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逆風の吹く中、愚直に前へ進み続ける印象を受けた。言葉に込められている凄まじい熱量に驚く。
解説を読み合点した。
この歌集からは力をもらえる。
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歌集なんて、ちゃんと読んだ事がなかったし、読みたいと思った事もなかった。
新聞の広告で「滑走路」が載っていて、なぜか心に引っかかっていた。それが「非正規の友よ、負けるな ぼくはただ書類の整理ばかりしている」という詩だったと思う。
しばらく忘れていたが先日、いわた書店の店主が書いた「一万円選書」で紹介されていて、やっぱり読もうと、手に取った。
著者の萩原慎一郎さんが、亡くなっている事は知っていたが、この本の入稿後というので、出版される前だと言うことなのだろう。そのタイミングだったのにも驚きだった。
彼が学生時代に、いじめにあって学校に行けなくなり、書店で歌集に出会い歌人を目指したという経緯も皮肉だと思う。そんな経験があったからこそ、こんな素晴らしい歌集が生まれた事は皮肉だ。
暗い詩ばかりではなく、希望を抱いている詩も含まれている事は救いだと思う。
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萩原慎一郎さんの記念すべき第一歌集は、遺歌集となってしまった。
その理由は推測するしかないのだが、中高一貫校での、いじめが元で、ずっと精神的苦痛を抱えていたとも言われており、高校で同じような体験をした私にとって、真にやり切れない気持ちで目頭が熱くなり、怒り、悲しみのようなものを抑えることができない。
いじめのことは、他の作品でもうんざりするほど、何度も書いていて、いじめる側にも原因があると冷静に分析するのもいいが、結果として、彼はもうこの世にいないわけで、それを選択したときの彼の気持ちが、どんなものだったか、考えたことがあるのかと言いたくなるし、私自身、他人事になれず、悔しい思いでいっぱいだ。
もしかしたら、それだけが原因ではなく、この歌集でテーマにしている、労働環境(非正規雇用も正規雇用も)や孤独感もあるのかもしれないが、いずれにしても、この歌集における、彼のまっすぐな思いをしっかり酌み取って、彼の分まで生き抜いてやりたいくらいの、気概は充分いただいた。
彼は決して、生きることを諦めてはいなかったことは、以下の歌で分かる。
今日願い明日も願いあさっても願い未来は変わってゆくさ
癒えることなきその傷が癒えるまで癒えるその日を信じて生きよ
疲れていると手紙に書いてみたけれどぼくは死なずに生きる予定だ
内部にて光り始めて (ここからだ) 恋も短歌も人生だって
理解者はひとりかふたり でも理解者がいたことはしあわせだった
われを待つひとが未来にいることを願ってともすひとりの部屋を
まだ知らぬぼくに会うためノックしてこころの扉開けてゆくのだ
抑圧されたままでいるなよ ぼくたちは三十一文字で鳥になるのだ
いじめだけではない、孤独も分かるつもりだ。
だからこそ、上記の歌自体に、熟成さは無いとしても、愚直なまでの自らの思いの熱量の高さだけは、私にもはっきりと分かる。
私も同じ事を思っていたんだ。ひとりじゃなかったんだよ。
それから、彼は、何度も恋をしていた。
滑走路から果てなき高さへと舞い上がった、彼の純粋な魂を、以下の歌で思いたい。
おもいきり空に向かって叫ぶのだ 短歌が好きだ あなたが好きだ
あの雲にベンチのように腰掛けてきみとふたりで語り合いたい
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自分に寄り添ってくれるように感じた。あたたかい気持ちにも切ない気持ちにもなる。心の奥深くに染み入る歌。何度も何度も読んでしまう。いい本に出会った。やさしくてやわらかい。傷付きながらも生き抜こうとした歌に勇気づけられる。
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新宿のブックファーストで平積みされていたから何気なく手に取りました。最初の数ページを読み「面白いな」と思い著者の経歴を見たら、ほんの1年少し前に若くして亡くなっていて本作が最初で最後の短歌集であることを知り、読まなくてはという熱い気持ちに駆られ購入しました。
読み進めていくうちに、単に技巧的で面白いだけでなく、尾崎豊やTHE BLUE HEARTSに通じる人間味溢れた熱く綺麗なものを感じ、短歌というものの可能性を教えられました。著者が自分がこの短歌集を購入した新宿のブックファーストによく来ていたらしいことを知り、身体が震えたこともありました。
平日に毎日大学で朝から夕方まで実習があってストレスが多い時期に読んでいたのですが、週末の夜に逃げるように1人で新宿西口のマクドナルドでこの短歌集を読む時間が心の支えでした。
その後、この短歌集を読んでからというもの僕は短歌の魅力に惹かれ短歌集を買うようになりましたが、この短歌集を超える短歌集にはまだ巡り合えていません。
本当に大好きな本です。皆さんも是非読んでみてください。
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歌集に触れたのは久しぶりです。
岩田徹さんの一万円選書で推薦されていたので手に取りました。
