紙の本
子供達の活躍
2019/02/16 22:39
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投稿者:ZATO - この投稿者のレビュー一覧を見る
勝をはじめ子供たちの活躍が主体となる巻です。
熱い想い、純粋な思いが溢れてます。
特にコロンビーヌと勝のやり取りは興味深いです。
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病棟を襲った自動人形のリーダー・ブロムを倒し、人類の希望「ハリー」を守った鳴海。しかし、ジョージは倒れ、阿紫花とミンシアは重傷、ギイも限界を迎えてしまう。フウが用意した「奥の手」を呼び出した法安は、残された人間を救出していくが、人形たちの増援を防ぐ手段はなく……。 (Amazon紹介より)
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重厚です、この(20)は、実に
以前にも書いた覚えがありますけど、藤田先生の作品って、ボディを狙ってくるんですよねェ
ただでさえ、一発一発が重いってのに、痛みが鈍さと重さが混じっているものだから、こっちの意識が断たれません
しかも、これまでの巻で、ある程度の耐性が出来ているのか、痛みをちゃんと感じ取れちゃうんですよね
もちろん、それは、藤田先生の一撃に耐えられるだけの人間になっていて、作品の良さをより深く感じ取れるようになっているので、良い事、と断言はできます、したいです
ただ、もう、ほんと、「こっから、どうなるんだろ」ってハラハラが凄まじすぎて、次の巻を読むまで、「読みたい」欲が消えないんですよ、ずっと
他の人からしたら、アホらしい話なんでしょうが、私、この『からくりサーカス』は、その巻の感想を皆に読んでもらってから、次の巻を読む、と自分で決めちゃっているので、破れないんですよね
まぁ、その我慢が、読んだ時の嬉しさを倍増させてくれるんですが
この(20)は、鳴海サイドのハリー入手編から、勝のしろがね救出編が収録されています
サハラの大戦で、自分達のやりたい事をやって逝った仲間たちが、自分に託してくれた手足に宿っている絆の力で、鳴海は強敵のブロム・ブロム・ローを撃破しました
ミンシアも無事でしたが、まだ、気は抜けません
何せ、自動人形の援軍が、すぐ、そこまで迫っているのですから
自分が知る中で、最も強い「人間」である鳴海にハリーを無事、持って帰らせるべく、ギィは無茶に無茶を重ね、雑魚の自動人形どもをぶっ壊します
その姿は傷だらけで埃まみれ、しかし、守るための戦いをしているギィは美しい、と私は思うわけです
多勢に無勢で、ついに追い詰められてしまったギィを、鳴海がそこに来るまで、自動人形から守り続けていたのは、まさかのパンタローネでした
しろがねからの“命令”に加え、自分に情けをかけた法安さんからの言葉で、彼の中にある「何か」が変化を起こしたのかも知れません
200年も前、ルシールたちから普通の幸福を奪い取り、自分の師匠が死ぬ原因でもあり、そして、サハラの大戦で自分が破壊したパンタローネが復活していただけでも驚きなのに、自分の敵でしかないギィを守っていたパンタローネに、鳴海の心は揺さぶられます
窮地に追い込まれたパンタローネを救った理由を、鳴海は、フェイスレスに連れ去られ、行方知れずになったしろがねの情報を引き出すためだ、と言いました
嘘は吐いていないのでしょうが、自分の友を救ってくれたパンタローネを見捨てられなかった甘さが、鳴海の中にあるのは事実でしょう
そんな鳴海の、矛盾しているようでいて、実に男かつ人間臭い行動は、パンタローネにまたしても、新たな変化を与えたようです
ジョージを失い、阿紫花とミンシア、ギィを傷付けられ、ゾナハ病に罹った子供たちのために命を懸けた医師らも多く殺されてしまいながらも、鳴海はハリーを手に入れる事に成功しました
鳴海編でグッと来るシーンは、本当に多くありましたが、この(20)から一つだけ��げるとするなら、私的には、エレナさんが鳴海に、今ここにいる自分達の命よりも、世界中で苦しんでいる人たちを救える「ハリー」を選んで、と涙ながらに迫るシーンでした
