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ドビュッシーの演奏家兼評論家のCDと文章。
口絵は、アンドレ・エレとドビュッシーが共作したバレー「おもちゃ箱」の台本と挿絵となった絵本。そして、アンドレ・エレのその他の作品。
「ドビュッシーとの散歩」にも、前奏曲集などに絵本から想を得たものが多いとあったが、本書の評論は更に詳細にその絵本作家や作品を紹介する内容となっている。
ペレアスとメリザンドはお伽噺の王子様と王女様のようで、ただ何の意味もなくそれとして行動しているが、メリザンドの夫、ゴローだけが生身の人間として、嫉妬し苦悩して、生きた人間の血を流しているとある。人間界とメルヘン界の交錯とその魅力を説明している。
とても好きな作品なのだが、話としては何だか判らなかったが、この解説には納得してしまった。
ビリティスの詩を作ったピエール・ルイスの評も興味深いもの。異教好みで生活感とか苦悩とおよそ無関係なピーターパンのように振舞っていたとある。ビリティスの中からドビュッシーか音楽を付けたのは、ビリティスが少女時代のもの。しかし、ただ清純なだけでなく、「髪」はエロスを暗示させる歌曲。本評論でもイノセントな素材は本当にイノセントなのだろうか、とドビュッシーがお伽噺好きの秘密に立ち入っている。
本書の肝は、アンドレ・エレとの共作バレエ作品「おもちゃ箱」。この作品は知らなかった。
読了後、付録のCDを聴く。