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近くにいる祖父の存在が、主人公の生き方を構築しているように感じた。生きるために必死な祖父、生きることに対して前向きな主人公の二人の存在が、決して恵まれてはいない環境下でも輝いて見えた。
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3
じいちゃんなんて早く死んだらよかといいながらできることもやってもらおうとする祖父の狡猾さと、自己都合退職して再就職中で人生再構築中の孫健斗との共生と変化を描いた作品。尊厳死、年金・保険制度などについても考えさせられる。
ヘルパーの過剰な介護、家族の優しさからの自分でやらせようとする介護。死にたいのなら自分で体を動かすチャンスを奪い尊厳死をアシストする健斗。労働者ヘルパーは自分が楽に仕事をするために「優しさ」を発揮するだけで、被介護者自身の意向に沿ったケアではない、行きたい者にはバリアを与え厳しくし、死にたい者にはバリアを取り除き甘やかすという風に個別にやり方を考える必要がある。表面的には同じでも中身は違う。「使わない機能は衰える」の逆をいくために、健斗は体を鍛えたり勉強したり。
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早く死にたいという祖父の願いを受け止めて、ひそかに手助けを画策する青年の、ブラックでおかしな物語。
転職先を探しながら祖父の世話をする主人公が、「使わない機能は衰える」を逆手に取る発想がおもしろい。それまでのスパルタで自立を促す介護ではなく、自立できなくなるようにあえて世話をし続ける。同時に、自分は筋トレに目覚め健康的な生活を取り戻し、ニートな生活からの脱却を図っていく。
どこまでが本心なのかわからない青年のひたむきな努力が滑稽で、さらにはじつは生きることに執着している祖父の狡い姿も見えてきて、皮肉混じりの笑いを誘う。
私の周囲でも、親の介護が話題となることも増えてきた。でもこれは、重い素材を扱いながらも、そんな現実の暗さは微塵も感じさせないユニークな作品だった。
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修飾語が長くて、読みづらい文体だった。あと言葉使いが汚いところもあんまり好きじゃないなぁ。でも健斗とおじいさんの関係はうまく表されてると思う。
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尊厳死のための過剰介護が、精神的にはかなりきついという。
勝手な話だと思うけど、人生の最後がこの状態なら、その前にぽっくり逝きたいわ、と思う。
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死んだらよか・楽に死なせてやりたい、という理性からくる行動と、いざというときに垣間見える死にたくない・死んでほしくないの本能が面白かった。
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他人より、身内の年長者のことを知らない&話を聞くことがためらわれる感覚が、じぶんにもあったなと思い出された。
もっと話を聞きたかった、と思うことも
利己的、自己満足なことなのかなー
「家族」の枠内にいるから、
親しい・知っていると刷り込まれているのかも。
祖父の老いや母の苛立ちの描写がリアルで、
読んでいるときはややつらかった。
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よくわからんかった。
健斗の考え方がなんか気持ち悪くて
ただの変態やんって思った。
相手を思う気持ち、敬う気持ちって
なんなんやろう。
おじいちゃんは死にたいって言いながら
1番生にしがみついとるんやと思う。
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ただ、年老いてなにもできないで過ごす1日はどんなものだろうと想像してゾッとした。ただベッドに横たわっているだけ。死を待つだけ。そんな退屈な日々は想像するだけで怖い。
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死んだらよか、と繰り返す祖父と、その言葉を受け取ってゆるやかに死に向かわせようとする孫の話。
個人的には好きな文体だった。
年老いて口では死ぬ死ぬと言うが本当は生きたい祖父の感情、やろうとすればできるけど、しんどいから孫や家族に何でもやらせる祖父が妙にリアルで心に残った。
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健斗は、自分を血縁者である祖父と重ね合わせていたように感じました。
そして自分と、老いて肉体も精神も弱くなった祖父とを比較して、自分は強いと存在価値を確かめていた気がします。
恋人の亜美に対しても、自分の価値基準から亜美を見下して安心感を得ていたような、少しずるい人だと思いました。
祖父が死を願っているから尊厳死を叶えてあげようとする様は、自分が祖父に早く死んでほしいからなんじゃないかと疑いましたが。
尊厳死につながるといいつつも介護をしっかりと行っていたり、いざ祖父が死を迎えそうになると必死に止めたりと
祖父に対する思いも確かに持っている。
血縁者といえども、綺麗事だけじゃ介護は務まらない。
被介護者との関わり方を考えさせられる話でした。
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芥川賞の作品は難しい先入観があった。
この本は、読みやすかったが終わりがイマイチ。
祖父と孫の物語。
介護が必要な祖父は、早く死にたいが口癖。孫である青年は、祖父を苦しまず尊厳死させようと模索し、必要以上の補助をした(要介護3→5へ)。しかし、結果は上手くいかず青年は鍛えられた身体と精神で就職内定が決まり、家を出ていく。青年の人生が再構築されるまでを描いている。
まぁ、祖父と青年の内面的な戦いの話。
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羽田圭介さんが芥川賞を受賞した作品。
主人公は、母とクリントイーストウッドの2歳上の祖父と暮らす、行政書士試験と転職活動をしっかりしている男子。
祖父は「早く迎えば来て欲しい」と受け手からの励まし前提で口にする。
母は甘えてくる祖父(自分の父)に手を貸さず自分で自分の事をさせる考え。
デイケアや入院先では手取り足取り介助してあげる。
主人公は、祖父の早く死にたいという願望を叶えてあげようと、身の回りの事を世話してあげつつ、祖父を反面教師に筋トレで自らの肉体に鞭打つ。そのような環境にいる彼は、駅でもエレベーターを使うくらいグウタラな彼女と徐々に距離が空いていく。
「優しくしないとダメになっちゃうんだよ」と彼女に放った言葉と祖父へのケアの対称性が心にのこる。
部屋の中で蠢く何かは何を示唆していたのか。
筋トレに励む様子や論理的な思考の主人公は、羽田さんそのものとして想像された。
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主人公の物事の少し捻くれた物事の捉え方に親近感が持て、個人的には読みやすく興味深い内容だった。しかし終わり方が釈然としないというか、突然な印象で、作中に出てきたいくつかの要素を消化できていない点が、残念だった。
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153回の芥川賞の作品と知って読んでみた。内容は割と簡単でさくっと読める(ページ数も150ほど)。ただ、登場人物に共感するよりかは自分とは違う考えを持った人のとる行動に自分自身を客観視させられている気分になった。内容はあまり濃いものではなかったが、老人などへの親切心が本当に相手のためになっていることなのか?と自分の常識を考えさせられる作品になった。