紙の本
決死の生還と帰国後の苦悩
2020/03/21 18:34
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
4万人の生命を救うために敢行した、機関車でのピストン輸送が手に汗握ります。帰国後に傷ついた軍人たちを待ち受けていた、過酷な運命には胸が痛みました。
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終戦後の中国北部の日本人の戦い。
相手が米英ならまだしも、ソビエトの占領下では日本人居留民の安全な帰国は難しい。そこで古来からある要衝に立てこもってソビエトを足止めし、張家口の民間人が脱出する時間をかせいだ日本兵の話。
日本兵、ソ連軍、国府軍、八路軍の四つ巴の争いはややこしく、ある程度の基礎知識が要る。中国では基本日本兵は国府軍に投降することになっていたが、八路軍も隙あらば日本兵を取り込もうとする。中国の2つの陣営はもう国共内戦の準備段階に入っている。蒋介石の「以徳報怨」は八路軍との戦いで日本兵を味方につけることも意図している。どちらの軍も結局、多くの日本の武器で戦う(両陣営にある程度の日本兵も加わる)ことになる。
同じ戦争といっても相手によってかなり違う。八路軍が相手の場合は上記国共内戦を見据えた戦略もあり凄惨な殺し合いにはならない(しかし、日本に協力した指導者層の中国人は処刑される)。一方ソ連軍ではそうはいかない。
ただ、戦闘の合間にかなり度々軍師による交渉が行われる。ソビエトは武装解除と投降を強気で押し付け、日本はあれこれ言って時間を稼ぐ。話し合いと武力衝突が同列にあり、結局は力の強いものの欲求が通る。それが戦場。
それにしても、「武装解除に時間がかかるから一度戻る」という日本側の要求に対して、「ではその随行員を二人置いて行け」というあからさまな人質交渉はひどい。その二人は結局その後行方不明になってしまう。
日本兵の多くの犠牲と、現地の指導者の判断で4万人ほどの日本人は北京に向け脱出に成功する。このエピソードはアメリカの話ならハリウッドが映画にすること間違いなしと思える感動的な話。
日本では著者が取材して1970年代にようやく明らかになった事実とのこと。小さく特殊なケースだが、軍隊と民間人の関係について深く考えさせられる本だった。
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占守島の戦いと間違って買ったので、正直根本博将軍の本と内容が被っています。最前線で戦う中隊がメインとなっていて、戦闘の描写はこちらの方が詳しいです。
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終戦時の満州からの引き上げの悲劇はよく知られているが、内蒙古からの引き揚げを、体験者の聞き取りから繋ぎ合わせてドキュメンタリーにしている。私はほとんど知らなかったが、蒙古駐留軍が決死で旧ソ連の侵入を防いでくれたおかげで、在留邦人4万人を救ったという。体験者の証言がもとになっているだけあり、その時に人々の生活ぶりや、日本のために死んでいった兵隊の心意気や覚悟がまざまざと記載されており、現代人としては重く受け止められる。それだけでも本書を手に取る価値はある。
ちなみに、武装解除命令に従わず、在留邦人の避難完了まではソ連に対して防戦する英断を下した人物、根本博陸軍中将は、その後に台湾に渡って中華民国を手助けし、中国人民解放軍からの防備に尽力した。気骨と人望があり、また稀有な運命を辿った人物である。