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『トリニティ』窪美澄著
1.きっかけ
Twitter繋がりの方の投稿です。
窪さん初めてです。
読書好きなひとと繋がると、初めましての作家さんが増えます。
新しい世界。贈り物です。伊坂幸太郎さん、浅田次郎さん、筒井康隆さんらは、繋がりからのご縁です。
2.内容
昭和平成そして令和。3つの時代を駆け抜けた女性三人の物語です。
安保闘争、東京オリンピック、大阪万博の時代をメインに女性が働く/生きる姿が描かれています。
描くという表現では補いきれません。
文面から高度経済成長の匂い、臭い、そして立ち向かう生き様が赤裸々すぎるほどに切実であり、時に痛々しくもあります。
ノンフィクションではなく、題材をもとにしたフィクションと冒頭に記載ありました。
3.読了感
団塊世代の読み手には相当のリアリティを感ずる方もいらっしゃるのでは?
と推察します。
窪美澄さん。初めての書籍です。
読書が戦いのような体験でした。
初めての感覚です。
その時代に身体がタイムスリップして一緒に歩むような。。。
執筆、ありがとうございました。
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3.8
昭和という時代をリードした雑誌の出版社を舞台に、新しい女の生き方を体現する三人の女達それぞれの栄華と衰退。
引きこもりからの社会復帰を目指す鈴子の孫・奈帆の、登紀子への取材の形で三人の女達の昭和が語られる。
◯宮野鈴子 向島の佃煮屋に生まれ、高校を卒業後潮汐出版という会社に就職し編集部に配属されるも実際の仕事は雑用係。結婚して子を為す事が夢という昭和のステレオタイプ。
雑誌潮汐ライズの編集部で佐竹登紀子、早川朔ら新しい時代を象徴する女達と濃密な時間を共有し、編集者への誘いを受けるが結局、元来の夢であった寿退社をし練馬の団地に住み子供を育てる。
早川朔の訃報をキッカケに登紀子と連絡を取り、孫の奈帆を伴い弔問するが、時代の寵児とまで言われたイラストレーターのあまりにも寂しい最後に愕然とする。
斎場で登紀子を紹介された奈帆は…
◯奈帆・・鈴子の孫。大学卒業後、苦労の末決まった就職先がブラックで心を病むみ引きこもっていたが、鈴子によって引き合わされた登紀子を取材する事でライターへの一歩を踏み出す。
◯佐竹登紀子 祖母・輝子、母・みつ子母娘三代物書き。典型的お嬢様育ちで母親の臑を囓り続ける。大学を中退し母親の手伝いをする中、戦後の冤罪事件の被害者で17才年上の河津浩介と結婚。
フリーランスのライターの先駆者として、先進的雑誌・潮汐ライズ、ミヨンヌと時代を先取りした感性で記事を書き影の編集長と呼ばれる。
後にエッセイストの道へ。
個人事務所を立ち上げ後進の育成に身を尽くすが、バブル崩壊に続く震災やテロ、そして進む書籍離れにより仕事が激減し事実上の解散。
気づけば周りの人間が全て去り一人に…
◯みつ子 登紀子の母。
著名な作家であり、先進的な女性でもあった母・輝子の元で、ハイカラなお嬢様として育ち、女学院時代に出会った波瑠と帝国ホテルで錚々たる参列者の中挙式する。経済観念がなく稼ぐ能力のない夫に変わり物書きとして生活を支え成功する。夫婦共に恋人がいる仮面夫婦だったが登紀子が15才の時に離婚。
◯佐久間波瑠 登紀子の父。フランス帰りの新進画家だったが、絵は全く売れず生活力のない男だった。
◯早川朔(藤田妙子) 岡山の山村で母親に捨てられ、赤の他人の晴子に育てられる。高校入学を機に東京で母親と暮らし、向かいの住人・ケイの影響でイラストレーターを目指す。
アドカンパニーの社長、そして潮汐出版の編集長・立見に見出され潮汐ライズの表紙で鮮烈なデビューを飾り雑誌の歴史を変えて行く。
結婚し息子も授かるが育児・家事は全て母任せになる。
ライズの専属を務めて5年が過ぎ、マンネリが忍び寄る頃、革新的な女性誌「ミヨンヌ」への引き抜きで、ついに立見と袂を分かつ。
自分のイラストを一つの「素材」として扱うミヨンヌのやり方に反発しながら3年が過ぎる頃、いつもの衝突からついに自ら降板を宣言する。さらに数年に渡る夫の浮気が追い討ちをかける。
◯立見・・早川朔の生みの親。潮汐ライズ編集長。
アドカンパニーの社長に伴われ、ポートフォリオを持って現れた無名の少女・妙子の作品を一��見るなり、雑誌の歴史を変える気概を以て創刊する新雑誌「潮汐ライズ」の表紙に抜擢する。 時に鬼となり朔を育て、朔の結婚式には父親役となりエスコートする。
