紙の本
主人公は・・・
2020/08/02 19:13
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投稿者:ケロン - この投稿者のレビュー一覧を見る
こちらの作者さんのほかの作品にもれず、賢くて勇敢な女性が主人公でした。
つらい状況でも自分を信じて前を向いている女性たちには勇気づけられます。
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17世紀、イギリスが入植して間もない時代に、ハーバード大学を初めて卒業した、先住民(ワンパノワグ族)の実在した青年ケイレブを題材にしたフィクション。実はほぼフィクションでした。勉学に興味を持つ、宣教師の娘ベサイアの視点から、2人の交流を軸にケイレブがいかにイギリス社会に溶け込んで行ったかを語られるが、後半は男性中心社会において、勉学も主張も許されない女性の在りようが多く書かれていた。両者の宗教観、先住民を改宗させていく経緯などは興味深く読めたが、結局は意外な結末を迎えたケイレブに、とてもザラッとした読後となった。
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初期ハーバード大学には、ネイティブ・アメリカンのケイレブという学生がいた-。史実を基に、白人キリスト教少女の目を通して、アメリカ社会を描いた物語。森本あんりによる解題付き。
引き込まれて一気読みしてしまった。
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17世紀、開学して間もないハーバード大学を卒業したネイティブインディアンがいたという史実に基づき、様々な資料をあたり、創作した小説。17世紀のネイティブインディアンのハーバード生と親しくなった知性と教養あるれる女性の目を通じて、また回想という形でこの物語は紡がれる。著者はそのためこの本をその当時の英語で表現したという。そのため訳も大変だったようだが、小説としては、人物描写、その当時の支配的な考え方、生活、政治の状況などどれをとっても文句なく素晴らしい作品となっている。この本を読むとその当時の人の精神的支柱が何かよくわかる。
キリスト教をよすがとして、入植していったこと様子がよく書けている。様々な登場人物が死んでいくがこれも史実を忠実に再現したもの。このような本を訳してくれて柴田ひさ子さんありがとう。素晴らしい仕事です。もちろん著者のジュラルディン・ブルックスさんにも感謝。
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1636年にハーバード大学が設立された。入植から僅か6年しか経っておらず、当時は宣教のための牧師を育成する目的として設立。先住民を対象にした学寮も作られ、1665年に実際に先住民が卒業していた。すごいとしかいいようがありません。部族の言葉しか知らない若者が、大学に入学を許可されるのは、ラテン語、ギリシャ語を習得していなければならなかったのです。勿論本人の意思だけではなく、開拓者の熱意があったからです。内容はディープだが、中高生にも読みやすい文体かと思う。それ故、なんかこう、「いいこちゃん」な雰囲気が漂う。
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17世紀のハーバード大学にネイティヴアメリカンの学生がいたという史実をもとに、そのネイティブアメリカンの幼馴染の少女が出会いから進学・学生生活などを語るという形式のフィクション。
イギリスからアメリカの島へやって来た宣教師家族の娘ベサイア。15歳で亡くなった母の代わりに家事を背負っている。まだ、母がいたころは野山を駆け回り、そこで先住民の少年ケイレブと仲良くなる。ベサイアが教える英語をケイレブは吸収し、ケイレブが教える先住民の言葉をベサイアが理解する。やがて、ケイレブはベサイアの兄と共にハーバードを目指す。
先住民に対する偏見、女性に読み書きは必要ないという常識、先住民をキリスト教に改宗することが正義。乗り越えるべき様々な課題にぶつかるベサイアとケイレブ。お互いを信頼する気持ちは終生変わらず、並外れた才能で困難に望んでいく。
いろいろ考えることの多い状況ながら、読後感は良かった。もっと良い環境が待っていたであろうという気持ちもあるけれど、信頼感に支えられた二人の友情は美しい。
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初めてハーバード大学に行ったネイティブ・アメリカンであるケイレブの物語。
17世紀のヨーロッパでは女性にもネイティブにも人権はなかった。貴族だけでなく一般人もそうだった。女に教育は必要ない。未開人などなおさらだ。しかし、キリスト教の布教のため、インディアンを教育し、牧師として送り込めば高等教育を終えた優秀な人をインディアンの集落に送り込まなくて済む。そのためなら国はお金を出す、という政策があり、ケイレブのようなネイティブでもとりあえず道はひらけていた。
物語の語り手であるベサイアは、才気にあふれ、兄をもしのぐ頭脳の持ち主で、それ故に女には学は必要ないという考え方に苦悩する。兄の勉強が進まず、ギリシャ語やラテン語に苦労しているそばで、門前の小僧よろしく知識を蓄えて行く。
ケイレブとの出会いのシーンは素敵で、このままロマンスか、と期待させるが、そんな事を考える年ではなかった。そこではもっぱら心を通わせ、きょうだいとなっていく。ベサイアの母は産後の肥立ちが悪く、ベサイアが15の時に亡くなってしまう。そこからは主婦として家事を担い、乳飲み子の妹の世話をする。ヤングケアラー。それでも牧師の父が兄やケイレブ、ジョエルらに教えているそばで耳をそばだてていた。
当時の暮らしや自然の描写が素晴らしく、また、厳しい社会状況により人々が亡くなって行く。それはとても辛いことで、また、人生を左右する。
ベサイアは、兄のため4年間の年季奉公に出される。大丈夫なのかと不安になる衛生状態でベサイアは必死に働く。
読み終えるまで時間はかかったが、17世紀の社会や女性の置かれた立場などがわかり、勉強になった。
ベサイアの母の教え、沈黙は金をベサイアは応用して生き抜く。勇気と思いやりにあふれたベサイアをケイレブは愛していたと思う。
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17世紀、ハーバード大学に入学したネイティブ・アメリカンがいた。この史実を元に、間近で見てきた少女の目線で描いた壮大なフィクション。
さまざまな制約のなかで、自らの人生を選んでゆくことの大切さを感じた。
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油絵を思わせる本のカバーにまず目を奪われた。砂浜に立つ二人は、先住民ワンパノアグ族の酋長の息子ケイレブと、入植したイギリス人牧師の娘べサイアだ。
17世紀のアメリカで、ハーバード大学を卒業したネイティブ・アメリカンがいたことに驚く。この時代は「女性に学問は不要」との考えが当たり前で、べサイアはお兄さんを学校に行かせるために奉公に出されてしまう。
「女のくせに…」「きちんとした妻は、そんな口の利き方をするもんじゃない」高圧的な言葉に憤りながらも、多くの女性が声をあげることができないそんな時代だった。
女に値はありや、なしや
女に理なしと言う者には知らしめよ
母親のかわりに家事を切り盛りし、妹のソレスの面倒も一人でみてきた。ケイレブと出会ってワンパノアグ語も話せるようになり、島の植生や薬草の勉強もした。けれど船の事故で亡くなったお父さんのかわりに宣教師になることは叶わない。「女だから」ずっとだれかのために17歳の私の人生はささげられる。「奴隷になんかなるんじゃないぞ」と言ったケイレブ。彼もまたワンパノアグの仲間のために、みんなが生きるために改宗し大学へ進もうとしている。
時代の中で抑圧された立場にいる者の思いが、見事に描写されていると思った。
同時に"知識を得ること" "自分で考えて進む道を決めること" など大切なことを教えてくれる。
手記という形を取り、べサイアの言葉で語られる。時代が前後して読みづらさを感じるところもあり、ケイレブの思いをもう少し知りたいとも思ったが、壮大なスケールの物語に出会えたことに感謝したい。