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まさかこれの新訳が出るとは思ってもみなかった1冊が、この、『未來のイヴ』。
創元ライブラリー版で何度か読んでいるが、古典新訳文庫は、そのコンセプト通り、随分と読みやすくなっている。
また、創元版では、主人公である割に影が薄かったエジソンが、存在感のある人物として浮かび上がってくるところは良かった。創元版は兎に角、ハダリーの存在感が凄いのだ(そこがいいのだが)。
但し、齋藤磯雄訳にはあった、正に夢の中にいるような雰囲気は、新訳からは感じられない。寧ろもっとドライで、現代のSFに通じる雰囲気が強い。個人的な好みとしては、リラダンは幻想の中にあって欲しいので、矢張り齋藤磯雄訳の方が好きである。
これから『未來のイヴ』に手を出そうとする向きは、是非、古典新訳文庫と創元ライブラリー、両方買って読み比べて欲しい。そして東京創元社に全集復刊の希望を(ry
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1886年(和暦にすると明治19年)に書かれたアンドロイドSFモノの祖。初めてこの作品を読みましたが、訳者さんの訳文も読みやすくてとても面白かった!
今読んでもいろいろ刺さるエジソンの言葉の数々や、ハダリーを構成する機構の科学的な説明など(顔の表情の作り方とか、今のCGでやってるモーションキャプチャーそのものじゃないかとか)130年前の作品なのに全く古くささのない世界観。そして贅を尽くした『地底の楽園』の美しさ。
『神の領域』への挑戦というテーマで繰り広げられたドラマ、ラストの展開まで含めて余韻まで楽しめる作品でした。
読んでて「おや?」と思ったところは巻末の解説や訳者さんのあとがきで触れていたので納得できたし。訳者あとがきで訳文にかけるスタンスとかこの作品の翻訳にあたってのあれこれまで知れたのがさらによかった。先達の歴史的仮名遣い版とかも読んでみたくなります。
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2018.10.14読売書評
アンドロイドSFの祖とされる1886年刊の長編がやわらかな新訳で登場。
押井守の「イノセンス」、伊藤計劃・円城塔の『屍者の帝国』にもオマージュされた名作。
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スチームパンクって現代人の懐古趣味とSFを合体させた発明だと思ってたが違った! 作者はエジソンと同時代人のリアルスチーム世代なのです。これは衝撃。今のSFってちっとも進化してないってことなのか?
本作は1886年に刊行されたアンドロイドものの古典作品。近年でもさまざまな作品に引用されているのに、知らなくて恥ずかしい。先日見た『屍者の帝国』にもエジソンとハダリーが出ていたなー。
19世紀の小説とは思えないスピード感があり、面白かった。(分かりやすさはどうやら新訳のおかげらしい)
まだの人は、ぜひ。
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人間は機械で再現できるのか、アンドロイドの作り方の講釈を延々と続けるエジソン。冗長だがそれがいい。そして魂とはなにかが延々とした講釈の後に現れる得体の知れない恐怖感。素晴らしい。
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第五巻の「ハダリー」で挫折。冗長な説明の文章の何が面白いのか分からなかった。完璧な人型アンドロイドの存在にリアリティがあるわけでもないのに。
地下という異界に移動した時は、これからやっと何かが始まるんだろうと期待もしたのに、また冗長な説明が続いたのでさすがにダウンしてしまった…。
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物語というより哲学的な問答が主軸に感じた。精神と肉体、科学と神の話をしながら、印象的に幻想の世界が差し挟まれている。どう終わるのかと思ったけれど、最後に畳み掛けるように物語が進む。結末はとても好みだった。
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原著1886年作。
ヴィリエ・ド・リラダンは昔読んだ『残酷物語』の訳が古めかしすぎてどうも今ひとつだった。そもそも和訳された作品の少ない作家と思えるが、本作(「新訳」)を読んでみていろいろ驚いた。
当時の状況ならではだが、肖像権を無視しトマス・エジソンを主人公に据え、すさまじい「想像」の飛翔を駆使しまくる作品で、ある意味ぶっとんだ、「とんでもない」文学作品だと思う。
要するに電気仕掛けのアンドロイド/アンドレイドを製造し、これを(もちろん男性視点からの)理想的な恋人/女性として誕生させようという、なかなかに不埒な企みのいきさつが描かれている。
ここでの主人公エジソンはやたら饒舌で、さまざまな「思想」を組めども尽きぬ泉のように呈示してやまない。そこには無論こんにちのジェンダー観からはおおいに非難するべき点も多いし、アンドロイドの機械仕掛けに関してはこんにちのテクノロジーを幾らかでも知っている立場から見ればおそろしく幼稚で、トンデモな感じだとしても、なんとなくこの激しいパロールの奔流には目眩させられるものがある。リラダンの(当時としては、の)博識さも凄い。
この圧倒的にぶっとんだ物語は、やがて、「科学的」説明の枠組みをはるかに超えて、ある種のオカルティズムに突入していくのだが、そのへんが圧巻。リラダン、全体的にどんな作家だったのだろう。
なるほど、この作品なら「略式」の世界文学史年表に入れてもおかしくない。是非とも読んでおくべき小説だと思う。
いまのSF作家なら、理論的背景ももっと緻密に・高度に描写できるのだろうが、そうした小説文化の遙かなる祖先として、本作は君臨していると言えるかもしれない。