誰よりも朔の作品を愛し、晩年、病の床で「自分の最後の本は朔の作品集」と伝えるが、願いは叶わぬままこの世を去る。
◯晴子 村で唯一の雑貨屋を営む。赤痢で娘を喪くし自らも病弱だが引き取り手のいない妙子を引き取り育てる。高校生になった妙子が母親の元へ去って一年後に病死。
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窪美澄 登場人物の背景がドラマティックに描写されるが、知っている誰かに似ている共感を心の奥底から引っ張り出させる そんな面白い作家だと思う。
今回は「トリニティ」
三重 三組 三つの部分 キリスト教では三位一体ということだが
私は「3人の主人公たちの生き様」が重なり合い ぶつかる様を表しているのかと思って読んでいた。しかし
文中で「かけがえのない3つの物」とは
男、結婚、仕事。それとも仕事、結婚、子どもか、と心に問う場面がある。
ここがテーマのようだ
高度成長期に出版社の雑誌の編集部で出会った3人の女性たち
イラストレーター 妙子
フリーのライター 登紀子
事務職でお茶くみをしている 鈴子
彼女たちの育った背景を織り交ぜながら 己の「トリニティ」をもがき苦しみながらつかもうとしていく。
時代の流れが丁寧に書いてあり、日本の現代史に弱い私もかつて見た映像を思い出しながら読むことができた(ちょうど「いだてん」で見たばかりだし・・・)
主人公たちの葛藤は読んでいて苦しくなるほどであったが、主人公や其々の家族たちは愛おしく、引き込まれてしまった。
女性だからこそ共感できる部分が多いのかもしれないが、主人公たちの人生を知って欲しいと思える作品だった。
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登紀子、妙子、鈴子の三人。潮汐ライズを通して出会った三人。ライターの登紀子。イラストレーターの妙子。潮汐出版でOLをしていた鈴子。新宿の安保反対のデモを見学して得られた三人の一体感は、まさにトリニティ。また、三人それぞれが祖母や母親を含めた関係があり、横軸だけでなく、縦軸のトリニティもある。仕事なのか家庭なのかといった女性の生き方を語った作品と一言で表現してもいいのだが、それだけではない何か人生の不条理というか、公平ではない人生が公平に割り当てられているように三人の人生が絡まる。人生なんて山あり谷あり。壮絶な三人の人生は現実世界でも珍しくないかもしれない。
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けしてよみやすくはないが、ありのままで3人が交差していく。頑張れば報われるということもなくタイミングや時代の波も彼女たちの生き方に影響している。
よく生きるというより自分なりの精いっぱいで時がなかまれ、相手の思いに気づくところも味わい深い
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前回の東京オリンピックの頃の日本は
こんなにも人々が熱く生きていた時代だったのか。
地方で貧しく育った『妙子』も東京でお嬢様として育った『登紀子』も下町で平凡に育った『鈴子』も
三人が三様に激流のように変化していく世の中を
懸命に真っすぐに生きている。
何かを手に入れようとするれば、何かを諦めなくてはいけないのはいつの世も同じこと。
それでも自分の欲望に正直に、もっともっとと手を伸ばして掴もうとする彼女たちの姿に
打算や小賢しさは微塵も感じられない。
人生の最後をどのような形で締めくくろうと、
彼女たちが懸命に生きた姿をだれも軽んじることなどできないと思う。
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登場人物の生き様を知って、どう受け止めれば良いんだろう。
私の親世代が生きた時代。実感はないし、深い共感も湧かない。
働いていた頃、労組の先輩に、
「今は当たり前の権利も、自分や先輩達が闘って、勝ち取ったのだ。」と、何度となく聞かされた。感謝の気持ちはあったけど、それ以上何を求められていたのか…
読了後、それと似た感じかも知れないと思った。
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図書館で借りた本。20代の頃、バリバリ仕事をしていたフリーライターの登紀子、イラストレーターの妙子。そして平凡な出版社のお茶汲みOLの鈴子。60年安保の時代から高度成長期を通しバブル平成の時代。やがて出版業界は厳しい時代になり3人も70代になっていく。3人の幼少期からをじっくり書いているから時代背景の変化も分かりやすく読みやすかった。色々と葛藤はあった3人だが、名声や金銭に恵まれたりした一時代もあって良かったやん。と言いたい。良い時を経験できたんだから。
