魅力あるキャラクターの医師
2019/03/13 22:37
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は浅草にある診療所医師、真野麟太郎を主人公とする下町の人間模様を主題としている。池永は、喫茶店の店主とその商店街の人々の人間ドラマ、コンビニエンスストアに行き交う人々の人間模様などをこれまで描いてきた。本書も内容的にはそれと同様である。
本書は7つの短編から構成されているが、最初の一編はリストカットを行った女子高校生を診療所で預かるところから始まる。ストーリーの冒頭から波乱を呼ぶわけである。それ以降の六編は、真野医師と女子高校生が物語の中心となり、診療所を訪れる患者との絡みになる。
以前の喫茶店主、コンビニ店主と同様、喫茶店、コンビニのある街の住人の様々な事情が絡んでくる。それにそれぞれの店主が巻き込まれる、あるいは好んでジャングルに入り込んでしまうという類のストーリーであったが、今回もそれが医師に変わっただけで、本質は同じである。
リストカットした女子高校生が診療所の居候になるというのもあまり考えられないことではある。そのような引っ掛かりを無視して、ストーリーを進めてしまうのが池永の小説である。喫茶店の場合も都内の総武線沿線に在することになっていた筈なので、下町と言えば下町である。何となく雰囲気が似ている。
今回の舞台は下町とはいっても、堂々の浅草である。下町という形容詞をあえてつける必要はなかったように思う。浅草やぶさか診療所で結構ではないか。喫茶店の方はテレビ放映が為され、文庫版も続編が出版された。診療所も続編があってもよいではないか。真野医師には何となく魅力を感じるのである。
投稿元:
レビューを見る
下町人情あふれる診療所の医師・真野麟太郎と一緒に暮らすことになった女子高生・麻世。
この二人がなんかいいコンビなんですよね。
ラストはちょっとドキドキしました。
牧野さんのカバーの絵も雰囲気が出ています。
あとがきにも書かれているように、新たな物語のスタートです。続きが楽しみです。
投稿元:
レビューを見る
評価は3.
内容(BOOKデーターベース)
東京浅草。診療所の医師・真野麟太郎は、大先生と呼ばれ近所の人々に慕われている。ある日、手首を切った女子高生・麻世が治療にやってくる。麻世の心の傷を知った麟太郎は、一緒に暮らすことを提案。麻世は、家事をすることを条件に同居人になるが…。虐待、認知症、癌など、診療所に持ち込まれる病気や患者の問題に、真摯に向き合う医師と型破りな女子高生が織りなす切なくて温かい下町物語。
赤ひげ先生もどき・・・頼りがいのある先生なんだがなぜか今ひとつはまれず。麻世にも息子の潤一にも・・・。すべての人に魅力が感じられないまま読了。
投稿元:
レビューを見る
下町の診療所を舞台の物語。
現代の診療所では、病(心の病も含む)や老い、死から目を逸らすことはできない。
そして、この物語は、いいお話だけど現実はそんなに甘くはないよね・・・というのとは、逆を行っている。
深刻な状況が発覚した時の主人公の医師の心の揺れや決断は、丁寧に描かれていても、終着地を迎えた時の心情はほとんど描かれていない。
どんなに人事を尽くしても、どうすることもできない、その人事でさえも、迷いや苦しみの中、ということがひしひしと伝わってくる。
それでも死別した妻の浴衣を、決して平坦な道を歩いているわけではない女の子二人に着せてあげようとするシーンは、心にしみる。
投稿元:
レビューを見る
病気だけでなく、心も治療してくれる♪こんな診療所が近くにあれば良いな(゜▽゜*)と思うけれど、あったらあったで、逆に鬱陶しく感じたりして…(^^;)解説に書かれている通り、ドラマ化やシリーズ化して欲しい!