生きておられたら37歳、息子というには少し上、弟というには少し下、接点の少ない世代で、感覚的には同調しづらいけど、ああ、そうだね、と思う歌はいくつか。
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岩田徹さんの『一万円選書』で紹介されていたので手に取りました。映画化もされるようです。歌集はあまり読みませんが、萩原さんのストレートな痛みや希望が伝わる作品でした。あとがきのご両親の文章を読んで、学生時代のいじめがなければ、この方の人生も作品も違うものになっていたのだろうかと思うと、複雑な気持ちでした。
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5552の文庫版のレビューを読んで気になって読んだ。
32歳という若さで亡くなってしまった歌人萩原慎一郎の第一歌集であり、かつ、遺歌集となってしまった。ストレートでまっすぐな表現で詠まれた短歌が多くてとても胸を打たれた。
長く非正規雇用として働いていたそうで、同じ境遇で働く若者へのエールと思える短歌も多くあった。
“非正規の友よ、負けるな ぼくはただ書類の整理ばかりしている”
“挫折などしたくはないが挫折することはしばしば 東京をゆく”
“ぼくたちのこころは揺れる 揺れるのだ だから舵取り持続するのだ”
“かならずや通りの多い通りにも渡れるときがやってくるのだ”
“占いの結果以上にぼくたちが信じるべきは自分自身だ”
「外へ出ると短歌がたくさん出来るんだよ」という著者の言葉も心に残った。
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32歳で命を絶った歌人・萩原慎一郎さんの第一歌集であり、遺歌集。
真っ直ぐ素直な言葉で綴られた、約300首の短歌が収録されています。
読まれる内容は、不安定な労働環境や片思い、将来の夢や憂いや、短歌への愛情。
純粋で透き通っていて、でも痛々しく切実さを感じられる31文字の言葉たち。
生き辛い世の中を、それでも希望をもって生きようとしていたことがわかります。
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♠️ いじめにあった辛い記憶を抱え、
非正規雇用で働く日々。生きていく
苦悩と光を三十一文字で綴る。
著者の第一歌集で遺作となった。
傷ついてしまったこころ どぼどぼと見えぬ血液垂れているなり 「こころの枝」
生きているというより生き抜いている こころに雨の記憶を抱いて 「理解者」
ぼくも非正規きみも非正規秋がきて牛丼屋にて牛丼食べる 「非正規」
頭を下げて頭を下げて牛丼を食べて頭を下げて暮れゆく 「自転車の空気」
♠️ 生きることに苦悩しながらも短歌を
翼に飛ぼうとする姿が見えてくる。
抑圧されたままでいるなよ ぼくたちは三十一文字で鳥になるのだ 「プラトンの書」
歌一首湧いてくるなり柔らかい心の部位を刺激されつつ 「きらきら」
東京の群れのなかにて叫びたい 確かにぼくがここにいること 「歌詠む理由」
靴ひもを結び直しているときに春の匂いが横を過ぎゆく 「靴ひも」
きみのため用意されたる滑走路きみは翼を手にすればいい 「滑走路」
口語で綴る三十一文字に胸を打たれた♣️
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2017年に逝去された歌人の小説化もされた歌集。
学生時代に虐めを受け、社会では思うように生きられない。
そんな悩み、葛藤を三十一文字に込めてストレートに放っているような印象を受けた。
もっとこの人の作品を読みたかったと素直に思える一冊。
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焦燥を感じる歌が多かった
p14朝が来た こんなぼくにもやってきた 太陽を眼に焼きつけながら
p84没頭に至れるまでの道筋を歩むがためにまずは座りぬ
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⚫︎感想
人生を悩んだ一人の若者の、同じような立場にある他者へ向けて、寄り添う歌が切なくて、ハッとさせられた。
三十一文字で表現する懸命さに胸を打たれた。
いくつかの歌を書き写しておこうと思う。
⚫︎本概要より転載
いじめ、非正規雇用・・・・・逆境に負けず
それでも生きる希望を歌い続けた歌人がいた。
32 歳で命を絶った若き歌人の絶唱を収めた短歌集。
「ピュアな言葉に思う。短歌は彼の濾過装置。自在な表現に思う。短歌は彼の翼。真っすぐに心を射抜く短歌が、ここにある。 俵万智」
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図書館で手に取った一冊。
とても真面目な人なんだろうな。
言葉と言葉の間に、繋ぎ目があるのがわかるカタカタとした短歌で、私はあまり馴染めなかった。
青年の短歌という印象。
以下筆者の背景を知り追記。
うーん、どうだろう。作者ごとひっくるめての作品だとしたら、これは傑作なのかもしれない。でも私はフラットに短歌単体に触れていたい。
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親の後書きの重たさが300近くの短歌を追い越してしまったと思う、その意味で読後感が良くない
歌そのものがあまり好みでなかったのは置いといて、歌以外の部分、作者の人生が混ざりこんでくる感じが嫌だなと思った