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「スーパーおまわりさん」が追い詰める!
2022/12/07 21:16
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投稿者:higassi - この投稿者のレビュー一覧を見る
「事件は終わった」を読んで、少し前の作品も手に取ってみました。犯人も分かっているのに「スーパーおまわりさん」の狩野雷太がじわじわと(でも最短ルートで)追い詰める展開に引き込まれ一気読みでした。シリーズでもう一作あるので(朝と夕の犯罪)読んでみたいです。
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5つの短編集。
元捜査一課だった刑事が事情があって交番勤務しているが、
その人「狩谷さん」が事件を解決していく。
それぞれに人間臭さがあり、そしてどこか温かいものもあり。
とてもよかったです。
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しゃべり方からは雷太の年齢設定がピンとこないが、軽いような馴れ馴れしいような口調でグイグイ質問されたら答えざるを得ないのだろう。市民にとっては頼もしいお巡りさん。もっと読みたい!
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「神倉駅前交番狩野雷太の推理」という副題のとおり、交番の警官が地域課の特性を生かしながら、その鋭い洞察力を武器に事件を解決していく標題作を含む5つの短編。
30~40代、警官にしては長い髪の毛、にこにこというより、へらへらしてどことなく軽薄な感じ、能と言えば辛抱強くお年寄りの相手をすることくらい・・・としか見えない「交番のおまわりさん」狩野雷太。
ところが、望洋とした外見に反して、彼がのんきな調子で雑談を始めると相手はついボロを出す。
何気ない会話の中から、深い洞察力で隠された事実を見抜くだけでなく、犯人すら気づいていなかったその先の悪をも探り当てる。狩野恐るべしなのだ。
それもそのはず、狩野はかつて、「落としの狩野」と呼ばれた元刑事。ある過去を抱えて、交番勤務をする彼の秘密が、読み進むにつれて次第に明らかになるという手法は鮮やか。
5つの事件それぞれが意表を衝く展開でありながら、狩野の過去という共通する背景もあり、全体として非常にまとまりのある作品。
脇を固める県警の葉桜刑事、狩野の部下のみっちゃんこと月岡など魅力的なメンバーもあり、是非ともシリーズ化を望みます。
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ミステリ短編集。さまざまな事件を扱っていて、どちらかといえば物騒なものもあるけれど。読後はどこかしらほっこりさせられるような読み心地の作品が多いです。
お気に入りは「見知らぬ親友」。その人の受け取り方によって、見えてくるものが180度変わってしまう恐ろしさと悲しさが描かれていて印象的でした。最初からひりひりとした逼塞感とどうしようもない疑心暗鬼がつらかったのだけれど。真相がわかった後もつらい。けれど、まだ最悪の事態にならなくってよかったなあ、というところで一気に救われました。
そこから続く「サロメの遺言」も印象的。これもまた悲しい話。芸術って恐ろしいものなのかも……凡人でよかった、と思えてしまいました。
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「落としの狩野」と言われた元刑事が主人公の連作・・・なのだが、
どれも犯人視点なのが面白かったです。
5編目でそうきたかー!という感じに。
ユニットの作家さんなんですね。他のも読んでみよう!
