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コンビニ人間としろいろの街の・・しか村田さんの本は読んだことないが、どちらも強烈な個性があり、好きな作品だけど、重たくてなんども読み返したくなるものではなかった。今作で工場と名づけられる普通の世の営みに加われないし、加わりたくもない人たちの物語という意味で、過去作と今作は一本の線に連なっている。
ただ、世に馴染めない不器用な人たちということではなく、より積極的に自分たちは宇宙人と認識し、自分たちの生きたいように生き、繁殖までするという本作のラストは明らかにこれまでの流れから一歩先に進んだ感があり、ここまでくると、地球星人である読者に共感を得るのは難しいのではないかと心配になる。が、実際には宇宙人がすでに繁殖しており、そんな心配は無用かもしれない。
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明確な説明もあったし、ファンタジーというよりは虐待や過剰な愛情で壊れてしまった人たちの話なのだと思う。
『コンビニ人間』を明確に思い出せないから、こっちの方がいいとかの比較は出来ない。
奈月の夫の性概念については、そういう人もいるのだととても安心した。それは私がそちら側の人間だからだろう。でも、働くのが嫌いというのは、甘えなような気がしてしまう。それは私が働くのを苦に思わないからだろう。
生きていることがそんなに素晴らしいことだとは思えない。苦痛に耐えて生き延びなければいけないほど、生きるという事が重要だと思えない。
私も私が地球星人ではないことを願う。
大人になったからって勝手に大人になって、私の人格形成に影響を及ぼしたことなんてなかったことにして、「いたずら」で済ませてしまう。私はずっと引きずっていくのに。
私はこの小説をすごくよく理解できる。
多くの人が恋愛し結婚し出産する。でもそうでない人もいる。望んでもできない人も、そもそも望んでない人も。望んでない人の中にも色々いる。性癖だって色々ある。幼児性愛者とか他人を傷つけるようなものはいくらだって糾弾したらいい。個性の一つで仕方のないことだという人もいるけれど、他人を傷つけるのはやめて欲しい。でも、子供を持つことを望んでいない人を糾弾する権利なんて誰にある?マイノリティだからって何が悪い?性交渉をしない夫婦の何が悪い?私には当たり前のように、結婚して出産する「スムーズ」な生き方をしている人のほうが怖い。
でもラストの方は、宗教的な狂気を感じて、創始者とかそういったものの「始まり」はこうやってできるのではないだろうか、と思った。
仲間がいる分、本人たちは救われているのかな。
ただ一人で人間を食べてしまうような狂気に落ちてしまう人よりは、マシなのかな。
「仲良し」とか「いたずら」とか表現が本当に気持ち悪い...
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大ヒットした『コンビニ人間』でファンになった人に冷や水を浴びせかけるようなとんでもなくえぐい展開に、かまされた。ついハッピーエンドを期待して読んでいたので、ドン引きだった。引くは引くけどとても面白く、没頭して読んだ。
地球の文化に馴染めないから宇宙に目を向けるのだが、申し訳ないけどそういう人は宇宙でも馴染めないと思う。結婚の形式がユニークで、あそこまで徹底してルールを守れるものだろうかと思うのだが、村田さんはきっちり守りそうだ。
旦那さんの宇宙憧れが高じて近親相姦をしようとするのを、むしろ人間的だと冷ややかに見ていたところが面白かった。
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自分が壊れた人間なのはもう仕方がないけど、そのせいで誰かのことを傷つけたりしないようにしようと心に誓う。
これは村田沙耶香の実験場かしらと思うくらいの凄まじき世界だった。
『普通』に生きている地球星人達に馴染めなくて苦しむ感覚は想像できるけれど、もう1つ何か狂気めいた突出した感覚を持ってしまっているから起きた悲劇的世界なんだろう。
普通は(とやっぱり言ってしまうな)こんなところにたどり着かないし、途中で怖くなって引き返すのではなかろうか。
主人公達には、自分の考えが絶対的に正しいのだという意地みたいな物を感じる。穏やかになれないのは何故なんだろう。地球星人もポハポボピア星人もどっちもどっちだよ。
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人間の営みを「工場」に喩え避けているのに、当のストーリーリーダーが合理的か非合理的かで判断して次の行動を選ぶまさに、動物野人ですらしないことをしてしまった「機械以上」になってしまった「地球星人」のお話です。
序盤は幼少期のトラウマから親子で逃げるという内容であったため少しパワーを使って読み進めなければなりませんでした。
しかし、最後の最後118/246ページからあの重さはどこへ行ったのかと思うくらいに「逆ですやん」と笑いながら読み進めるくらいになれます。
こんな作品に出会ってしまうと呆然としてしまいます。村田さんの意気込みも技術も最後の最後まで絞り出し尽くしたという感じが今自分を包み込んでいます。
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辛い現実から逃れるために、幼い少女が創り出した「魔法少女」「ピュート」のいる世界。小さな少女にはあまりにも苦しく、悲しい日々でこの空想の世界は生きていくための大事なお守りのような物なんだ…と思っていたけれど、大人になったって、世の中のルールから少しでも外れてしまうとそれは「異質」のように扱われる。
読んでいて、人間を地球星人という呼び名で理解できないものの扱いをする奈月たちの行動が、少し共感すら感じてしまうようになってしまった。
最後、完全にポハピピンポボピア星人になった奈月たちは、どうなっていくのだろうか。
個人的には、恋というものに興味を示す奈月や、周りに感化されやすい由宇よりも、智臣の方が純粋な真の宇宙人に近いのではないか?と思ったりもした。
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怒涛の終盤、「あれっこれ、なんの本読んでたんだっけ?」
脳みそが途中でトリップしたのか
と思いたくなるくらいの展開。
みんなついてこいよ~!(笑)
でも言いたいことは分かる
地球星人として生きていく常識ってなんだろう
そんなもんとっぱらって生きたい
常日頃思っていたが
究極こうなってしまうのか。
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幼い頃から社会から疎外されている感覚を地球星人では無いこととして捉え、歪な形で成長していく。それを親の愛情の欠如とか塾の先生の性的虐待とかに変換するのはたやすいけれど、この妄想とも言える信念を極限まで突き詰めて書ききった作者に敬服しました。
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最後の3人の姿はまるで獣のようです
恐ろしく 醜いですが
それ以外の方法はなかったな・・・と思う
性や生殖の在り方が
人間の存在意義に深くつながっている
それがどうしてなのか
という重い問いを投げかけてる
作品だと思いました
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軽めに読みやすいところから入り、最後にはものすごい重い話に。最後、どういう事?