グッドを通り越した、ベストタイミングで長足クラウン号が来てくれたので、鳴海が心に傷を新たに負う選択をせずに済んだのですけど、自分よりも他の誰かを救って、と言えるエレナさんは良い女だ、と私は思いました
鳴海サイドも、色々とあって凄かったですが、勝サイドは次巻への引っ張り方が、これまた、上手くて凄かったです
鳴海サイドは、基本的に、戦いに身を置いている者が揃っていましたが、勝サイドでは平馬、リーゼ、涼子、コロンビーヌが勝と共に戦います
勝は正二とフェイスレスの記憶や技能の一部を受け継ぎ、それを万全に生かせるだけの努力を重ね、何より、自分の命よりも大切なしろがねを守る戦いを幾度も勝ち抜いてきたので、戦える者、と言い切っていいでしょう
コロンビーヌは自動人形です。彼女自身は、サイズダウンしたことや、「純白の手」を使えないですが、蟲使いとしての能力はそのままなので、決して弱くありません。むしろ、形が定まっておらず、攻撃のタイミングも読みづらい、アポリオンを集めての攻撃は脅威と言えるでしょう
しかし、リーゼ、平馬、涼子は一般人寄りです
リーゼはサーカス団の猛獣使い、平馬は人形繰りの技こそ持ってますが、勝たちに比べれば未熟、涼子に到っては・・・まぁ、可愛さと元気が目立つ美少女どまりで、とても戦えるようには思えません
けど、藤田先生は、そういう予想を見事に裏切ってくれる人なんですよねェ
ハッキリ言っちゃうと、この(20)で最も活躍した女性キャラは、しろがね、リーゼ、コロンビーヌよりも、涼子なんじゃないだろうか、と思ってますから、私
だって、涼子がいなかったら、アルレッキーノが助けてくれることはなかった訳ですから
ブリゲッラにこそ追い詰められましたが、その戦闘力はOくらい瞬殺できるほど高い訳ですから、彼を仲間にした功績は、かなり大きい、と断言できます
涼子の言葉と笑顔で変化したアルレッキーノが、ブリゲッラに追い詰めれながらも、潔く諦めず、人間を守るために足掻こうとする時、鳴海の言葉を口にしたのは、グッと来ましたねぇ
もちろん、リーゼだって、大活躍してます
勝を助けるべく、モン・サン・ミッシェルへ仲間と共に突入したリーゼは、黒賀村で姉の仇と判明したドクトル・ラーオと対峙します
こうやって、きっちり、因縁の相手とぶつけてくれる藤田先生、だから、尊敬してます
多くの幻獣を嗾けられ、ピンチに追い込まれてしまったリーゼを更に絶望のどん底へと突き落とす、凶悪すぎる魔獣の群れ
もうダメだ、と諦めそうになった彼女の心と瞳に、猛獣使いとしての矜持を取り戻させたのは、やはり、勝の存在でした
愛の力、なんでしょうね、これが
猛獣使いとして更に覚醒したリーゼは、ドクトル・ラーオですら監禁しておくしかなかった魔獣を仲間とし、彼が支配していた幻獣と戦います
猛獣使いとしての優劣、それを分けたのは、決して、人間と人形、種族の差ではないでしょうね
動物と共に生き、動物に生かされ、最期は動物に命を捧げる、その基本にして究極の心構えが、リーゼには出来ていて、ドクトル・ラーオには出来ていなかった、ただ、それだけの話です
姉の命を奪ったビーストの生みの親であるドクトル・ラーオを、自身の「技」で討ったことにより、勝の言葉で前に進んでいたリーゼの足取りは、一層に力強くなりました
そのリーゼが、この(20)の終盤で、カピタンの剣により突き刺されているんですから、そりゃ、もう、続きが気になって仕方ないんですよね
しろがねを救出するために、あえて、フェイスレスに捕まる事を選んだ勝を助けたのは、男女の愛に長く憧れを抱いていたコロンビーヌでした
結果的と言うより、たまたま、勝に抱きかかえられた事で、コロンビーヌは「フランシーヌ様を笑わせたい」と同じくらい強く願っていた夢が叶い、どこか満足したのでしょうね
元より、Oを仲間と思っていない事もあって、一切、迷うことなく、勝の手助けをする、と決断し、ナイア率いるOとの戦闘に突入します
フェイスレスの命令で、勝の戦いをずっと見てきたコロンビーヌだからこそ、勝が気付かないふりをし、ムキになって否定する、心の奥底にある感情に気付いていたんでしょう
勝が、自分を好きになってくれないのは、コロンビーヌも理解していたでしょう
