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東京から、田舎に越してきた中学生"僕"を中心に語られる、「青の季節」と、若い女性向け雑誌に発表された、七つのストーリーが収録されている。
「青の季節」は、登場人物がのびのびと書かれていて好感をもった。あだ名の付け合いから、争いになり、同級生のヨシダ・イチロウ、別名ヒッポ(ヒッポとはヒッポポタマス、河馬、の意であり、命名者はほかならぬ僕である。ところが彼は、蚊トンボなる女と相談して僕をサトイモ野郎だといってきた。)と、木登り、石投げ、徒競走とで勝負を決めることとなる。どれもデブの彼に有利な種目はなく、僕は満々の自信があった。しかし、結果はまったく逆になってしまった。決闘以後、僕らは急に親しくなった。僕はヒッポの姉の女学生が、蚊トンボということを知る。母の面影を持つ彼女に僕は不思議な親近感を覚える。なぜかわからない。
蚊トンボのために、山ゆりをとろうとしてがけから落ち、名誉の負傷をおってしまう所が印象的だった。蚊トンボは云った。
ーーゆりの花、よく咲いててよ、いいにおいをさせて……。
後半の諸作は、いずれも男女の間に交わされる淡い想いを描いた作品となっている。
出会いと別れの物語。
印象的だったのは、ハッピーエンドだった、「鸚鵡」
もう二度と会うことのなかった誰かをただひたすら思い出すこと。「鸚鵡」を除くと、読後感は、切なく少し、不思議な感じ。
☆ 湊川晴斗さんのレビューを読んで、この本を知りました。良い読書をしました。
ありがとうございました。