やはり村田沙耶香さんの世界観はすごい。所々で不快な気持ちになる。でも、世界は工場なのかもと納得する。
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同町圧力の中で自分をすり減らされてしまった主人公「奈月」の悲劇。小学生時代と30代中盤の2つの時代が描かれており、地球の常識に主人公を引き込もうとする「由宇」、地球星人の常識から主人公を引き離そうとする「智臣」、そして間に挟まれた主人公という三角形の構図がある。
『コンビニ人間』がどのような評価をされているか詳しくないが、「みんな違ってみんないい」なんて言葉はやっぱりまやかしで、常識・常道・社会を疑う視点と共に、そこから逸脱するということの厳しさ、寂しさ、重さがしっかりと書かれている本だと認識している。
この小説があまりにもダークな終わり方をしているのも、同様の理由だろうか。同調圧力は地獄だが、そこから離れたって地獄だ。同調圧力を批判する本なんて星の数ほどあるが、そこから離れることが宇宙船地球号に齎す厄災に向き合うことはきっともっとずっと難しい。
一所懸命に生きる主人公たちの人生が蹂躙されていく様と、互いが互いを思う気持ちがどんどん悲劇へと駒を進める様はあまりにも悲劇的で、読んでいるのが辛かった。
自分の中のもやもやした何か、もやもやしていることをひた隠しにしていた何かを暴かれ蹂躙された読後感。こうした自分の中にある悲しみにどう対峙すればいいのか、こうした悲しみを抱える人に何ができるのか。蹂躙された心の中のどこかに、答えがあるのだろうか。
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衝撃のラストではなかったかなー。
村田さんの他の作品を読んでいれば
今回も地球星人やポパピピンポボピア星人などの
単語はあるが
結構一貫したテーマの
狂ったと思っている人にあなたの常識で本当に
狂ってる間違っていると言えますか?? なので
地球星人が『工場』でただ『仲良し』だけをして
満たされていて
それを人に強要して同調圧力で安心するのはいいの?
は確かに狂ってないとは言えないしなー。
その先が幼児に性的な行為を強要していた
塾講師伊賀崎の父親の暴走だし
可愛くない事を自認するが故にこじらせている
姉貴世 がスーパーで奔放な性生活を埋めようとしている
それを妹にバラされたと思い狂気に走る事とか
ただ魔法少女のスタートが
塾講師との『ごっくん』『補習授業』からではなく
もっと前であり
よく言われる二重人格の形成理由のような
親の虐待や友達がいないなど
他の要因が見つからず
乙女な妄想の延長戦をなぜ小学生高学年まで持ち合わせて
本気で信じている??ビュートが魔法のコンパクトで変身させてくれることを??となりゾッとした。
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表紙絵の地球儀頭を見つめる。ゴビ砂漠からチベット高原にかけて黄色く巨大都市が形成されている。でもって、シベリア北東部に赤い建造物と植林らしき囲いがある。現在、人類がほとんど生息していない地にやがて地球星人は集積し、他の大地は青蒼と自然に返上されている。この意味するものは何ぞや。さあ、この壮大なるスペクタクルを読み解こうではないか。と、まあ読み終わるに巨大都市と北太平洋上の気流が両眼で、オーストラリアが口を表す単なる地球ヅラとおぼしきかな。私は工場の一員として従順に勤め、概ね役目を終えた地球星人である。でも、ふつーの地球星人よりポハピピンポポビア星人に近い気もするけど。
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村田の作品はどれもよく似ているので、続けて読む気にはならないが、たまに読むと期待を裏切ることなくスカッとさせてくれる。己の常識・良識を次々と瞬殺される心地よさ。ニーチェ的なテーマと性的なものへのこだわり。和製バタイユと呼んでよいかも。
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良くも悪くも村田紗耶香さんの世界観が感じられる一冊。トラウマを抱えたまま大人になった人は地球人にはなれないのかも、知れない。でも、そんな人たちを周りの地球人はどう受け止めれば良いのか。地球人が一般的な考え方の人だとするなら、その考えからはみ出した人たちはどう生きていけば良いのか。少数派の考えや意見は地球人が握りつぶして良いのだろうか。色々な人がいるし、いて当たり前だと思う。ただ、毎回思うですが、どんなことがあっても人を殺めてはいけない。