投稿元:
レビューを見る
7つの短編集。
全体的に昭和だなぁと思った。
60代ってそんなにおじいちゃんじゃないと思うんだけどなぁ。
おじいちゃん設定になってた。
表現がいちいち昭和なのがちょい気になる。
ヤンキーの定義とかニックネームの付け方とか・・・
でも、結構好きです。
問題を抱えた人に寄り添ったりするのだけれど、
どれも結果がちょっと物悲しい。
そこは、リアルな世界だなぁと思わせられた。
世の中、小説みたいには上手くいかないでしょ
そんなに甘くないと言われてるようだった。
それは前に読んだ「珈琲屋の人々」の時も思った。
投稿元:
レビューを見る
東京は下町生まれ下町育ちとしては読みたかった作品。
近所のおじちゃんおばちゃんてみんなこんな感じだったなと妙に懐かしい。
投稿元:
レビューを見る
いろんな事情をかかえた患者やご近所さんがおりなす人情ドラマ。全部で7章。悲しい終わりの話もあるが、4番目の「幸せの手」がさわやかで良い。キーとなる人物麻世が高校2年生にしてはキャラが大人すぎるというかぶっ飛んでて無理がある。最後の終わり方があっけないというかその後まで書いて欲しかった。たぶん続きがあるのだろう。
投稿元:
レビューを見る
今でも都会の片隅にこんな診療所があるのだろうか?
大先生に背中撫で撫でされて、オキシトシンが出て病気が治る。しかし幼馴染が罹患するスキルスには勝てない。受診に来た訳あり女子高生を居候させる。
寅さん的で江戸っ子おやじの麟太郎大先生と麻世がコレからどんな活躍をしてくれるのか、シリーズ化される事を望む。
投稿元:
レビューを見る
久しぶりに池永陽さんの作品を読みました。「下町やぶさか診療所」、2018.12発行。テンポがよくて一息に読了、楽しい時間を過ごしました。真野浅草診療所院長の真野麟太郎64歳、お節介焼きのナイスガイです。母の愛人に侵され自暴自棄になった高校2年生沢木麻世16歳、やぶさか診療所受診をきっかけに、診療所2Fで麟太郎と暮らすことに。曖昧なことや嘘が嫌いな元ヤンキーの可愛らしさ、そして意外と素直な面が。病院の隣りには昼は喫茶、夜はスナック、美人の夏希ママが経営する「田園」が。下町の気風のいい住民たちの物語。
投稿元:
レビューを見る
浅草の町医者を舞台に繰り広げられる物語はどれもシビアなものばかりであるにもかかわらず、単に挫けるのではなく自分のできる範囲でもがく人々と、何とか力になりたいと腐心する麟太郎先生の優しさが心に染みる。
あまりに不器用な突っ張り方と、意外と素直な一面のギャップを持つ麻世がこの先どう成長するか、親のような気持ちで見守りたいと思います。
投稿元:
レビューを見る
浅草の診療所の医師、麟太郎はいつもちょっとしたお節介をしながら、町の人たちと触れ合っている。
大きな傷を負って居場所のない女子高生、認知症の妻を支える老老介護、植物状態の夫を見守る先の見えない入院、そして癌。
一つ一つのテーマはかなり重いのだが、麟太郎と下町の人々の関わりが温かく描かれていて、読みやすかった。
投稿元:
レビューを見る
麻世の心の傷や認知症など、テーマとしてはとても辛く重い話しだと思う。良い話しで片付けられるものではないが、麟太郎のお節介や人に向き合う姿勢に、こういうのもありなのかなともう思う。さらさらと一気に読みました。
投稿元:
レビューを見る
医療現場ではあるあるの老老介護などのテーマだけでなく、毒親問題も出てくるこの小説。麻世にはもう毒親と縁を切り麟太郎先生の元で自分の過去を癒しながら新しく看護師としてやり直してもらいたい。性的虐待は最も踏み込みにくい問題だけに、そこに手を差し伸べられる麟太郎先生の素晴らしい生き方に共感する。麟太郎医師は病気を治すだけでなく人の人生も立て直すすごい医師で、こういう人が里親とかになって、虐待で苦しんでる子どもの味方になってほしい。
投稿元:
レビューを見る
東京浅草。診療所の医師・真野麟太郎は、大先生と呼ばれ近所の人々に慕われている。ある日、手首を切った女子高生・麻世が治療にやってくる。虐待、認知症、癌など、診療所に持ち込まれる病気や患者の問題に、真摯に向き合う医師と型破りな女子高生が織りなす切なくて温かい下町物語。(e-honより)