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ジェフリー・フォードの久しぶりの邦訳は、日本オリジナル編集の短編集。
『傑作選』とある通り、どれも著者らしい短篇だった。
巻末の訳者あとがきによると、最後の邦訳は2008年で、以降、日本でフォードの本は出ていなかったようだ。これは是非、2冊目3冊目の短篇選集を出して欲しいところ。
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好きだったのは『ファンタジー作家の助手』と『巨人国』の2つ。
作家になる素質を物語のなかの人たちとファンタジー作家が見いだしてくれるなんて、最高
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SFでもなくただ不思議なことが起こるという意味合いの「ファンタジー」でもなく、本当に「幻想文学」という言葉が相応しい作品。ストーリーに時間や空間の捻れが生じ、気がつけばそれに絡め取られているような感覚に陥る。これまで発表されてきた著者の作品を集めた短編集だが、徐々にファンタジー色が強くなっていく構造が見事。個人的には『レパラータ宮殿にて』が一番好み。
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『白い果実』は震災前に、『記憶の書』と『緑のヴェール』は震災後図書館再開後に読んだのを思い出した。そういう意味でも忘れ難い作家。
山尾悠子さんや中野善夫さんが翻訳を手がける作家だもの、好きになるに決まってる。
ドッペルゲンガーの扱いが面白い。
語り手の一人称表記が<わたし>だと女性、<私>だと男性という風に訳者の方は分けているのだろうか?
「珊瑚の心臓」はこの短編集随一の悲恋。
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数年前に何冊か読んでとても引き込まれ、SFに触れたいと思ったきっかけになった気がする。その後ディックなど手に取るが実はサッパリ。今回はファンタジーが強く、ほぼSF色は見当たらす、とてもディープな世界に連れていかれた。幾度か寝落ちしながら読み、また再開。ほんとうに夢を見てるような、何か山の一軒家で木の椅子に座らされて、お爺さんがしみじみ本を読んでくれてるような、懐かしいような静かで不思議で美しい時間を過ごした。お爺さんはその後、猟銃で捕らえた動物のシチューを振る舞ってくれるのだった。肉は残すよ。
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「白い果実」のジェフリー・フォード。なので、短編とはいえ、重層的で目の眩む、読み応えある物語たち。読み始め、あれ?ジェフリー・フォード?と思ったけれど、あ、やっぱりジェフリー・フォード、になっていく、グラデーションある物語の並び。足元がぐらぐらするところに立つような不穏な感じ。熱があるときに見る夢だ。
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海外文学の幻想小説ってやっぱり土地勘??とか文化歴史??に弱いからやっぱり難しい…うううん、まだ早いか…
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ジェフリー・フォードの短編を読むのは初めてのはず(長編は『シャルビューク夫人の肖像』を読んだが例によって何も憶えていない)。訳者があとがきに書いているように《現実的なものから幻想的なものへ》と配列された作品のうち、後のほうの「珊瑚の心臓(コーラル・ハート)」や「巨人国」「レパラータ宮殿にて」などが面白かった。より奇想小説ふうの作品群からはエリック・マコーマックを思い出した。いずれにしても、物語は忘れても、特徴あるイメージがきれぎれのままおそらく長く私の頭に残ってときどきよみがえったりするだろう。一冊通して読んで、なんとなくこの著者らしい世界の感じはつかめたと思う。そのうえで、名高い長編三部作などは自分にはおそらく重すぎてしんどいだろうなという気がする。『シャルビューク夫人…』はどんなだったかしら、若くて気力体力のある時分に読んだから…
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〈白い果実〉三部作の著者による、めくるめく奇想とイマジネールに彩られた短篇集。
ジェフリー・フォードの幻想小説はやっぱり唯一無二のヴィジュアルイメージの強さがある。「創造」の冒頭、どんなに注いでもジョッキから溢れないビールのネオンサインと生命のメタファーにはじまり、「光の巨匠」の首だけが浮かんでいる男の額に嵌め込まれたエメラルドの栓だの、「私の分身の分身は私の分身ではありません」のホワイトチョコに漬けられて姿を表す透明ドッペルゲンガーだの、「レパラータ宮殿にて」の小さな雲が浮かびグラスのなかに天気雨が降る〈プリンセス・チャンの涙〉という名のカクテルだの。緻密で妄執的なリチャード・ダッドの妖精画を思わせる読書体験。
『白い果実』のクレイもそうだけど、フォードは医者が嫌いだとしか思えない医者キャラをよくだしてくる。医者のことを絶対に"医術と称して他人に取り返しのつかない傷を残していく奴ら"だと思ってる。作中で科学者キャラが振りかざす似非理論の"オメーは何を言ってんだ"感も読みどころで、「光の巨匠」の心的光学の話は特に印象に残った。
男たちが創造主の真似事をしてさまざまなやらかしをする一方、女たちは男主体の物語に抗い、ともすると小説という構造からすら逃げようとする。「巨人国」は読んでて頭がクラクラした。訳者あとがきで言われているけど、唐突な場面転換が実は同一モチーフの反復になるというフラクタル構造の小説になっている。どこへつれていかれるのか最後までわからない。
ハイファンタジーと騎士道物語を掛け合わせた「珊瑚の心臓」もフェミニズム的に読めて面白かった。半身不随で空飛ぶ椅子生活を強いられている女の創りだした思念体がめちゃくちゃ強いのカッコ良すぎる。美文調の訳文もいい。
最後に置かれた「レパラータ宮殿にて」は、海賊の孫が築いたはぐれ者だけのユートピアが崩壊していく物語。本書で一番ウェットな感じの作品だが、これにも人の耳から芋虫をつっこんで悲しみを食わせるヤバ医者がでてくる。悲しみの繭から生まれた巨大な蛾というモチーフは目新しくないが、道化師や泥棒や娼婦だったアウトサイダーたちが実のない肩書を与えられて平和に暮らしていた王国のイメージは懐かしい人形劇のようで静かな余韻を残す。
どの短篇にも豊富なアイデアが惜しげもなくドバドバと盛り込まれている満足度の高い作品集。パラレルワールドの宇宙物理学を描いた「理性の夢」も面白かったので、SF系の作品も訳されてほしいなぁ。
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短編集13篇
幻想妄想、夢といった世界が短編の中にギュッと凝縮され鮮やかな世界を表している。「創造」「熱帯の一夜」の少し不思議な物語や「光の巨匠」「巨人国」の入れ子細工的なこんがらがった面白さ、「夢見る風」「珊瑚の心臓」のどこか教訓めいた物語それぞれ違った味わいがあってジェフリーフォードの世界に堪能した。
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「白い果実」から始まる三部作で知られるジェフリー・フォードの短篇集。噂に違わぬ面白さで、ファンタジーよりは幻想文学の方が好きという人なら必読の書。個人的にはフォードらしいと言われる多重構造で目眩くような作品よりは、どちらかというとストーリー自体は単純な方が好みで、お気に入りは「夢見る風」。三部作の方もいずれ。