紙の本
賛否両論を巻き起こした全7巻シリーズの最終巻です!
2020/05/09 10:46
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、イギリス人作家ルイス氏による児童文学で、同国の児童文学賞であるカーネギー賞を受賞した作品でもあります。原作は全7部作からなり、光文社古典新訳文庫でも原作に沿って7巻シリーズで刊行されています。同書はその最終巻です。同書の内容は、キリスト教の「最後の審判」の比喩、ハルマゲドンが物語の中で大きなウェイトを占めています。また「影の国」の奥に「まことの国」があるという世界観にはプラトンのイデア論が反映されているとも言われています。この最終巻の意見としては、「茫然とするような結末」と評されたもの、「生を放棄し、死を賛美する最悪の結末」と批判されたもの、「敵も味方ももろともに暗い世界へと崩壊していくイメージに大きな衝撃を受けた」と驚愕したものなど様々で、賛否両論が巻き起こった最終巻でもあります。ぜひ、読者ご自身で一度読んでみてください。
投稿元:
レビューを見る
完結巻。最初からかなり後の方まで不穏な雰囲気。
シフトとパズルの上下関係はいつの時代もこのようなことがあるんだなと思わされるし、そのシフトの上に立つ者もいるというのがまた・・・リアル。
ナルニアが「終わる」という展開にもびっくりした。この物語がキリスト教の価値観を体現していることは分かっていたつもりだけど・・・ひとつの物語の中で、その世界の創生から終焉までを見せるなんてことはあまりないんじゃないかと思う。もちろん、なくなったわけではなく・・・というオチなんだけれども。
「いつかぜひ読んでみたいとあこがれている物語の景色」がひろがる、ほんもののナルニア・・・見てみたいなぁ・・・。しかしそこはいわゆる天国なんだよな、とも思う。
あと、アスランとエメスのやりとりも印象的だった。だれに誓うかではなく、なにを誓い、なにを行なうかが重要なのだと。
投稿元:
レビューを見る
原書名:THE SILVER CHAIR
〈大釜池〉のほとりで
王の早計
大ザルの天下
その夜に起こったこと
王に助け現る
一夜の大仕事
ドワーフの本性
ワシがもたらした知らせ
〈厩の丘〉の大集会
誰か厩にはいる者は?
急転直下
厩の中へ
かたくななドワーフたち
ナルニア、夜となる
もっと高く、もっと中へ!
影の国に別れをつげて
著者:C・S・ルイス(Lewis, Clive Staples, 1898-1963、北アイルランド、小説家)
訳者:土屋京子(1956-、愛知県、翻訳家)
解説:山尾悠子(1955-、岡山市、小説家)
投稿元:
レビューを見る
井辻朱美の解説はネタバレ
リリアン王から二百年も経つとナルニアの空気も濁ってきて、(20世紀の執筆当時と同じく)“救世主の再来”と思われた獅子があとで「なんであんなに従順に恐ろしいことをしたのだろう」Tyrantだったりする。王と一角獣が殺人をしたのは良くなかったが劫初から植わっていた〈国の守りの木〉を伐ることは、国家反逆罪に当たる。引き返しで名乗り出たのは最悪だった。“保護者”たるべきルーンウィットはあっさり殺され、地球からの二人が事情がわからないのは同じ。
偽アスランは早くに正体がバレるが、
熱望するアスランは姿を見せない。
魔神は実在した。位相転換した世界で〈ナルニアの友〉はMentorとなり
投稿元:
レビューを見る
最後の戦いというタイトルからスターウォーズみたいなものを想像していたけど、違った。
もっと地味で、むしろ「黙示録」を彷彿させる。
投稿元:
レビューを見る
ナルニア国最終話。私は『魔術師とおい』から読んだから、てっきりジェイディスとアスラン側の戦いかと思っていたんだけど、そうではなかった。