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初めて読む作家で、名前と表紙の雰囲気から何故か男性作者だと勘違いしていたが、女性2人の共同名義らしい。
神倉駅前交番勤務の警官 狩野雷太シリーズの第1作目の短編集のようで、倒叙ミステリとの紹介を見て読み始めたのだが、自分が思っていた本格ミステリの一ジャンルとしての「倒叙ミステリ」とは違っていた。
確かに犯人側の視点で物語が進み、探偵役である警官狩野に追いつめられるのだが、犯人を落とすための犯行時のミスや逃げられない証拠などが、予め読者に明示されていないように思える。
パトロールを通した地域の情報や、会話しながら問い詰めていくのが、警察官らしいのかもしれない。
一般的な倒叙ミステリと比較すると、犯人パートの犯罪を犯すまでが長く、犯人側の心情が細かく描かれているからか、狩野の存在がとても不気味で面白いミステリだった。
特に前半2作品の「鎖された赤」「偽りの春」が好み。
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初めて読む作家さん。「降田天」という作家名は執筆担当とプロット担当、二人のユニット名だそうだ。
サブタイトルの通り、探偵役は神倉駅前交番の狩野。かつて『落としの狩野』と呼ばれる優秀な刑事だったらしいが、訳あって交番勤務へ移ったらしい。
全体的には大倉崇裕さんの福家警部補シリーズのような倒叙方式。
最初に犯人の視点から描き、何らかの理由で狩野に出会ってそこから犯人の罪があぶり出されていく。ただそれで終わりではなく、犯人も気付いていなかった新たな展開が待っているというのがワクワクさせる。
同時に読み手も見ていた景色が違って見えてきたりする。
収録されている五編のうち最後の二編は狩野が交番勤務に変わったきっかけとなる事件とその顛末が描かれている。
特に最終話はいろいろ考えさせられた。
警察が事件の犯人を逮捕し動機や犯罪の詳細を解明するまで、検察や裁判所は裁判でその詳細を明らかにし罪を決定する。
しかしそれで本当の解決とはならない。ましてや狩野が交番勤務に変わったきっかけのような事件が起きれば。
被害者側、加害者側、双方の家族(または遺族)が納得出来るような結末はない。現代のようにネットで勝手な憶測がまことしやかにあっという間に拡散してしまう社会では私刑がまかり通ってしまい、双方共に傷ついてしまうだろう。
一体何が被害者側家族にも加害者側家族にも納得し救いになるのか、難しい。
小説というよりはドラマを見ているかのような描写でテンポよく読める。
他の作品はどうなのかわからないが、機会があれば読んでみたい。
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「落としの狩野」と呼ばれた元刑事の狩野雷太。今は交番に勤務する彼と対峙するのは、一筋縄ではいかない5人の容疑者で…。表題作など全5編を収録したミステリ短編集。
2018年度日本推理作家協会賞(短編部門)作。主人公にあまり魅力は感じなかったけれど、5篇とも趣の違う短編ミステリ佳作集だった。この作者(たち)が「このミス大賞」をとった作品は低評価だった記憶があるのに、すっかり見直した。
(A)
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脛に傷持つ人物がトラブルに巻き込まれ、交番のお巡りさんと関わる羽目になる。後ろ暗い所は隠し通せると思っていたらそのお巡りさん、かつて「落としの狩野」と呼ばれた元刑事が全てを暴くという倒叙形式の短編集。それぞれ最後の締めに苦めの一捻りが効いている。児童誘拐犯の学生が語り手の「鎖された赤」や高齢者詐欺グループのリーダーの「偽りの春」が形式に則った話だけど単純な犯罪者ではない新種の薔薇を狙う園芸家の「名前のない薔薇」や同居している大学の友人に対する殺意「見知らぬ親友」の方が好み。最後の「サロメの遺言」オチは予想つくけどその後の展開が壮絶で読み応えあった。ただサブタイトルの「推理」というよりはちょっとした齟齬を見逃さないといった展開でそこはちょっと拍子抜け。
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初めての作家と思っていたら、二人の作家が小説を書くための筆名の1つとか・・他の名義人がいたりと面白いです。
本題と同じ章、・・めまいがして時刻表に寄りかかる。
パトカーから警官が・・出逢ってしまうとずんずん進んでいくストーリー。
全編はじめに犯罪者が分かってからの流れ。なんとかいう手法ですよね!
安心感があります。
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プロットや展開はすごく良いのだが、これが短編なのが勿体ない。もっと人物描写を掘り下げて長編を書いてほしい。
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交番勤務のお巡りさんが主人公。
落とし物が届いていないかやって来た大学生、バス停でバスを待っていたお年寄り…を見て、優れた洞察力で事件を見つけ出す。
主人公の捜査能力が凄すぎて、不思議な気分になった。事件自体は、色んな背景の人たちが出て来たので面白かった。
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「落としの狩野」と言われた元刑事のお巡りさん、狩野にまつわる5つの事件。癖のある5人の容疑者を狩野が落としていく。
帯に私の好きな逢坂剛&大沢在昌絶賛!とあり、期待をして読み始めたが、正直、最初の2つ目くらいまではどこにでもあるような事件で、そんなに面白くないかも。というのが率直な感想。それぞれが単独の物語で、短編なら連作短編集が好きな私。
実は狩野は以前尋問で容疑者を自殺に追い込んだ過去を持つ。それが原因でお巡りさんになったのだ。その狩野の過去にまつわる4話と5話。この2つの物語は繋がっていて、非常に読み応えがあった。
①鎖された赤
大学生の宮園尊は、痴呆で施設に入所している祖父の家の手入れを頼まれている。祖父の家にある蔵に入ると、自分が惹きつけられてやまない映像が浮かぶ。その映像とは、赤い着物を着た少女を大事そうに世話する男。
蔵に出入りするようになってから、尊は自分を縛り付けていた欲求を満たすべく、少女を誘拐し、蔵に監禁するようになる。
祖父と父親と食事をした際に、蔵の鍵を無くしてしまう。意を決して交番に向かった尊。対応したのはチャラいお巡りさん。そのお巡りさんこそ「落としの狩野」こと刑事上がりの狩野雷太だった。
尊の罪を暴くと共に、もう一つの真実が見えてくる。
②偽りの春
高齢者詐欺グループのリーダー、光代は抜け目なく生きてきた。しかし、仲間に1千万円持ち逃げされる。
そんな光代の元に脅迫状が届く。これまでの過去をバラされたくなければ1千万円用意しろ。光代にはこれまで貯めた金もあるし、そのまま逃げることもできたが、ただ一つ心残りは隣に住む子ども、波瑠斗のこと。もう少し波瑠斗と一緒にいたい。その気持ちが焦った判断をさせ、無理に1千万円を盗み出すことに。そんな光代に狩野が迫る。脅迫状を出したのは?
