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普段、詩集は読まないので少し読みなれないところもありましたが、短歌を一つの表現方法として使うことについて、より身近に感じられる詩集だった。
前に進みたい、という肯定的な思いと、行き詰まる現状への諦観のような思い、同じ一人の人間の中で渦巻くばらばらな気持ちを言葉にしようとする詩。
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幼い部分もあるが、短歌による救済を信じ、つらい労働に耐え、淡い恋もして、生き抜いたが、成功を目前にして亡くなった。
僕は彼が、幸せな心で亡くなったと信じたい。幸せな時には、「このまま逝けたなら」と思うこともある。また神経症では恢復期が最も危ういとも聞く。
正規職員に成れたようで、歌集の評価にも自信があっただろう。
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このような圧倒的な才能を持つ人が、人間関係に、社会にすりつぶされていってしまうという現実を呪わざるを得ない
きっとこの歌に目もくれない人たちが我が物顔で社会を闊歩し、今日も僕らをすりつぶす
彼の苦しみと温かさが、そんな僕らの背中をそっと押してくれる。
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32歳で亡くなった歌人の遺歌集。「非正規の友よ、負けるな ぼくはただ書類の整理ばかりしている」「健闘を祈ると言って荻窪で別れた友はどうしているか」など弱者に寄り添う歌が優しい。
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近代詩集なんてほとんど読んだことないし感動したこともない、それが古典になるまでその価値は確定出来ないと思っている。本書が元になって映画化されると知って読んでみた。確かに映画化できそうなネタはそろっているが、何故か他人の日記を覗き見しているような気になった、確かに途中で「日記ではないのだ・・・」という句があって本人も日記を書いているじゃないだろうかと不安になったのかもしれない、まあ著者が夭折しているので、こういう社会の弱者が生まれてくる社会なんだと気付くことになった。
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こんな歌集は初めてだ。
31文字の魂の叫びが容赦なく私の身体の中へと入り込んでくる。
残酷なことだけれど、この若さ、このタイミングでの自死でなければこの歌集はここまで有名になっていなかっただろうな。この世を全うすることより作品を残す道を結果的に選ぶことになった萩原さんを想うとやるせない気持ちでいっぱいです。
短歌の持つパワーを改めて実感しました。ありがとう。
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2020冬の文芸書フェア
所蔵状況の確認はこちらから↓
https://libopac.akibi.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=2001011735
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映画化と聞いて手にしました。優しくユーモアもあり、希望を持とうとしている歌も多数ありました。
何より歌を詠むことが好きだということ、それが心に響いてくる。
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それぞれの三十一文字の歌が繋がり、歌集が一つの歌となっているよう。日常のなかの生きづらさや愛しさ、悲しさ、そしてちょっとした勇気と大きな優しさ。一つ一つの短歌に同感したり、哀しくなったり、クスッとしたり、同じ視線の日常が豊かな言葉で歌われていて、ポケットに入れて、持ち歩きたい作品。文庫本で出していただいて感謝。願わくばもっと多くの彼の作品に触れてみたかった。合掌…。
「占いの結果以上にぼくたちが信じるべきは自分自身だ」
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日常の中に潜む「その先」を想像するのが上手い人。帰り道に買うコンビニの肉まんが美味しいことを知っているだろうし、横断歩道のボタンを押す感覚がきっと好きだろうなと思う。人間らしい人間だなあと個人的に感じた。
この作品は著者が今のままではいけない、もっと、もっとと高みを目指して、そうして、その意志と共に羽ばたくことを願ったのを随所から読み取る事が出来る作品。呼吸に合わせて読みたくなるし、ホットミルクよりも麦茶のほうがこの歌集には合う。
みそひともじを愛した彼は翼を得ただろうか。ことばに遺された心臓が、とても温かく、柔らかくて、酷く切なくなった。
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32歳で命を絶った作者の遺作にして唯一の歌集は眼差しが純粋で眩しい。解説で又吉直樹が「意地悪であることなんて簡単なのだ。平凡を笑うことこそ平凡なのだ」と書いている。それに尽きる。内角高めの厳しいところにグサリと刺さる言葉たち。音が鳴るように綺麗に受け止めたい。
