紙の本
続ける意義
2021/10/17 11:54
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
各界の執筆者が、岩波書店のサイトで連載を続けているシリーズ。歳月が過ぎても、このように継続し、さらに毎年一冊にまとめているところが、素晴らしい。
時間は記憶の忘却を促す一方で、その時その時の出来事(問題意識)と結びつき、語り継がれ、繋がっていくものだと思うから。
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1 3・11を心に刻んで
2 復幸の設計図(河北新報社)
著者:武田真一(1959-、ジャーナリスト)、沼野恭子(1957-、東京都、ロシア文学)、長谷川公一(1954-、上山市、社会学)、阿古智子(1971-、中国研究)、荒このみ(1946-、埼玉県、アメリカ文学)、小森はるか(1989-、映像作家)、新井卓(1978-、川崎市、写真家)、粟津ケン(1960-、KEN主宰)、八木啓代(1962-、大阪府、歌手)、玄田有史(1964-、島根県、経済学)、中村純(1970-、東京都、詩人)、松田洋介(1975-、教育社会学)、栗木京子(1954-、名古屋市、歌人)、小寺隆幸(1951-、数学教育)、三島憲一(1942-、東京、哲学)、小谷みどり(1969-、死生学)、佐藤泉(1963-、足利市、日本文学)、増田ユリヤ(1964-、横浜市、ジャーナリスト)、鬼頭秀一(1951-、名古屋市、環境倫理学)、桑原史成(1936-、島根県津和野町、報道写真家)、森田裕美(1973-、ジャーナリスト)、石川梵(1960-、大分県、写真家)、米山リサ(1959-、アメリカ・イリノイ州、日本史)、森達也(1956-、呉市、映画監督)、大口玲子(1969-、大田区、歌人)、実川悠太(1954-、社会運動家)、山本宗補(1953-、報道写真家)、尾崎寛直(1975-、環境政策)、青木理(1966-、長野県、ジャーナリスト)、鈴木邦男(1943-、郡山市、政治活動家)、三宮麻由子(1966-、東京、エッセイスト)、寺澤尚晃(1970-、ジャーナリスト)、毬谷友子(1960-、港区、俳優)、熊谷晋一郎(1977-、山口県、医師)、坂上香(1965-、大阪市、映画監督)、四元康祐(1959-、寝屋川市、詩人)
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〇きっとあなたに合う、文章が見つかるはずだ。そんな36通りの感じ方、2018Ver
この本を、女川町のレンガみちの、復興商店街のそばにある小さな書店で手に取った。
そこの店主さんは話してくれた。
「2年前にやっと、ここに店を出すことができたんだよ」
2019年11月初頭にこの話を聞いたのだから、店を出せたのは2017年。震災から6年余り経ってから、生業(なりわい)を取り戻すことができた。
それまでずっと、仮設住宅で暮らしていたそうだ。
6年間、どんな思いで暮らしていたのだろう?
書店に入った壁際には、どっさりと震災や女川のことを書いた本が、積んであった。
***
復興を最も近くで見ている立場もあれば、外から来て、触れて、考えさせられた人のほうが多いはずだ。
この「心に刻んで」シリーズに寄稿する方々もその一人であろう。
岩波書店ホームページで連載されたこの掌編たちは、同様に外から来た私の胸に刺さる。
p88で熊谷氏が引いた以下の文章が心に残る。
"痛みが静かな悲しみに変わるには、数えきれないくらい同じ話を誰かに聞いてもらわないといけないですね。"
(上岡・大嶋『その後の不自由』医学書院)
人により、それぞれ引用されている文章に対する感じ方は異なるはずだ。
それは、この震災への思いや経験が人それぞれ違うから。
きっとあなたに合う、文章が見つかるはずだ。
そして、後半第二部では河北新報連載の『復興の設計図』を縮約して掲載している。女川町の当時~今までの動きがつぶさにわかるので、参考にされたい。
***
なお、その店主さんはこうも言っていた。
「設定してないから、消費税も8%のままなんだよな」
来てくれた人へのお礼か、はたまた生活の苦しさへの小さな抗議なのか。帰りの時間が来てしまい、聞くことはできなかった。