紙の本
人生観、死生観まで考えさせられる。
2018/12/03 09:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:浦辺 登 - この投稿者のレビュー一覧を見る
科学の時代といわれながら、「御朱印帳」を手に神社仏閣を訪れる人は多い。四国八十八か所巡りの全国版とでもいうべきか。
単なる、オタクの世界での御朱印集めだけではないものがあるのでは。
本書のページをめくりながら、人の願い、祈りは様々。
そして、それが、独自に存在していることに大きな驚きだった。表紙の写真からして、ご神木に鎌が撃ち込まれた物。誰が、どんな願いで、いつ、こんな風習になったのか。
哀れだったのは、食肉牛として飼育された牛の鼻輪が奉納されている写真。牛の生命をいただいて、人は生きている。欧米では「アニマルウェルフェア」といって、家畜をストレスなく、そして、無用な圧力をかけない。死に尊厳をという思想が広がっている。
しかし、日本では、さらに、それを上回る「奉納」という形での尊厳が続けられている。この山となす牛の鼻輪の写真は、世界に発信して良い。生き物の生命をいただくということ。それに対する感謝の念を抱いていること。これは、クジラ漁で生計をたててきた漁師たちが「クジラ塚」を立てて、慰霊するのと同じだ。
人間は死ねば、墓場へ行くと思うが、その墓石の墓場があることにも驚く。
物質的に、豊かに、欧米に追い付け追い越せで生きてきた近代の日本人。
しかし、人間は死ねば、自然に還る。死生観というものを振り返らせる一書でもある。文章、写真から、著者が何を読者に訴えているのかを感じ取れる。
投稿元:
レビューを見る
あの世への想像で紹介された
ムサカリ絵馬や人形と婚姻させる風習が面白かった。
実際に紹介された寺院へ行ってみたい
投稿元:
レビューを見る
写真集と言ってもいいほど沢山の写真が載っていて、神社寺の紹介や奉納にまつわる考察がわかりやすく、とても面白かった。民間信仰、個人の願い事、亡くなった者への哀悼などの深さに驚愕です。
投稿元:
レビューを見る
神社仏閣に行き、気になるのは、伝承や祭神、そして、奉納されている絵馬…という方は多いんじゃなかろうか。
下種の勘繰りといわれればまぁその通りなんだけど、気になるものはしょうがない。
そんな好奇心を、より過剰に満たしてくれる怪書が本作。よく許可が取れたなぁ…。
相当な数を掲載しているが、まだまだ紹介しきれていないということなので、是非とも続刊を望みたい。
投稿元:
レビューを見る
表紙の写真はおびただしい数の鎌が木に刺さって
います。これは神社にあるお願いをしているのです。
人は誰でも苦しい時は神様や仏様にすがりたくなる
時はあります。
その時に納めるのは賽銭ではなく、時としてその
神社、お寺ならではのお供え物があります。
有名なところでは京都伏見稲荷神社では鳥居を
奉納するんで、あのような鳥居のトンネルができる
わけですね。
長い年月を経て、そのお供え物が大量に集められた
(集まった)神社仏閣の光景は非常にシュールで
あり、ある種異様な雰囲気を醸し出しています。
そんな不思議な空間を紹介する一冊です。
しかしそれらを単に面白おかしく紹介するのではな
く、日本人が持つ宗教観、そして宗教というものの
歴史など、多方面からの考察も語られており、
学術的要素も高い本となっています。
投稿元:
レビューを見る
まっとうなと言ってよいのかどうかわからないがその筋からかなり外れた神社仏閣がいかに多いか思い知られる。
民間信仰から来る神仏は人の心にがっちりとはまり込んでいるからご利益的な物もかなり強力なのだろう。ただ、それも信仰であり粗末に扱えばどうなるかは分からない。
投稿元:
レビューを見る
寺社の個性的な、珍しい奉納を紹介した一冊。これだけの数の奉納事例を取材するのは大変な労力だろうと思う。よほど好きじゃないとできない。著者はユニークな寺社にかなり精通しているらしく、どんな奉納なのか由来や時代背景まで含めて要点を抑えて簡潔に記述してある。著者の考察も興味深かった。読み応えがあって写真も豊富。こちらの知識不足で理解が難しい部分も少々あったけど、面白く読んだ。
時代が変わっても日本には各地にスピリチュアルな習俗が生きているのだなあ。日本人は無宗教という説は疑わしい。信仰心の強い人はその信心深さが表面に表れやすい。しかし、そうでない多くの人も普段意識してないだけで、潜伏していたものが奉納という形で表れてしまうのではないか。
単に、こんな珍しい奉納がある、では終わらないおもしろさもある。寺社で奉納される場合はなんらかの由来がある。その由来が変容したり、解釈が変わったりして奉納という行為が発生する。その奉納という行為が個人主義の発達など、時の移り変わりと共に変化するのもおもしろい。もしかして人には奉納欲というものがあって、その奉納欲によって、由来とその解釈が奉納に適するように書き換えられてしまうのではないか、なんて想像をした。
投稿元:
レビューを見る
伝統的な宗教が、その時代に生きる人々や願いによって、様々な形に変化して残る、または進化していく様子がとても興味深かった。
筆者の文章も軽すぎず重すぎず、分析しつつ静かに見守るスタイルがちょうど良い。
投稿元:
レビューを見る
ただただ人間の欲望の深さには驚くばかりだ。神に祈ったから願いがかなったのか、努力したから願いがかなったのか。それは神にもわからないのではないかと思うのだが。
投稿元:
レビューを見る
奇怪な奉納風景をただ面白おかしく紹介した珍スポ本ではなくて、それぞれの場所でその習俗が生まれるに至った経緯を詳しく調査して考察してあるのがとても勉強になった。
今の日本で宗教とか信仰心とかいうと、ごく一部のストイックな求道者たちの仏教・神道か、冠婚葬祭ビジネス、そしてカネ儲け目当てのあやしい新宗教…ぐらいのイメージしかなかったんだけど、昔からの習俗が現代風に姿形を変えながら、若い世代にも連綿と受け継がれてることがわかって面白かった。かわいくデコられたおっぱい絵馬とか、ロリータファッションの奉納地蔵とか…。
ぜひ現地に行って強い信仰心のエネルギーを感じてみたいな。
投稿元:
レビューを見る
説明は不要。
その奉納され積み重なった人の思いの様が収められた写真の
パワーに絶句するしかない。宗教・習俗を超えたむき出しの
人間の様。