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旅行に行けない今だからこそ、の海外事情紹介コラム
2021/02/26 17:03
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投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は経済評論家の藻谷浩介氏が各国の”首都”を切り口にその国の状況を伝える「藻谷浩介の世界『来た・見た・考えた』」(毎日新聞WEB版に掲載)の連載を単行本化した第2弾です。
ビジネスで海外に行く事がない限り、私たちが外国を訪れるのは観光目的に限定されることがほとんどです。観光地を訪れたからと言って、その国の事が全て理解できるわけではないですが、現地に行かないよりは何倍も理解が深まるのは事実です。藻谷氏も本文で「『首都を日帰りや一泊でチラ見したところで何がわかるものか』という批判はあって当然だし、著者もそう自問自答している。それでもチラ見するのと一度も行かないのでは全く違う。”成田空港で国際線から国際線に乗り換えた外国人が、2時間だけ日本に入国して成田山新勝寺に立ち寄った。そして、それだけの観察から日本を語っている”というような覚悟と気合で街を読み取っている」と述べられています。
本書で登場するのは、貧困国としてヴィエンチャン(ラオス)、ディリ(東ティモール)、アスンシオン(パラグアイ)、有数の大都市ニューヨーク、民族や言語が入り乱れ複雑な様相を呈する旧ユーゴスラビア諸国として、ザグレブ(クロアチア)、サラエヴォ(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)、ポドゴリツァ(モンテネグロ)、ベオグラード(セルビア)、スコピエ(北マケドニア)、プリシュティナ(コソボ)、ティラナ(アルバニア)、ヨーロッパの極小国として、ルクセンブルグ、アンドラ公国、モナコ、そして中東のベイルート(レバノン)、アンマン(ヨルダン)と、普通の観光ならまず訪れることの無いような街が次々と登場します。
単なる旅行記ではなく、経済コラムニストの藻谷氏が自身の目と耳で感じた情報を分析し、その国の経済が何をもって成り立っているのかという視点でまとめられた情報量満載の一冊です。
藻谷氏の分析・発言にはいつも客観性があって、私は非常に好感をもっているコラムニストの一人なのですが、その藻谷氏による世界の様々な国の現状リポート、自分がその町を歩いているような臨場感でした。是非、第1弾の著書も読みたいですし、第3弾が出版されれば、必ず読もうと思います。
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【歩くとはじめて分かる「本当の世界情勢」】再開発が進む途上国で起きている格差拡大の実態から「ヨーロッパの火薬庫」の現在まで、世界のリアルから日本の未来が照射される一冊
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著者の藻谷浩介(1964年~)は、日本政策投資銀行勤務を経て、日本総合研究所主席研究員を務める、地域エコノミスト。2010年発表の『デフレの正体』は2011年新書大賞第2位となり、販売部数は50万部を超えている。
本書は、著者がこれまでに訪れた世界105ヶ国での見聞・考察を、2017年4月から毎日新聞社のインターネットサイト「経済プレミア」に週刊連載している、「藻谷浩介の世界『来た・見た・考えた』」の書籍化第2弾。第1弾は、毎日新聞社から2018年2月に発刊された『世界まちかど地政学』。(第1弾の後、続編を期待していたのだが、早速出版されて嬉しい限り)
本書に収められた国・都市は、「途上国問題」としてラオス、東ティモール、パラグアイ、「都市問題」としてニューヨーク、「民族問題」として旧ユーゴスラビア(クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、モンテネグロ、セルビア、北マケドニア、コソヴォ)、アルバニア、「国民国家の問題」としてルクセンブルク、アンドラ、モナコ、ニース、「宗教問題」としてレバノン、ヨルダンである。
著者の旅に対するポリシーは極めて明快で、「観光地の前にまずは首都へ」、「興味は名所旧跡ではなく、その国のいまの社会状況にある」、「「首都を日帰りや1泊でチラ見したところで何がわかるものか」という批判はあって当然だし、筆者もいつもそう自問自答している。それでもチラ見するのと、一度も行かないのとはまったく違う」、「書斎で膨大な数の本を読んで知識を得る人がいるように、筆者は世界の無数のまちかどで、現場の光景を読み取りつつ、「この世界はどのように出来上がってるのか」ということを考え続けてきた」というものであり、本書もそれに則った内容・記述になっている。