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歌会仲間からプレゼントされた本
以前の歌会で先生が紹介していたらしいが覚えていなかった
正規雇用になって前に進めそうな状況となり、「歌集を出したいんです」と嬉しそうに周囲の方へ報告していたり、週末にリュック背負って書店を巡る姿が浮かびます
短歌に救いや希望を込めてこんなにもこころの叫びが表現できるのかと驚嘆
日常ではそのまま見逃されてしまいそうな懸命に働く人へのまなざしが本当に優しい
片想いの歌はどれも秀逸で真似をしたくなる
自分自身の状況を歌ったものは鋭いナイフでえぐられるような感覚
初めて歌集で泣いてしまった
三枝昂之さん、又吉直樹さんの解説で理解が深まる
ご両親の想いの生きた証として尽力なさって私のところにも届いたことに感謝
これからも、彼の短歌をもっともっと読みたかった
どの歌も素敵 特に印象に残ったものを覚書
いろいろと書いてあるのだ 看護師のあなたの腕はメモ帳なのだ『メモ帳』
牛丼屋頑張っているきみがいてきみの頑張り時給以上だ『タルタルソース』
ひるやすみ寝ているきみよ 懸命に働いている証のごとく『カレーうどん』
作業室にてふたりなり 仕事とは関係のない話がしたい『滑走路』
脳裏には恋の記憶の部屋がありそこにあなたが暮らし始めた『伝書鳩』
遠くからみてもあなたとわかるのはあなたがあなたしかいないから『言葉と言葉』
かっこいいところをきみにみせたくて雪道をゆく掲載誌手に『言葉と言葉』
われを待つひとが未来にいることを願ってともすひとりの部屋を『歌という鳥』
耐えがたき感情を抱くここにいるのはぼくだけどぼくなんだけど『あこがれのひと』
あこがれのままでおわってしまいたくないあこがれのひとがいるのだ『あこがれのひと』
きみじゃないきみを探すよ あの街にさよならをしてどこかの街で『傷心旅行』
好きだ 好きだ 好きだと伝えても届かない恋ばかりしてきた『だだだだ、だだだ』
朝が来た こんなぼくにもやってきた 太陽を眼に焼き付けながら『プラトンの書』
パソコンの向こうにひとがいるんだとアイスクリーム食べて深呼吸『太陽のような光』
提げている袋の中におにぎりと緑茶を入れてもうすぐ春だ『おにぎりと緑茶』
夜明けとはぼくにとっては残酷だ 朝になったら下っ端だから『自転車の空気』
東京の群れのなかにて叫びたい 確かにぼくがここにいること『歌詠む理由』
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この歌集を読めば、心優しく真っ直ぐであたたかい人で、自死なんてすべき人ではないということがよく分かる。
キリンの子を同時に読んだが、過去に起きた辛すぎる出来事をどこか他人事のように生生しく歌にして向き合っていく鳥居さんに対して、著者は辛さの生生しいところにはあまり触れない。
辛いことの中にも何かしらよい側面を見つけようとしたり、誰かのためであろうという知性と気高さを保ちながら、救いを求めるかのように短歌を書いているのではないかと感じた。
でも結果的に、そのことが無意識にどんどん自分を追い詰めてしまったのではないか。深い傷を癒やすことはなく。
なんとなく過去の自分と似ていたのでつい想像してしまったが、結局本人の本当の気持ちは分からないし、勝手な詮索をするのもよくないのでこのへんで止めておく。
中学時代に彼をいじめた側の武蔵中学陸上部の人間たちに自分の犯した罪と向き合い生きてほしいとただ願うばかり。
そして、生きづらさの原因を個性だと結論づけてしてしまうような社会を変えていかないといけないと思った。
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あまり深さは感じられず、でもだからこそ読者が身近に、あぁわかるー、と感じやすいのかもしれないが、私にはあまり刺さらず…
今の下っ端の立場で背伸びをしたい時期だからこそ印象に残った歌がいくつか。
破滅するその前にさえ美はあるぞ 例えば太陽が沈むその前
群衆の一部となっていることを拒否するように本を読みたり
眠るしか選択肢なき真夜中だ 朝になったら下っ端だけど
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短歌とはなんだろう
去年まで短歌に興味なかったが、
TVでたまたま、心掴まれる短歌を見てしまい
こんな31文字で胸がキラキラしてしまうものかと驚いて
何が心を掴むのだろうと考えている。
非正規の友よ、負けるな ぼくはただ書類の整理ばかりしている『テロリズム』
この人の短歌は、他の方のレビューにも書いてあったが、日記のようだ、景色が見えてしまう。
本にして残すという手段を選んだから、彼の心の叫びを私は見る事が出来る。その叫びを、こんなに簡単に読んで、消費していいのかと思いつつも、書き留められなかった思いは、存在していなかったのと同じだとすれば、彼が文章をこんな形で残したことは、作者にも私にも意義のあることなのだと思う。……そうなのかな?