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子供のころ生き別れた父親を理想化していた朋美に突き付けられた現実。母子二代、血をめぐる魂の彷徨を描く、自分を愛せない人たちの物語。
在日コリアンの血が流れていると知った朋美の動揺。一方、日本人ならではの差別感に徹底的に抗戦した母・清子。真逆のようで、自身のレゾンデートルの置場所に苦悩したことは同じだと思った。「ミアネ、クレド、サランヘ」(ごめん、だけど愛してる)。なんて悲しくも深い言葉なんだろう。
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周囲に在日の人は予想以上にいると思うし、知らず知らずにかかわることも多いが、それぞれの人生で背負っているものの重さが伝わってきて、胸が痛む。
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母清子と暮らす朋子が、疾走した自分の父親が朝鮮人であると知ってショックを受け、在日の親友とも交流を絶つが、やがて大阪に住む父を訪ねて乗り越えていくまでを、年代別に朋子の視点、母清子の視点など変えながら描いていく。比較的すらっと読めたが、ストーリー的には今ひとつかな。
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「乳房のくにで」が面白かったので、この著者の作品を調べて、本作は在日コリアンが題材になっているようだったので興味がわいて読みました。物語は父親不在で母子家庭で育った朋美の子供時代から、壮年に至るまでまでを描いている。素直になれない性格や、友達、いとことの関係、母との確執などは、父親のルーツがどこであっても関係なく、思春期の物語として読める。孤独で知的だが素直ではない朋美と、勉強はできないけど素直で明るい幸子との関係も読みごたえがあった。
屈折した子供時代を経て、それなりに魅力的な女性になったらしい朋美の姿を思い浮かべながら読むと楽しい。あくまで「それなり」で、劇的に美しくなった、とかじゃないところがまた良い。
自分の父親が朝鮮人かもしれないと知ったときの嫌悪感や、母清子の回想に出てくる、1960年代のわかりやすい在日への差別感情など、日本社会に存在する(した)差別をストレートに、ありのままに描いていると思った。自分は差別なんてしない、今の時代にはありえない、と思っている人も、この部分を読んだら、その時代に自分が生きていたらやはり同じように差別していたのではないか、と考えさせられる。
教科書にはよく、「差別をうけながらも力強く生きた」というような例や記述が出てくるが、清子が若かった時代、困っている同胞を家族同然に助けたことなどが、それにあたるのだろう。そうしなければ、生きていけなかったのだろうと思う。また、このままではダメだと考え、北朝鮮帰国事業によって北に渡った人たちも多い。
プロローグに出てくる朋美の娘のエピソードが、明るい未来を予感させて、構成もすごくいいな、と思った。