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『黒面の狐』の続きになるのかな。
相変わらず、雰囲気が怖い。
本なのに、文字から嫌な空気が流れ出てくるような感覚。
文章として物凄く怖い言葉が書かれているわけではないのに、「何か気持ち悪い。おどろおどろしい気持ち」になってしまうのはすごい。
「白もんこ」の正体が結局何なのかうやむやなまま終わったけど、そこがいいのかな。結局怖いものは怖いもののまま。この本には、その結末がピッタリかな。
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読了。40点
三津田さんは非常に好きな作家さんですがこの作品はあまり楽しめなかった。
その最大の要因は語り部に感情移入できずまたその人物が見ているものも伝わってこなかったからでしょう。
超常的なホラー作品の怪異として、怪異がはっきりと観測・把握・肯定されるものと、そうでないものに分けることができると思います。
前者はその上で主人公たちが対峙するか逃げるかが話の本筋になりますが、後者は付かず離れずの距離感のまま話が進む。三津田さんの作品は後者のパターンも多くその上で比較的楽しめてはいましたが本作はその怪異の雰囲気だけで読み続けるには魅力に欠けました。
灯台守という職業にフォーカスを当てること自体は素晴らしいと思いますが如何せん説明がくどく読ませられる感が非常に強い。
もう少しコンパクトに纏められた中編小説としてならより楽しめたかもしれません。
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物理波矢多シリーズ、2作目。
前作は北九州の炭鉱が舞台であったが、今作は東北地方にある灯台が舞台。現代は船にGPS機能がついているし、灯台そのものの役割が薄れてきている上、灯台の無人化で灯台守という職業も消失しているとのこと。なので、今は存在しない灯台守がかつてどういう仕事でどのような暮らしをしていたのか、その実態をとても興味深く読めました。ただ、前作は怪奇譚でありながらも本格ミステリの面もちゃんとあり、謎に対してそれなりに合理的な解決が成されていたと思うのだが、今作は結局のところ怪奇譚は怪奇譚でしかなかった、という結末で終わってしまった。少しばかり謎解き的なところもあるけど、最後、灯台長の存在そのものを怪異譚で終わらせてしまうと、それまでの全てが非現実化してしまって元も子もないような。もう少し、合理性があっても良かったかな。
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敗戦後、困窮極める日本の復興を下から支えようとする物理波矢多が灯台守となって登場する。第一部は物理君が東北某所にある轟ヶ崎灯台に赴任になるも嵐で船が着けられないため、地元民が避ける白衣の森を通って灯台へ向かう。日本の灯台史、仕事を紹介しながら、物理君の周囲を白もんこという怪異がうろつく。そんな不気味な雰囲気の中、森で道に迷い憑き物筋と思われる祖母と孫が住まう白屋に一泊する。孫の白穂に魔除けのお守りを貰ってどうにか灯台へ辿り着くもそこには誰もいない。
第二部は灯台長入佐加の過去が語られる。第一部の物理君の話と奇妙な一致がある。この偶然の一致について物理君が合理的な推理をした後、現実とは思えない出来事が物理君を襲う。物理君が会話していたはずの入佐加は死んでおり、彼はただ一人で話していただけだという。
第一部の怪異が第二部では奇妙な偶然という謎となり、怪異について説明はできないが謎は解釈できるってことかな。第一部と第二部で灯台に関する説明がかぶっている、第二部灯台長はすでになく物理君の自問自答というのは後から取って付けた感があって、ちょっと作りが荒い気がする。
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三津田信三作品はホラーとミステリーを楽しめる贅沢な本が多いですが、このお話も怖さと謎解きがあってとてもよかったです。
前作(黒面の狐)はどちらかというと波矢多が事件に巻き込まれ、渦中の真ん中から見ているようなイメージでしたが、今回は波矢多の実体験がありつつも、先輩灯台守の聞き手にまわる部分が多かったとおもいます。
波矢多、安楽椅子探偵の素質もあるな…とか思いながら読んでました。
もうすぐシリーズ3作目が出るということなので、すごく楽しみです!!
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前作で炭鉱夫だった波矢多が、今回は灯台守として辺境の灯台に赴任するところから話は始まります。しかし、灯台に辿り着くまでが長い!しかも怖い!いつもの追い詰められ系の恐怖。そして、ようやく灯台に辿りついた頃には本の半分を過ぎ、さらに同じような体験をした灯台長の(怖い)話が続き、合理的な説明をつけ始めたのでちょっと安心したら最終的にさらに怖いという。前作の黒面が想像していたのと違い、そこまで怖くなかったので安心して読み始めたらこれか! 次作の赤はちょっと間に何か楽しい話を挟んでから心して読みます…。
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オカルトには伏線回収は必要無い!
必要無いのだが、少しばかり散らばり過ぎな気がしなくもないかな?
今回は前作とは違い、事件よりもオカルト要素がふんだんで、好みではあったけれど、消化不良気味。
『娘』のことは薄々分かっていたが、きっとそこには止むに止まれぬ事情があるんだろうと読み進めていった所が、自分の代わりの人身御供だとは…。
とんだネグレクトだった。
…そして誰もいなくなった。
この結びは好きだった。
時間の前後はあるものの次作には『彼』がカメオするらしい。 時代考証が同じなので期待はしていた!
そういったクロスオーバーも個人的に好み。
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いわゆる殺人事件は最後まで起こらずでびっくり。それでも最後にはうわっとゾクッとするような謎解きが展開されて面白かったです。灯台守というまたしても特殊な職業でしたが、戦前からどういう形態を経ていっているのかの説明辺りは素直に感心しながら読みました。