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柚月裕子の小説を初めて読みました。
定年退職した刑事が関わった16年前の少女誘拐強姦殺人事件の犯人冤罪疑惑に苦しみながら、四国お遍路の旅中に起こった極似の少女誘拐強姦殺人事件。引退した身でありながら元部下の刑事に電話で自分の推理を教授して犯人逮捕に協力するのだが、それは同時に16年前の事件が冤罪であることを教唆することにもなる可能性があった。
主人公の定年退職した刑事神場智則60歳とお遍路に同行している妻香代子58歳の夫婦の絆に感動し、神場の指示を受ける元部下の刑事緒方圭祐32歳の捜査能力と正義感に感服する。
緒方は神場夫婦の娘の恋人でもあるため、神場の関わった事件が冤罪であることの可能性に苦渋しながらも腹をくくる。緒方の上司の県警の捜査1課長の鷲尾訓58歳は神場の2歳年下ではあるが神場の現役所轄時代の上司でもあり16年前の事件に神場と同じく冤罪疑惑に苦しんでいた。神場の推理に鷲尾も同調し、緒方に独自の捜査を命じる。3人が各々の責任と信念に基づき行動し、捜査陣を犯人逮捕に導く。
緊迫した捜査状況、進行状況に緊張し興奮している自分がいる。そして幼少時代の苦難を乗り越えて警察官になった神場の生い立ち、夫婦で地方の駐在勤務から所轄、県警と2人3脚で克服してきた夫婦の歴史、一人娘幸知の秘密、数々の物語が加わり感動の結末を迎える…。
柚月裕子の他の小説も読んで見たくなった。柚月裕子の小説、好きになりそうです。
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読み終わってもすっきり爽快、と言う感じにはならない作品。人を殺すという事を誰がどう裁くのか、どう許すのかという事をぼんやり考えさせられました。
主人公は非常に正義感が強くて、こういうお巡りさんが居たらなぁという人物。でもあまり家庭的ではないのでよく奥さんがあれだけ慕ってるなぁというのはちょっと謎。夫婦は難しい。
とは言え彼が全財産を被害者に渡して償うのはなんか違う気がする。個人の罪じゃないし、これは組織の罪だよねぇ?彼が情報を隠蔽したわけでも無いしなぁ~
というわけで、ん?と思う所はありましたが続きが気になってドーッと読み終えてしまいました。
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警察官を定年退職し、妻と共に四国遍路の旅に出た神場。旅先で知った少女誘拐事件は、16年前に自らが捜査にあたった事件に酷似していた。手掛かりのない捜査状況に悩む後輩に協力しながら、神場の胸には過去の事件への悔恨があった。場所を隔て、時を経て、世代をまたぎ、織り成される物語。事件の真相、そして明らかになる事実とは。安易なジャンル分けを許さない、芳醇たる味わいのミステリー。
近年話題になったノンフィクションに重なるのは、おそらく意図的なのだろう。しみじみしながら読了、
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警察ものと言っても、「捜査をして、犯人を捕まえる」だけではなく、人生を描いた、ずっしりと重みのある一作だった。
群馬県警を定年退職したばかりの元刑事が、妻と念願の四国八十八か所の遍路をしながら過去と向き合っていく姿が、現在進行形の幼女暴行殺人事件と絡めながら描かれる。
お遍路で偶々出会っただけの人達も含め、多くの登場人物たちの人生が、とにかくやりきれない。真面目に一生懸命に生きているだけなのに、苦難ばかりの人生を歩んできた人達。幼くして大変な恐怖の末に人生を奪われてしまった女の子たち、その遺族。そして、正義・倫理観と生活・家族の間で悩み苦しむ警察官たち。
「泣ける」という感想を書かれている方が多いようだが、私は全く泣けなかった。ただ、心にずしんと錘のように何かが残った。
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珍しく母に進められて。罪に目をそらさず真実を求めた刑事たちの後悔と葛藤。事件の終幕には、それでもどこか清々しさはあったのではないだろうか。終わった後にジーンと余韻が残る。また事件だけでなく、お遍路さんの物語もサイドストーリーとして楽しめた。
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16年前の幼女誘拐惨殺事件をずっと引きずって刑事を退職した神場、その間彼に笑顔は無かったのでしょうね。誠実な彼の生き方に随所で泣かされます。
奥さんが素敵ですね。刑事の妻です。
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読み終わって、良い意味で「無」。
後味悪く無いし、嫌な感じないし。
最後まで読んで、私はホッとした感じ。
モヤモヤ考えてたりすることもないなぁ。
内容は少し重いので、読み始め足取り重く…というスタートでしたが、文章自体は読みやすくスッと世界に引き込まれていき、後半は微加速して読めました。
2019/06/15読了
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1つの作品としては、刑事の背負う重みや苦しみがあり、最後に犯人も逮捕され、まとまっていて面白い。
でも私は被害者に感情移入しすぎてしまい、楽しみや希望がほとんどないこの作品に高評価をつけられなかった。
最初から最後までずっと重い。
刑事の妻として添い遂げる、主人公の妻。
