紙の本
ラノベっぽい表紙ではあるが、意外に読者に求められる精神年齢は高い。
2018/09/20 03:53
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
まだ夏の雰囲気が残っていたので・・・そういうタイプの物語を読みたくなった。
それも、夏の終わりとともに成長したり傷を抱えたりする、そんな物語を。
主人公は高校生男子だからか、読後感は思ったより重くなかった。この作者の場合、主人公が女性だとよりひどい目に遭う可能性が高い記憶。
四国の南側にある海辺の小さな町・磯ノ森、光介は大学進学とともに田舎を出ることになるのかと漠然と考えている普通の高校生。両親と一緒に一軒家に住んでいるが、ある日突然母の姉と8歳の娘が明日から越してくると母に告げられる。母に実の姉がいることを知らなかった(記憶がなかった)光介は驚くが、母の決意は固く、二人は東京からやってくる。
光介の祖父は町で写真館をやっていたらしいが、生まれる前のことなので光介は事情を知らない。帰ってきた伯母は祖父が撮っていたという写真などを探し出すことに執念を見せる。実は光介の祖父母は海で心中したのだが、伯母はそれが無理心中だと考えており、「どちらがどちらを殺したのか」はっきりさせたいと考えていた。平凡だと思っていた光介の生活が変わっていく・・・という話。
三人称だが光介の視点のみで物語は進む。
ものすごい大事件が起こるわけでも、ものすごいトリックがあるわけでもないんだけど、続きを読ませます。
オーソドックスな話と言われればそれまでなんだけど、成長する青春ものという王道でありつつも現代性を十分に備えているところにしみじみ。
#MeToo運動が勢いを持つ土台が世間に出来上がっていたように、かといってそれに賛否両論あるように、弱い側が声を上げることはまだ難しい。勿論、声を上げないからって苦しんでいないわけではないわけで、黙っていることを望む人もいるけど声を上げる人とどちらが強いか弱いか、正しいか正しくないかという基準を持ち込むのは違うぞ、ということ。
高校生男子という自分なりの考えはあるけど確固たるものがあるわけでもない、誰かの言動で容易に揺らぐけどその分柔軟な選択ができる存在を視点人物にした意味がそこにあるかな、と。
真実がいつも正しいとは限らない、人を傷つける真実ならば沈黙の価値を受け入れる、といった浅い正義感では受け入れられない人生の矛盾を学ぶ機会は誰にも均等に訪れるわけではないから、多感な時期だからこそより成長できるということもあるわけで。
傷とともに生きてきた・生き抜いた人たちは、その本当の姿を何も知らない人には容易に見せない。だからこそ美しい。それが強さだから。
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「昨日の海は」改題。
どちらかがどちらかを殺した?
夏休みのある日、四国の南端、海辺の小さな町の高校生・光介の家に、母の姉・芹とその娘の双葉が東京から越してきた。光介は芹から、25年前の祖父母の死が、実は無理心中事件であったと聞かされる。
変化のない日常生活の中で、祖父母の秘密はかなりドラマチック、面白かった。
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アマチュアでありながら写真集や個展を開くほど腕がある祖父が祖母と共に若くして入水自殺した。話自体は知っていたが伯母家族が同居することになり、なにやら謎めいた話になって来た。
高校生のひと夏のお話。
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祖父母の心中事件の真相に迫る高校生。調べていくうちに芸術家として嫁をヌード撮影をしていたが、それに飽き足らず、娘にもヌード撮影していたという、芸術家のエゴを描いた作品。
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後書きにすごく共感。
なんだかこの頃のエンタメ作品は安易に悲惨な事件を取りあげすぎているような気がする。現実にショッキングな事件が多いからフィクションではさらに…となりがちなのはわかるけれどもそれにしても…と思う所がある。まあ昔も歌舞伎なんて世間を騒がせた事件を題材に膨らませて芝居にしたりしていた訳だけれども今のようにネットで個人が特定されがちの時代にはどうなの?と思ったりもする。
お話としてでも、登場人物を傷つけるなら何故その傷が必要だったのか、どうしてその事件が起きたのかを丁寧に描いて欲しいという意見にはすごく賛同します。
art for art's sakeなんて言葉もあるけれども芸術家の身近に居る人間はたまったものじゃないよなぁというのが本音だろうな。この間読んだ王とサーカスにも通じるけれども、他人事であるがゆえにどんな深刻な事態でも娯楽になってしまうというのはどうなんだろうかとも思う。
個人的には祖父よりは祖母に共感。うん、自分はまだガマンするとしてもねぇ… 芸術家って厄介そう。信念がある分、さらに…
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夏休みのある日、海辺の田舎の町で暮らす光介の家に、母の姉、芹とその娘の双葉が東京から引っ越し、一緒に暮らすことになった。
光介は芹から、25年前の祖父母の死が無理心中であったことを聞かされる。
光介は真相を探り始めるが!
