほど人間が世界各地を行き来する「移動文化」の発展が、感染症をより広めやすくもしている。
*都市社会が感染症に弱い2つの理由
1. 人が多く、過密
2. 様々な地域から人々が往来する
*家畜を飼っていると花粉症やぜんそくにかかりにくなる
*14世紀に流行ったペストは少なくとも三、四十年は流行しつづけ、ヨーロッパの人口の3分の1に相当する二千五百万人から三千万人が死亡した。それによって森林面積は上昇。二酸化炭素の排出量が減った
*日本でのペスト拡大も収束までに27年かかっている。ペストが最初に日本に侵入したのは1899年で、収束発表があったのは1926年となる。実に27年間かかったものの、ペスト被害国のなかでは上手に収めた方である。日本だけで2215人の死者があったが...
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<目次>
まえがき~「幸運な先祖」の子孫たち
序章 エボラ出血熱とデング熱~突発的流行の衝撃
第1部 二十万年の地球環境史と感染症
第1章 人類と病気の果てしない軍拡競争史
第2章 環境変化が招いた感染症
第3章 人類の移動と病気の拡散
第2部 人類と共存するウイルスと細菌
第4章 ピロリ菌は敵か味方か~胃がんの原因をめぐって
第5章 寄生虫が人を操る?~猫とトキソプラズマ原虫
第6章 性交渉とウイルスの関係~セックスががんの原因となる?
第7章 八種類あるヘルペスウイルス~感染者は世界で一億人
第8章 世界で増殖するインフルエンザ~過密社会に適応したウイルス
第9章 エイズ感染は100年前から~増え続ける日本での患者数
第3部 日本列島史と感染症の現状
第10章 ハシカを侮る後進国・日本
第11章 風疹の流行を止められない日本
第12章 縄文人が持ち込んだ成人T細胞白血病
第13章 弥生人が持ち込んだ結核
終章 今後、感染症との激戦が予想される地域は?
あとがき~病気の環境史への挑戦
<内容>
現本は2014年の洋泉社から。現在のコロナ禍を踏まえて読破。第8章が参考になる。20世紀初めのスペイン風邪(スペイン発症ではない)から始まり、近年の鳥インフルエンザや2009年の新型インフルエンザ、いずれも感染者をゼロにした訳ではない。免疫ができたり、対処薬ができたりして、その患者・死者数が減っただけだ。ウェブサイトで見たが、最近のインフルエンザは、2009年のインフルエンザだそうで、それを今は誰も噂にすらしない(数年前私も罹りました)。今回の新型コロナも、その流れが予想される。今年の冬や来春も、同じように流行しているだろうが、どれくらいの人が気にするのかな?という感じ。ウイルスや細菌もどんどん進化(いわゆる遺伝子変異)していくので、数年後には違うタイプの「新型」コロナになっているだろうし…。グローバル化に対するツケかもしれない。そういうことが十分に読み取れる本でした。
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とにかく良く効く睡眠薬であった。笑
あらゆる感染症は、出ては収まり又出てくるという歴史を繰り返しているのだ。
300ページ位でざっくりと、有名な感染症について知るには分かりやすくて良かった。
インフルエンザもスペイン風邪以前(1500年代)から存在しているのだから、今回のコロナも簡単に終息など出来るものだろうか?と思った次第である。
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(要約)
微生物が人や動物などに寄宿し、そこで増殖することを「感染」といい、その結果、宿主におこる病気を「感染症」という。人類はおよそ20万年前に地球上に登場して以来、繰り返し感染症の脅威と闘ってきた。しかし地球上に40億年前から途切れることなく続いてきた微生物からみれば、人間こそがその生存を脅かす。人間が病気と闘うために薬剤をを開発すれば、微生物は遺伝子の構造を変えて耐性を獲得し、人間の攻撃に耐えられるように変身する。地上で最も進化した人間と、最も原始的な微生物との死闘でもある。
人類と感染症の関係も、人が環境を変えたことによって大きく変わってきた。新興感染症の七五%は動物に起源があり、森林破壊によって本来の生息地を追われた動物たちが人里に押し出されて、病原体を拡散させるようになった。「移動手段」が、徒歩、馬、帆船、汽船、鉄道、自動車、飛行機へと発達するのにつれて、これまでにない速度と規模で人と物が移動できるようになり、それに便乗した病原体も短時間で遠距離を運ばれる。歴史上、人間は幾度も戦争を繰り返し、その都度多数の犠牲を払っているが、死亡した将兵の少なくとも三分の一から半数は、感染症による病死だったと推定される。
しかしすべての微生物が、人間と敵対するわけではない。人体のほぼあらゆる場所には「常在菌」と呼ばれる微生物が共生している。その総数は、人体を構成する細胞数の一〇倍以上、数百兆個と推定され、共存共栄しながら人体を支えているともいえる。ところが人間が長生きになり、あまりに衛生的な環境をつくりだしたために、細菌との共生関係が変わってしまっている。健康であれば無害な細菌であったのに、人体が免疫を失ったことで、牙をむくこともある。