私は著者と同年代の会社員で、これまで公私で40ほどの国を訪れる機会があったが、もちろん美しい自然や歴史的建造物を見る楽しみはあるものの、一方で、歳を重ねるごとに、“世界各地の人間社会”がどのように存在し、そこで人々はどのような生活を送り、更に、それを我々はどのように捉え、考えるべきなのか、に強く関心を抱くようになっており、著者のアプローチ方法には強く共感する。(私は一昨年イスラエル&パレスチナを一人旅したが、近いうちに旧ユーゴを巡りたいと思っている)
観光ガイドとも、紀行エッセイとも、ルポルタージュとも異なる視点で、今知るべき世界の一部を垣間見ることのできる面白い一冊である。
(2019年4月了)
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日本は、経済の発展した、治安が大変良い、民族や宗教の衝突がない、海に囲まれ言語も統一され「国とは何か」というようなことについて考える必要もない場所です。ですがそれゆえに、日本の中だけでものを考えていると、世界の国々が何に悩んでおり、どうしようとしているのかがわからなくなってしまうように思えます。
日本は明日にでも食べていけなくなるという日本人の不安を聞けば、世界の人たちは、「こいつら狂っているのか?」と思うだろう。日本ほど真面目な国が食べていけなくなるのなら、他の200カ国のほうが先に破滅するよというのが、世界の人の常識的な反応だ。
ベトナム人は稲を植える。カンボジア人はそれを見ている。ラオス人は、稲の育つ音を聴いている
欧州50カ国の違いを把握するには、EU加盟か、シェンゲン協定加盟か、ユーロを使用しているかの3点を確認することが有用だ
サラエボオリンピック オーストリア選手団に対して暴力をふるう地元観客がでた 旧ユーゴのうちスロベニアとクロアチアを多年支配した国だから
セルビア人 14精機からオスマン・トルコに支配されつつも、東ローマ帝国時代からの正教を奉じて500年のも反抗を続け、19世紀初頭に自力で事実上の独立を回復した尚武の民だ。使用する文字も、東ローマ帝国時代のブルガリアで発明され正教圏に広まったキリル文字である。
他方でクロアチア人は、トルコの支配を免れたがオーストリアのハプスブルグ家に多年支配された結果、カトリック教徒となって中欧の文化に同化している
セルビア人とモンテネグロ仲が良かった
西欧のキリスト教国は、カトリックを奉じる神聖ローマ帝国の首都ウィーンを、トルコによる2度の包囲から死守するのには協力したが、正教を奉じるセルビアの苦境には、結局十全の力を貸さなかった
ルクセンブルグ 45%が外国籍 シンガポールと似ている 街頭ですれちがうのは白人ばかり。仏英独といった多言語を操ることへのハードルが、大陸欧州出身者でないかぎり高いからか
ちなみに欧州にさらに10年先んじて、先進国で最初に生産年齢人口が減少を始めた日本では、アジアらかの人工流入圧力はずっと低い。ここ数年の間に韓国、台湾はもとより中国やタイでもばたばたと、日本に遅れること20年あまりで、同じく生産年齢人口減少という事態が始まっているからだ。つまり欧州にとっての中近東やアフリカに該当する人口爆発地域が、もう周辺にはあまりないのである
日本は低賃金労働に依存するタイプの工場を東アジア、東南アジアに移転した。そのことが移転先の経済発展を促進し、生活水準を向上させて出生率を下げ、地域紛争や内乱をも抑え、結局日本への人口流入圧力を低減する結果となった。
それに比べて、中近東やアフリカを発展させなかった、欧州や、メキシコやカリブ海地域を発展させなかった米国は、移民の強い流入圧力に晒されている
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世界には、名前すら知らない国がまだいくつもある。ましてや、それらの国を実際に訪れる機会など、普通の生活をしている人にはほとんどない。
観光地などには目もくれず、ひたすら訪れた国の街の中を自らの足で歩き回ることで、その国の来し方行く末を展望しようとする筆者の視点は、その国を経由しつつ、自らの故国である日本の来し方行く末に注がれているのである。
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中東のレバノン、ヨルダンの話が面白かった。
周辺のイスラエル、シリア情勢の影響もあって危険だと勘違いしていた。
これをきっかけに中東のパレスチナ、シリア内戦、クルド人、ISについても改めて勉強するきっかけになった。
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羨ましい生活かも~ヴィエンチャン・東チモール・アスンシオン・ニューヨーク・ザグレブ・サラエヴォ・ポドゴリツァ・スコピエ・プリシュティナ・ティラナ・ルクセンブルク・アンドラ・モナコ・ニース・ベイルート・アンマン~東大卒でコロンビア大学院修了し、日本政策投資銀行の参事役を経て、日本総合研究所調査部主席研究員