ずっと読んできたナルニアがなくなってしまうのは、とても寂しかったけど、極めてキリスト教的な話だな、と思いながら読了した。
投稿元:
レビューを見る
ナルニア国物語の最終巻。とうとうここまできた。
冒頭、“ナルニア最後の日々”という書き出しから始まり、それまでの一連の物語と異なって、序盤はどこか不穏な、ぞわぞわする空気が漂う。リリアン王の時代からすでに200年以上が経過し、ナルニアの住民の中にはアスランを信じない者たちも少なからずいるようになった。その心の隙間をぬって、大ザルのシフトが隣国のカロルーメンと組んで偽アスランを擁立。ナルニア王ティリアンは果敢に立ち向かうが…。
今回は、一人を除き、これまでの登場人物がフルで登場する。まさかユースティスがここまで成長するとは、初登場時からは想像もできなかった。ナルニアの創造から始まった物語は、ナルニアの「崩壊」で幕を閉じる。物語の背景にあるのは、キリスト教的終末論であることは明らかだろう。黙示録ではラッパを吹き鳴らす天使たちが登場するが、ナルニアでは時の翁が角笛を吹き鳴らし、世界を終末へと導くのである。
ルイスによるナルニアの終末の描写はとても視覚的である。これを子どもの頃に読んでいたら、良くも悪くも軽いトラウマになっていたのではないかと思う。それほどに異質で、かつ圧倒される。ただ、だからこそ、変な知識のバイアスがない子どもの頃にこの本を読んでおきたかったと思う。この最終巻によって、ナルニアは確実に他の多くの類書と一線を画す物語となった。
Kindleで安く電子版の合本が買えるので、思わず原著を入手した。これは子どもの頃にはできないことだろう。折に触れ読み返して長く楽しみたいと思う。
投稿元:
レビューを見る
ナルニアの終焉と、もうひとつの始まり。
時はティリアン王の時代、大ザルによる偽アスランの出現は、大国カロールメンの侵攻を招き、ドワーフの不信も加えて、ティリアンを勝ち目のない最後の戦いへと導く。呼ばれたジルとユースティス、夢の中に現れた7名の王と女王、そして厩の中にあったものとは——。
読んだことはなくとも、ナルニア国は最終巻で崩壊し、呼ばれた子どもたちが現実世界としては死ぬのだと知っていた。それは有名な作品であるためにネタバレは避けられなかっただけで、今回読んでみて、やはりネタバレを知っているだけでは意味がなかった。
『銀の椅子』でもわかっていたようにアスランの国とは死後の世界である。ティリアンたちはナルニア国での戦いにおいて、ピーターたちはイギリスでの鉄道事故において、亡くなったのでアスランの国に集まり、再会する。ナルニア国の最後の戦いはまるで聖書の最後の審判であり、世の終わりにやってくる神の国がアスランの国と重なる。先にナルニア物語に現れるキリスト教的なモチーフの話を聞いてしまっている身として、そのような理解は仕方ないかもしれない。
しかし愛すべきリーピチープをはじめ、今までの登場人物の名前が次々と並ぶくだりは嬉しいものだ。もう一度皆に会える感動的な大団円である。現実世界において死んでしまっているけど。でもいつか自分も影の国を離れて本物の世界へ行ける、そこでは皆に会えると思ったら。それは幸せだと言えるだろう。死への恐怖がすべて拭いさられるわけではないけど。
ところで解説でも触れられていたが、現実世界としては1人残されてしまったスーザンはその後どうしたのだろう。ストッキングや口紅に夢中になっている、なんと年頃の女の子なのかと。願うなら自分では忘れていたとしてもかつての女王のように強く生きていってほしいし、いつか年老いてからでもナルニアのことを思い出して、アスランの国に来て、皆と再会してほしい。
投稿元:
レビューを見る
シリーズ完走、最終巻
子供の頃は、宗教観が強すぎ、なぜ滅亡なのか事故死なのか全く釈然としなかったけど、大人になった今ではナルニアは何も終わってないのかと気付く。
終盤のカーテンコールのような演出も嬉しい。