自分が自動人形だから、人間に酷い事をしてきたから、ではなく、勝がしろがねの事を好きになっているから
けど、コロンビーヌが惹かれたのは、しろがねを守りたくて、懸命に戦う勝
だからこそ、勝が自分に振り向いてくれなくても、彼女は彼の為に戦えたのかも知れません
そんなコロンビーヌの意図が読めず、混乱しながらも、しろがねを助けるためだ、と納得して共闘を選んだ勝はOと戦います
勝&コロンビーヌvsナイアたちOの戦い、これは勝たちが勝った、と言うよりも、ナイアたちが最初から負けていた、いや、そもそも、戦いの場にすら上がっていなかった、そんな感じです
Oは「しろがね」や、ジョージのような旧タイプの「しろがねーO」よりも、不老不死に近い存在です
そりゃ、そうですよね、自分達の本体は決して害されることのない場所に保存しておいて、自分達は、いくら壊されようとも、何ら困らない機械の体に、偽りの魂を強引に押し込んでいるんですから
Oは、たった一つしかないからこそ、どんな屈強に追い込まれようとも屈する事のない命の力を捨てているんですから、熱い血が流れている勝に敵う道理がないんですよ
死なない体、それは理想的ですけど、ナイアたちの醜態を見ると、「うわぁ」と思っちゃいますよね、実際
サハラで鳴海を救うためにアルレッキーノに挑んで、真っ黒こげにされたリィナや、アメリカで子供らを救うために限界を超え、悔し気、それでいて、嬉しそうな顔で逝ったジョージらは、人間らしかったです
だからこそ、余計に、ナイアらの生き方と逝き方は、唾棄したくなるのかも知れません
笑顔で逝けない最期は憐れ、とは思うんですよ
ただ、同情は出来ませんよね。だって、ナイアは他の人間から、「笑顔」を奪う道を選んじゃったんですから
フェイスレスの唆しが巧みであったとしても、彼女が、その手で犯した罪は���えないんじゃないでしょうか
そして、ついに、勝へフェイスレスの「心」が転送されてしまいました
卑劣なのは承知してましたけど、フェイスレス、とことん、クズ野郎ですわ
これまでの勝は、どこへ行った、と思うくらい、邪悪な歪み方をしてました
人間、中身が違うだけで、こうも変わりますか
果たして、(21)では、どんな展開になるのか、もう、楽しみで仕方ありません
この台詞を引用に選んだのは、誰かを守るために戦う力を得た勝らしいものだな、と感じたので
ハッキリ言えば、これは当たり前の事なんですよ
子供だって知っています
けど、人間は弱いから、この当たり前が、そう簡単には出来ないんでしょうね
私も、自覚がないだけで、やっているかもしれません、これを
だからこそ、余計に、この台詞がガツンッと、ある意味、ナイアよりも響くのかも知れません
自分が幸せになりたい、それは悪い事じゃありません
その為に努力してこそ、人間です
頑張っている最中に、人と争い、競い、蹴落とす事もあるでしょう
それも、悪い、とは言い切れません
けど、それでも、他人の不幸の上に、自分の幸福を築いちゃったら、人間はアウトなんでしょう
藤田先生を含め、本物の漫画家だけが描ける作品が面白いのは、藤田先生たちが、他人の不幸ではなく、自分達の努力と苦労の上に立っているからなんだ、と私は思います
私も、地道に己の文才を「武器」になるまで鍛えて、正々堂々と、他の小説家デビューを目指す人らと、自信の持てる作品で殴り合って、広くはないにしろ、開かれている正門を突破し、先輩らがいるリングに上りたいもんです
なので、皆さん、応援よろしく(←自作の宣伝かい!?)
「なんで、私が好きなコトをやっちゃいけないのよ!?人間は平等なんでしょ!?じゃ、私だって幸せになる権利はあるわ!私は、ゾナハ病にかかってから、ずっと不幸だった。だから、何も知らない他のヤツらの代わりに、今度は、私が幸せになったっていいじゃない!!」
「・・・ダメなんだよ・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・え・・・?」
「他の人を踏んづけて、自分だけ幸せになっちゃダメなんだ」
「・・・・・・な・・・ダメだって・・・?」
「ナイア・・・ぼくは思うんだ・・・あなたは幸せを手に入れる方法をまちがえたんだね・・・」(byナイア、才賀勝)