文章も読みやすく、物語も引き込まれるのだが、ついつい期待をし過ぎてしまった。
十分に読み応えがあるし、惹きつけられる作品だったが、すみません、辛めの★★★で(^_^;)
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両親と三人暮らしだった光介が、伯母(母の姉)とその娘と一緒に住むことになり、母方の祖父母の心中事件を改めて探る物語。
東京から戻ってきた伯母に、祖父母のどちらかがもう片方を殺したのだと聞かされた光介は、生活をともにする中で伯母と従姉妹に親しみを感じ始めると、祖父母が急に身近に感じられ、自分も真実を確かめようと決意します。
退屈だった生活に刺激が生まれ、いつもと違う風景を見たかったのかもしれません。
ところが、あるとき伯母が真相はもうどうでもいいと言い出し、納得いかない光介はさらに深みに嵌まっていきます。
私なら、真相を探ったりはしないでしょう。真実はかかわった人の数だけあると思っているので、探っても本当のことなどわからないと思うからです。
だからこそ、生きている人を傷つけてまで知りたいとは思わないという、伯母の言葉が胸に迫りました。最終的に光介も同じ結論に達したのでよかったです。
大切な人を大切に思い、日々を暮らしていくこと。それが何より優先されるべきで、そのほかのことは、伯母が言うようにどうでもいいのですから。
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どちらかがどちらかを殺した?―。夏休みのある日、海辺の小さな町の高校生・光介の家に、母の姉・芹とその娘の双葉がしばらく一緒に暮らすことになった。光介は芹から、二十五年前の祖父母の死が、実は無理心中事件であったと聞かされる。カメラマンであった祖父とそのモデルを務めていた祖母。二人の間に何が起こったのか。切ない真相に辿り着いたとき、少年はひとつ大人になる。
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開けてはいけないと言われる扉ほど開けたくなっちゃいますよね。この話は、主人公である少年がまさにそんな秘密を探ろうとする話です。
ラストで衝撃をうけるので、最後の最後まで目が離せません!
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ごくごく普通の高校生男児が伯母と姪っ子と一緒に暮らすようになったことをきっかけに、祖父母の謎を探り始める物語。
性格のよい主人公にほのぼのしながら、結末が気になり読み進めてしまう。
まぁ、まあ、おもしろい(^_^;)
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今回は四国の海辺の小さな町で暮らす高校生・光介が主人公で近藤さんのブラックの部分はなく青春ミステリーとなっています。
わずかに不穏な空気感はありますが、誰かが誰かの為に隠して いる嘘であろう事は読者にも想像が付く展開です。
登場人物が少ない分、脳内映像でそれぞれの人物が動いていましたが、45歳の祖父と42歳の祖母が無理心中に至るまでの動機が弱い気がしました。
丁寧に描かれた作品ではありますが、全体的に淡々としているせいか物足りなさが残りました。
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10代後半と40代半ばの女の裸を見てそれが同一人物かどうか判るなんて、高校1年生のくせに女の裸に詳しすぎる。これが無料本で読めるとは、すごくお得です。
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祖父母の入水自殺の真相を探るミステリー。
どう転んでも爽快なラストにはならないと思うが、どこまで納得性のある真相を提示してくれるかを楽しみに読んだ。
なるほどと思いつつも、この真相にたどり着いたところでの達成感というか、物語的に結論が導く、その先に欠ける感じがします。
全編を通して田舎に住むことについて綴られてきたけどこちらは消化不良。主人公は東京に行って心境が変わったのかも曖昧なまま。
台風での避難と被害の下りは必要あるのかな。祖父の唯一の弟子との絡みをもう少し盛り込んでほしかったです。
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「海は昨日も今日も、二十五年前も変わらず、凶暴で優しいのだ。」
終わりの一文に、祖父母の恨みも悲しみも愛情も、そのまま受け入れる光介の気持ちが表れているようで心に残った。
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四国ののどかな町で暮らす高校生、光介の家族に突然伯母と小学生の娘が一緒に暮らすことになります。
伯母は自身の両親(つまり光介の祖父母)が心中したとされる真相を解き明かそうとし、光介もそこに関わって行くのですが・・。
田舎町の描写が柔らかくもリアルで、光介の幼い従姉妹への接し方も、ぎこちないけど優しくほっこりします。
切なさのあるミステリーだけど優しい気持ちになる一冊です。