作者は、環境史の専門家の視点から、「ペスト」「スペインかぜ」「インフルエンザ」「ハシカ」「風疹」「エボラ出血熱」「デング熱」などなど古くから新しいものまで、社会を揺るがした数多くの感染症の歴史を紐解く。そして、自然界にはまだ無数の病原体が潜み、新たな宿主を求めて試行錯誤を繰り返しており、その震源地として最も危惧されるのは、中国とアフリカであると警鐘を鳴らす。
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「インフルエンザはなんで冬だけ流行するのか、夏の間はどこにいるの?」という素朴な疑問からネットで調べたらこの本に突き当たった。
メインどころ?の感染症の起源、その流行った背景、環境などが網羅されていて、非常におもしろかった。
ピロリ菌などの存在意義や、トキソプラズマによって性格が変わる話、すべてのインフルエンザの起源は中国である!みたいなのから、自然宿主や家畜との関係など、いろいろと見ていくと、果たして人間がウイルスと戦っているのか、ウイルスによって人間が支配されているのかわからなくなった笑抗生物質やワクチンなどとの無限の戦いは、実はウイルスが自らをアップデートさせるために自ら発明させたのでは?など、SFチックなことを考えてしまう。
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遺伝子は垂直に伝わるがウイルスは水平に移動する。主に水・虫(蚊やノミ)・動物(ネズミやコウモリ)・人・注射針などを介して広がる。人類は定住革命~農業革命~都市革命と歴史を重ねてきた。食物・生産性・蓄えといった経済的観点よりも情報の集約性という視点に立った方が把握しやすい。
https://sessendo.blogspot.com/2020/03/blog-post_14.html
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石弘之(1940年~)氏は、朝日新聞編集委員を経て、東京大学教授、駐ザンビア大使等を歴任した、環境ジャーナリスト、環境問題研究者。 『地球環境報告』(Ⅰ、Ⅱ)(岩波新書)などの著書多数。
本書は、2014年に単行本で出版、2018年に文庫化された。
本書は、エボラ出血熱、デング熱、ピロリ菌、トキソプラズマ原虫、ヘルペスウイルス、インフルエンザ、エイズ、麻疹、風疹、成人T細胞白血病、結核などの感染症に関する歴史と現状をレポートしたものである。
そして、冒頭では、「感染症が人類の脅威となってきたのは、農業や牧畜の発明によって定住化し過密な集落が発達し、人同士あるいは人と家畜が密接に暮らすようになってからだ。インフルエンザ、SARS、結核などの流行も、この過密社会を抜きには考えられない。急増する肉食需要に応えるために、鶏や豚や牛などの食肉の大量生産がはじまり、家畜の病気が人間に飛び移るチャンスが格段に増えた。ペットブームで飼い主も動物の病原体にさらされる。農地や居住地の造成のために熱帯林の開発が急ピッチで進み、人と野生動物の境界があいまいになった。このため、本来は人と接触がなかった感染力の強い新興感染症が次々に出現している。大量・高速移動を可能にした交通機関の発達で、病原体は時をおかずに遠距離を運ばれる。世界で年間10億人以上が国外にでかけ、日本にも1,000万人を超える観光客が訪れる。・・・感染症の世界的な流行は、これまで30~40年ぐらいの周期で発生してきた。だが、1968年の「香港かぜ」以来40年以上も大流行は起きていない。・・・「忘れたころにやってくる」のだ。」と述べ、
終章では、「今後の人類と感染症の戦いを予想するうえで、もっとも激戦が予想されるのがお隣の中国と、人類発祥地で多くの感染症の生まれ故郷でもあるアフリカであろう。いずれも、公衆衛生上の深刻な問題を抱えている。とくに、中国はこれまでも、何度となく世界を巻き込んだパンデミックの震源地になってきた。過去3回発生したペストの世界的流行も、繰り返し世界を巻き込んできた新型のインフルエンザも、近年急速に進歩をとげた遺伝子の分析から中国が起源とみられる。13億4,000万人を超える人口が、経済力の向上にともなって国内外を盛んに動き回るようになってきた。・・・中国国内の防疫体制は遅れている。」と指摘し、
まさに、(1968年の香港かぜから50年ほど経過した)このタイミングで、中国から全世界に広まった新型コロナウイルスによる感染症を予想しているのだ。
“人類の歴史は感染症との戦いの歴史である”とは、これまでも広く言われてきていることであり、今後もおそらく、人類が感染症を完全に征服することはないのであろう。とすれば、我々にできることは、過去に学び、そのリスクを出来る限り低減することである。(不幸にも、新型コロナウイルス感染症が拡大しつつある)今こそ、読んでおきたい一冊と思う。
(2020年3月了)
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抗体を持たない女性が風疹に妊娠初期にかかるとかなりの確率(4週目まで50%、8週目まで35%…)で先天異常の子供が産まれると…
コロナ以外にもとんでもなく恐ろしいウイルスと人類は戦って、生き残った子孫が私たちであることを再確認