紙の本
ドイツ帝国の崩壊
2018/05/26 10:49
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投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
国家の崩壊には、トップの能力や資質も大きな原因となっていることが分かります。本書はそれを教えてくれます。また、ヴィルヘルム1世と2世の間に短期間のドイツ皇帝がいたと言うことに気づかされました。
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統一国民国家草創期、工業化・大衆社会化、世界大戦という激動の時代に生きた、最後のドイツ皇帝の生涯。覇権への夢と敗北を描く。
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第1次大戦がどうして起こったのか、3国同盟と3国協商陣営の対立などと昔から一方的に類型化されているが、その中でドイツの指導者であった「カイザル」がどのような人物で、彼が開戦へ向かう中でどういう役割を果たしていたのか、あまり考えたことがなかった面である。英ビクトリア女王の孫として生まれ、英国への憧れ、英国風の生活・政治をしようとした人物、そして両親への反発から反英主義者でもあるという全く矛盾した顔を持ち、また男性的を装いつつ、女性的な性格が強かったという人でもあった。国民には酒場談義でむしろ人気があった君主だった!そして敗戦後はオランダに亡命し、1941年に死亡するまでどのような日々を送り、ナチスドイツの台頭への受け止め方は…。私たちからすれば、平穏な仕合せな晩年と思うのだが、本人はそうでもないと思っていた!ドイツ帝国がプロイセンその他との連合国という2重帝国の形をとっており、単純な帝国ではない!との説明には驚き。オーストリア皇太子暗殺事件が第1次大戦に結びつくとは誰も!ドイツ皇帝も夢にも思っていなかった!歴史の流れの恐ろしさを痛感する。このような中で戦争責任としてウィルヘルム2世を訴追する動きもあったとは、まるで30年後の日本を彷彿させる話だった。世界史の常識を崩された本であった。
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ドイツ帝国最後の皇帝ヴィルヘルム2世の評伝。
生い立ちなどからくる性格の2面性や、国民国家への時代の流れが、皇帝と彼の帝政を終焉に導いた。
自身の能力を過信してベラベラ喋ってしまうみたいな性格面では、ヴィルヘルム2世はトランプに通じるところもあるように見える。また、興隆しつつある大国という点で、彼の治世下のドイツと中国の類似性がある。そう考えると、現代の世界を読み解くことに、彼の時代を学ぶことの意味が一つあるのではないかと感じる。
カイゼル髭に象徴される武張った威厳ある皇帝の姿ではない、弱いひとりの人間ヴィルヘルムの物語として、面白く読めた。
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ヴィルヘルム2世の評伝。小説を読むように面白く流れていく。著者の筆力に脱帽。時代とともに振り回されつつも、つくづく幸せな人生を鑑みる。こういうリーダーは結構いる。
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ちょうど百年前に退位・亡命したドイツ最後の皇帝の評伝。人生がとてもドラマチックで引き込まれる。
ビスマルクとともにドイツ統一を成し遂げた祖父のヴィルヘルム一世の後,父フリードリヒ三世の治世が僅か百日で終わって即位というのも劇的。
その皇帝個人を軸にして第二帝国の隆盛と落日を辿る。特に落日が詳しく,主人公の晩年と併せて哀愁を誘う。
ロシア最後の皇帝ニコライ二世は義理の従弟で,ウィリー,ニッキーと呼び合う仲。その従弟はロシア革命で銃殺されてしまっているから,さすがの権威主義者も退位・亡命の道しかなかったのだろう。本書冒頭で紹介される,一次大戦開戦時の演説が彼の絶頂期だった。
「ホーエンツォラーン家」って表記には初めて接したけど,めちゃくちゃ良い本だった。
(「ホーエンツォレルン家」の方がなじみがある)
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ドイツ帝国最後の皇帝、ヴィルヘルム2世の評伝。
帝国の隆盛と斜陽へと向かう様子とともに、当時の国際情勢などを交え、ヴィルヘルム2世の「カイゼル髭」と称されるような威厳のある皇帝の姿を描き出す。
ひとつの劇的な人生物語を読んだ気持ちだった。
生い立ちがどれくらい影響したかは、はっきりわからない。
しかし、子どものころに受けたスパルタ教育や母との確執もあり、イギリスへの憎しみ・反発はあっただろう。そして、同時に、イギリスへの憧れ、愛着もあり、イギリス風の政治を取り入れようとした。
それが、晩年、イギリスを意識し過ぎて海軍増強に力を入れ過ぎた。結果、周辺諸国の均衡を崩し君主制の崩壊を早めてしまう皮肉。
高すぎる自己顕示欲、高慢、多すぎる(そして、深刻な)失言の数々。
筆者は”生まれる時代を間違えた王様”と評するが、“生まれた時代も場所も間違えた王様”のような悲哀を感じる。
しかし、生まれるべくして生まれ、第2帝国をよくも悪くも導いた皇帝の姿である。
意外に、ヴィルヘルム2世についての評伝が少ないことにも驚き。
もちろん、本国にはたくさんあり、日本においてもあるようですが、入手しにくい状況だったりするので、『ヴィルヘルム2世』(中公新書)は、個人的には、手がかりになる1冊になるのではないか、と。