紙の本
期待にたがわぬおもしろさ
2020/10/05 21:46
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
予想以上に面白い作品だった、「昏き日の殺人者」「侍女の物語」そして翻訳されて間もない「誓願」など、まだまだ面白そうな作品があるのでこれからもどんどんと読んでいこう
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上下巻纏めて。
実際にあった事件をモチーフにした長編小説……というと、実録もののミステリを連想するが、本書は当時の社会情勢やジェンダー論に主眼を置いている(つまりパズル的〝真相はこうだった!〟的な〝結論〟は、本書の構造としては、無い)。
『侍女の物語』『オリクスとクレイク』辺りとはかなり雰囲気が違うので、最初は戸惑うが、こういうタイプの長編も面白いので、『昏き目の暗殺者』も文庫にならんかな〜などと……。
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予想はしていたが、真相は藪の中。
みんな、見たい現実をグレイスの中に見ていた。
にしても、グレイスはそこに居るだけで周りの人間、特に男たちの運命を翻弄する。ファム・ファタル、とまでは言えないにしろ、グレイス自身はそこまでアグレッシブに生きてはいないのに、周囲の人間たちは炎に吸い寄せられる羽虫のように踊らされていく。
これを魔性と呼ぶのか、それとも周りの人間の愚かしさと呼ぶのか。どちらとも決めかねる。
そして、サイモン!何やってんだ、サイモン!バカか?バカなのか?!と盛大に突っ込まずにはいられない。サイモンは、グレイスの犠牲者というよりは、「女」というイキモノの犠牲者なんだろうなぁ。母親の呪縛、令嬢の誘惑、人妻との不倫、女囚への傾倒、侍女への蔑視。書いていて、ホントにバカなやつだなぁと思うのだけれど、たぶん、アトウッドはここに痛烈なアイロニーを込めている。女が魔物に見えるのは、あんたたちがお馬鹿さんだっていう証拠だよ、と。
アトウッドは穏やかな晩年をグレイスに用意した。これが実在のグレイスへの配慮とも見えなくはないが、でも、年老いてなお衰えることのないグレイスの魔性を描いたラストとも見えなくはない。
何にせよ、グレイスの人格同様、角度を変えていく通りにも味わうことのできる作品だった。
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長かったが面白かった。女性であること、下層であることがどれだけ悲しいことだったか。今でもか。
とはいえ、その女性に押し付けられた手仕事、家事の描写は美しかった。裁縫も料理もそこに楽しさはあったに違いないし、そう信じたい。洗濯や掃除もそこに入れていいだろうか。