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昭和の時代にフリーランスのライターとイラストレーターの先駆者として時代を彩った女性たちと、出版社で2人と一緒に仕事をしたのち専業主婦となった3人の人生を描いた物語です。
歳をとり、時代も変わってだんだん仕事がなくなっていく不安、誰からも必要とされなくなったような寂しい気持ちは、同じフリーランスの私としては他人事ではなく身につまされました。でも、それでも生きていかなくてはならないし、生きていくこと自体が誰かの力になっているかもしれないんだって思いたいです。
それにしても、今の時代は仕事はひとつよりいくつかあった方がいいし、お金になるという意味での仕事以外にもやりたいことを持っておいた方がいいなと思いました。
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積読してた本を片っ端から読もうシリーズ27冊目。
久しぶりに読み応えのある長編を読んだ。
激動の昭和の時代を駆け抜けた、3人の女性たちの生き様を描く。
イラストレーターの妙子とライターの登紀子は、
実在の人物がモデルになっているらしい。
30代半ばの私は、戦後の昭和の時代のことはよく知らないけれど、
女性が自由に生きるというのは、
いつの時代にも苦労があったんだなと思う。
こんなに価値観が多様化した令和の時代だって、
いまだに昭和の価値観や制度は残っている。
それだけ、昭和というのは「現代」に繋がる様々なモノが生み出された時代だったのかな。
そんな昭和の時代に第一線で活躍された妙子と登紀子、
そして2人と縁のあった専業主婦の道を選んだ鈴子の
それぞれの悩みや葛藤は、
現代の女性たちにも通ずるものがある。
自分にとって大切なものは何か?
自分の軸や価値観を見つめ直すきっかけになる本書は
古い価値観に囚われている方や
これからの生き方に悩める女性たちにおすすめしたい。
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朝ドラみたいだなぁ。そのうちNHKでドラマ化されちゃうのかなぁ。
中盤、3人それぞれの家庭の話になったときに、ちょっと飽きちゃったけど。
2020/2/9読了
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それぞれの時代を懐かしく思い出しながら読む。時代を象徴するトピックだけでなく、身近なところにさりげなく漂っていた空気感も。結局、何も起きない日常の暮らしがいちばんの幸せ⁉︎^_^父と子と聖霊の名において^_^その3つは女にとっては、いったいなんだろう。
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1960年代、ある出版社で出会ったフリーライター・イラストレーター・平凡なOL。生立ちも才能も考え方も全く異なる若い女性3人の出会いから晩年迄、友情や嫉妬も絡みながら其々の人生の栄枯盛衰が繰り広げられる。特にライターの登紀子、イラストレーターの妙子の人生は高度経済成長・学生運動・ウーマンリブ等で元気な昭和が若年期、天皇崩御前後の陰鬱感に始まり阪神淡路大震災・地下鉄サリン等で沈滞の平成が壮年から老年期と、時代の空気とリンクしていて象徴的。
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ないものねだり。
隣の芝は青く見える。
立場が変わると分かり合えなくなる。
欲しいもの全ては手に入らない。
他人に羨ましがられる人も孤独なもの。
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僕の親世代の女性3人と、子世代の女性1人の物語。
様々な人が、様々真摯に生きていく姿が著されている。
女性ばかりを取り上げて、女性であるが故の制約について書かれた本ではあるが、男性の自分が読んでも、それは単に数ある制約の一つに過ぎないことが感じられ、性別に関わらず、普遍性のある物語として、読むことができた。
良い本だと思うが、少し重めの読後感。