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成長や発展を常に是とし希求する社会の雰囲気に疑問があり、ふと手に取った本だったが良著だった。
昭和の高度経済成長期の只中にあっても、実は国民の中に豊かさを実感していない多くの人たちがいたことを、当時のアンケート資料などを用いながら明らかにしていく。
本の最後の方で紹介された座談会「人間にとって豊かさとは何か」は今から50年以上前に行われた座談会である。その中で公害を例に挙げて、問題点をこう説明した箇所がある。
「いま起こっている新しい貧困といわれている問題には累積化現象というのがありまして、原因が蓄積されてきてある一定の時点まで来ると爆発的に出るものが多いんです。(中略)だから、現代の時点で、未来を売るという場合にはよほど計算して、この国土という空間をこういう形で利用していいのかどうか、相当先まで考えていかなければだめなんですね。(中略)ところが、高度成長の過程ではそこまでを考慮しない。結局、目先のことだけを考えて、蓄積に次ぐ蓄積。」
私たちは未来を売り続けて、今のこの反映した世界を生活している。