紙の本
失うものと、得るものと。
2018/06/06 17:01
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投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
類人猿の研究者と、人類の移動を追って多数の民族と触れ合ってきた冒険家の対談。
ヒトがゴリラなどと決定的に違うのはなにか。文明化が遅れている民族に残った風習や類人猿の生態などから現代の「ヒト」を考えていく。
実験的な証明をできる題材でもないのだが「反例はないのか」などどうしても考えながら読んでしまう。反対の考え方ももう少し取り上げて欲しかった。おそらく対談者にとっては既に練り上げた論理なのでそこまで書く必要を感じなかったのかもしれないが、参考文献も載っておらず、本書だけを読む素人読者にはもう少し親切さがあっても良かったと思う。
観察した結果が中心の論議なので、今一つ想像の域を超えてないように思える部分も多いのは仕方がないのかもしれない。比較する例としては、良く研究されているからだろうがゴリラとニホンザルしかほとんどあげられない。それが特殊例なのか、基本的な性質なのか、まだまだ知らなくては何ともいえない気分である。
「ヒトが失いつつあるもの」について、それを「惜しむ」立場で書かれているが、考え方によっては「そうやって何かを失い、何かを得て変わっていくのでは?」という肯定的な考え方はできないのだろうか、とも考えた。失うものと、得るものと。問題提起としては面白かった。
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今回、人間の本質を知りたくて読んだが、なかなか面白かった。
☆人を人足らしめているのは何か?
共同保育と食物の共有
常に他者とともにあるのが人間。
☆家族成立の4条件
外婚性、イノセントタブー、男女の分業、近隣関係
ゴリラなどにも、最初の3つはある。近隣関係つまり家族や親戚関係にないものと関係を結べる、共同体を形成できるというのが人間だけである。
☆人間の女性は発情期をコントロールできる。
自分の意志でも発情できる。発情しないこともできる。
外からではわからない。装飾品や化粧を女性がすることにつながるのでは?
☆負けない論理
人間の平等性や対等性、つまり共同体を維持するためのことを考えた時、負けないことが重要なのである。
しかし一神教の場合、砂漠で生まれた宗教。食物が少ないので勝ち負けになりやすい。結果として勝ち負けの論理になってしまう。
日本などの多神教の場合、森の中の宗教。食物も豊富なので棲み分けとなる。これを競争の裏側の論理とよぶこともある。
☆所有権
所有権はあっても、独占や貯蓄はしない原住民。食物を分けても、貸し借りがでないように、自分にとっては価値のないことであるかのように振る舞う。
暴力や戦争というのも穀物の貯蓄が始まってから起きたこと。柵を作って土地を独占し、穀物の貯蓄ができるようになったことが起因しているのでは?
牧畜民族は土地を原因に争わない。そこに独占の意識が働くからイスラエルで起こるような戦争になるのでは?
☆インターネットの弊害
昔は自分と自分の周りの共同体の人、とそれ以外に分かれてた。これがつながってしまった。内部の中で完結していたものが外部とつながることで、内部の意義が薄れてきた。自分たちの中ではない、外から評価されたいという思いにつながっている。
→資格乱立
外面だけよくなる。丸投げ、無責任社会
☆グローバル社会
現代は経済が支配する社会になっている。人々の結び付きや文化的な交流により多様な文化や慣習に共感でくるようになるのはいいこと。しかしそれが経済のもとで、大企業による価値の一元化になってしまっている。
フェアトレードなど対抗する動きも出てきているが…
一面的になりつつある中で、昔からある文化を大切にしていく、それを互いに共有していくことが本当のグローバリゼーションなのではないか?
☆人間は文化を作ることで発展してきた。
弱い人間は森から追い出され草原に、でもそこで生き延びる術を見つけ、人口が増えるとそこから追い出され、山岳地帯や海、寒冷地に出てきた。そうやって弱いから追い出されてもそこで新しい生活を見つける。失敗を繰り返して探して新しい生活に適応する。火を使えるようになり、裁縫わして服をきるようになり、家を作ったり、魚をとったり、そうやって変化してきた。それが人間なのでは?
☆人間だけが未来を考える。
希望をもったり、将来に向かって現状を変えたり。
その��めには諦めず、繰り返す。待つが重要。
現代は余裕がなくなり即効性を求めてしまっている。
☆風の人、土の人。風土。
行動する人守る人があってこそ成り立つ
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人類が発生してから長い年月が経っていますが、それはあくまで人間の尺度での事。地球規模では非常に微細な時間ではありますが、それでも長い時間をかけて人類は移動してきました。
そんな長い旅を自身で表現しようとするグレートジャーニーの関野さんと、ゴリラ研究の第一人者山極さんの対談です。
人々といろいろなものを共有して栄えてきた人類が、ここに来て個人個人の利益だけで判断する動物的な方向に変化しているというのが興味深かった。
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ユニークな二人の活動家が対談しているが、それぞれの専門分野をベースに知恵を出し合う姿勢が素晴らしい.ホモサピエンスがアフリカから出て行った事実を踏まえて、ヒトの共感力や二足歩行などの要素が人類の発展に寄与したことを例示している.現代の丸投げ文化や無責任社会を厳しく糾弾しており、その主張は非常に賛同できるものだ.奥の深い議論が展開される現場に立ち会わせてもらった感じだ.