この姿が美しいように描かれているけれど、リアルにこの女性が身近にいたら、離婚して幸せになってほしいとか、思ってしまうかな。それも1つの選択であって、添い遂げる姿を美化しすぎて欲しくないなぁ。。
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中盤すごいよくて、泣いたし、設定もよかったんだけど、結末が生き急いでる感あった。もうちょっと読みたかった。
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子供がいたら、心にグッとくる場面があっただろうなと思う。内容的には面白かったけど、いつもの柚月さんの小説とあまり変わらず、デジャヴかと思った文面が多かった。小説の題名と表紙に惹かれて読んでみたけど。。。。
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読みやすいのでズンズン読み進み
グングン引き込まれる
四国お遍路の出発とともに起こった事件
思い出される悔恨
出会った人たちの苦労と優しさ
それぞれの苦悩
警察組織を守るか
正義を貫くか
寺を巡るうちに心は過去の事件や
娘や妻への想いをさまよい
お遍路の終わりとともに
事件も終結する
このお話はフィクションだけれど
お遍路さんへの地元の人たちの気遣いや
道中の苦労は本物だと思うし
実際、観光ではなく
作中の人物のように
様々な事情を抱えて巡っている人もいるのだと思った
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お遍路を通して、物語が過去現在未来と
入り乱れて繋がって行くのが面白かったです。
主要人物が善人すぎるなと
思うところもありましたが、
想いと繋がりの大切さに触れた
一冊だったなと思いました。
八十八か所巡り、凄いしたくなった。
「孤狼の血」で、他作品、
食わず嫌いしなくてよかったです。
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読後も心に残る小説は、読み始めから読者の心を捉えて離さないところが絶対的な特徴と、改めて確信しました。
この物語も冒頭夢のシーンから始まり、他人のそれも話の中の架空なのに鮮明で読後もそれが頭にずっと残ったままです。
そのくらい、神場も悔恨を背負い続けて来たのだろうなと感じ取ることができる物語の構成力がすごいです。
警察ものが好物なので手に取った初読み作家さん。あれ?退職して夫婦でお遍路さんしてる…と思いながら読み進むと、その旅にも深い意味があり、過去の事件と退職後に起きた事件が結びついて警察組織に及ぶような問題が潜んでいることまで話が大きく展開していて引き込まれました。
サスペンスとして興味深く、また夫婦や家族の絆の物語でもあり、読んでいてぐっとくるものがありました。
四国巡礼の夫婦旅の様子が子細に描かれていて、一緒に旅しているような感覚に。
痛みがありつつも味わい深い警察ものでした。
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自分で店頭買いした本。
定年退職した元刑事が妻と共にお遍路を廻りながら、過去と現在の事件に再度取り組んでいく。
この元刑事の神場がとても実直で不器用な夫であり父でありでとても好ましい主人公になっている。
彼の抱える苦悩や悔いがあまりにも辛い。すぐに動いた彼は非難されるべきではないと思うのに、自分自身が許せないのだろう。
そんな彼を支える妻の香代子がつらい過去など感じさせない強くて朗らかで魅力的な女性だった。
元の部下や同僚たちの事件捜査と、神場たちのお遍路のなかで、娘の幸知のことや過去の神場の駐在所時代や刑事部配属などを振り返る様子が交互に展開される。
事件も過去も重い話が多いのに、お寺の話などが挟まることで少しほっとするような感覚もあった。
ワクワクというのとはまた違うけど、先を読みたくてたまらない、とても重厚な小説だったと思う。
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警察を定年退職した 神場。
自分の中にある後悔。その贖罪のために、巡礼に出る。
神場の妻は、一緒に巡礼をしたいという。
体力的に可能なのか?心配するが、妻は健気にも付き合う。
なぜ、夫が巡礼したいのか?を聞くこともせず、
その二人の道中の会話が、わずかであるが二人の性格を
浮き彫りにしていく。実に、明るく楽天的な妻に、
助けられて来た神場。そして、この巡礼の中でも、
妻の好奇心旺盛な行動が、神場を支える。
神場は、悪夢にうなされていた。
16年前の少女殺人事件の被害者純子ちゃんの
「オウチニカエリタイ」という夢を見る。
その事件は、冤罪であったかもしれない。
神場は、再捜査を訴えたが、上層部から却下された。
その時逃げたという後悔がある。
巡礼が始まった時に、同じような手口の事件が起こった。
年下の上司鷲尾も同じような後悔があった。
部下の緒方は、神場の娘と付き合っていた。
神場は、それを賛成していなかった。
目撃も少なく、捜査は、困難を極めた。
そして、16年後ということから、犯人のプロフィール、
白いトラックをどう痕跡をなくしたのか?
ということを、定年退職した神場が、仮説を立てる。
それは、16年前の少女殺人事件に関連していた。
刑事を辞めても、刑事であることをやめない。
それは、警察組織を守るよりも、同じような犯罪が
起こらないことが想いとなる。
鷲尾、緒方にも神場の想いが伝わる。
ふーむ。実に重いテーマで、自分の立場を
根底から覆されようとも、何のためにかを追求する。
神場の妻 香代子が、実に素晴らしい。