③名前のない薔薇
泥棒の祥吾は母親の入院先の看護師、理恵に好意を寄せる。理恵も祥吾に好意を寄せているようだが、自分には理恵に好かれる資格がないと思った祥吾は、理恵に自分は泥棒だと告げる。
だったら薔薇を盗んできてと言う理恵だが、その盗みがキッカケで2人の人生は大きくズレていき。
この章は、なんとなく前の2つの物語とは異なる雰囲気。私には作者は肩の力を抜いて書いたのかな?と思えたが、実はまえの2話よりもこの作品はの方が好きだったりした。
④見知らぬ親友
美大生の美穂はピンサロでバイトしているのを夏希に見られ、それが弱味となり一緒のマンションで暮らすようになる。弱味をダシに夏希の言うことに逆らえない美穂はいつしか夏希の死を臨むようになる。
ある日夏希のケータイを操作し、「殺す」と文字があらわれるようにタイマーでセットする。しかし、タイマーをかけた日とは別の日に夏希はホームから落ち、大怪我をした。
夏希の語る真実を聞いていくうちに切なさが込み上げてくる。
また、2人の仲良しの天才、一沙が慕っていた先生に焼き殺されるという事件があった。
⑤サロメの遺言
作家の高木カギは声優のエミリを札がいした容疑で逮捕される。高木はずっと黙秘を貫いている。高木の望みは取り調べを狩野にすることだ。
実はこの事件、高木は犯人ではなく、全て計画して自分が犯人に見せかけるものだった。高木は4話目で天才女子大生を殺し、狩野に取り調べを受け、自殺をした教授の息子だったのだ。
狩野によって事件が解決する時、高木が知らない真実が語られる。
どの物語も容疑者目線で語られていくため、どうしても自分も容疑者に肩入れしてしまい、なんとか捕まらないでくれと思うのだが、やがて狩野が登場すると、ああ、これで一巻の終わりだ。と思わされる。それでも狩野との攻防にハラハラドキドキさせられ、そして、なんとか逃げ切らないものかと思うも、やっぱり狩野は一枚上手だ。
攻防している時には感じられないが、狩野は実は凄くいい奴。そして、これは狩野の物語。初め、そんなに面白くないと思っていた物語が、狩野の過去のトラウマが語られる終盤には面白くて先へ先へと急ぐ自分がいた。そして、読後感も爽やか。また狩野に会いたいと願う自分がいる。
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*高齢者詐欺グループのリーダー、光代は、手足として使っていたはずの仲間に金を持ち逃げされてしまう。さらに、彼女の過去の犯罪をネタに、一千万円を要求する脅迫状が届く。追い詰められた彼女は、普段は考えない強引な方法で事態の打開を図るが、成功したと思われたそのとき、1人の警察官が彼女に声を掛けてくる――。「落としの狩野」と言われた刑事を主人公に、人々の一筋縄ではいかない情念を描く、心を震わすミステリ短編集*
読みやすいのに、内容は濃厚で緻密で情感がぎっしり詰まった傑作短編集。それぞれの犯人の内情や心理描写が克明で、一見飄々とした狩野とのやり取りに、こちらまで手に汗を握る思いをしたのは久しぶり。初読みの作家さんでしたが、筆力の高さにも脱帽。時間を置いてまた再読したい。