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デフレの正体や里山資本主義と言った国内に目を向けた一冊ではなく、世界に焦点を合わせた一冊。著者の世界旅行からその国で感じたこと宗教や歴史と言ったものを語る。
総じて感じたのは発展途上国ほど、外国資本の流入もあり貧富の差が激しくなったり、ひとが入らないショッピングモールを作り、国としての見かけの大きさをアピールしている感があることでした。
旧ユーゴスラビアの国々の話では、国家が消滅することの意味を考えさせられました。またルクセンブルクの小国だが、ひとりあたりの所得が世界一の国の生活が地味に見えたけど、以外と富裕層ほどそんなものかと。
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本書は経済評論家の藻谷浩介氏が各国の”首都”を切り口にその国の状況を伝える「藻谷浩介の世界『来た・見た・考えた』」(毎日新聞WEB版に掲載)の連載を単行本化した第2弾です。
ビジネスで海外に行く事がない限り、私たちが外国を訪れるのは観光目的に限定されることがほとんどです。観光地を訪れたからと言って、その国の事が全て理解できるわけではないですが、現地に行かないよりは何倍も理解が深まるのは事実です。藻谷氏も本文で「『首都を日帰りや一泊でチラ見したところで何がわかるものか』という批判はあって当然だし、著者もそう自問自答している。それでもチラ見するのと一度も行かないのでは全く違う。”成田空港で国際線から国際線に乗り換えた外国人が、2時間だけ日本に入国して成田山新勝寺に立ち寄った。そして、それだけの観察から日本を語っている”というような覚悟と気合で街を読み取っている」と述べられています。
本書で登場するのは、貧困国としてヴィエンチャン(ラオス)、ディリ(東ティモール)、アスンシオン(パラグアイ)、有数の大都市ニューヨーク、民族や言語が入り乱れ複雑な様相を呈する旧ユーゴスラビア諸国として、ザグレブ(クロアチア)、サラエヴォ(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)、ポドゴリツァ(モンテネグロ)、ベオグラード(セルビア)、スコピエ(北マケドニア)、プリシュティナ(コソボ)、ティラナ(アルバニア)、ヨーロッパの極小国として、ルクセンブルグ、アンドラ公国、モナコ、そして中東のベイルート(レバノン)、アンマン(ヨルダン)と、普通の観光ならまず訪れることの無いような街が次々と登場します。
単なる旅行記ではなく、経済コラムニストの藻谷氏が自身の目と耳で感じた情報を分析し、その国の経済が何をもって成り立っているのかという視点でまとめられた情報量満載の一冊です。
藻谷氏の分析・発言にはいつも客観性があって、私は非常に好感をもっているコラムニストの一人なのですが、その藻谷氏による世界の様々な国の現状リポート、自分がその町を歩いているような臨場感でした。是非、第1弾の著書も読みたいですし、第3弾が出版されれば、必ず読もうと思います。
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なかなか行けない国に弾丸旅行で訪れ、首都を歩いてその国の経済、社会について考えるという著者。たしかに数時間ほど首都を歩いたくらいではその国のことをわかるはずもないが、そこは著者も認識したうえで、自身のエコノミストとしての知見を活かしながら、さらにネットやガイドブックでその国の概況を調べているので、本書に書かれている内容は、かなりリアルで鋭いものになっているように感じた。
本書は第二弾ということで、ラオス、東ティモール、パラグアイ、ニューヨーク、旧ユーゴ諸国、アルバニア、ルクセンブルク、アンドラ、モナコ、ニース、レバノン、ヨルダンが紹介されている。
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「地域エコノミスト」という肩書きを持つ著者による、目の付け所がフツーとは違う旅行記の第2弾。
旅に出るのも難しい昨今、こういった本でイメージを膨らませるのも楽しい時間でした。
本著は旅行記ながら、5章のそれぞれにテーマがあり、例えば第1章は「途上国問題」で、ラオス、東ティモール、パラグアイの3か国をめぐる中で、これらの国が今後成長できるのか?を考えています。
著者は街を歩きながら「お金の出元、出先」や「格差」その他の制約条件を見つけ出していきます。確かに、ODAでお金が入ってきても、海外ブランド品を買って流出させるだけなら成長には繋がらない訳で、国家としてどうしたいのか、何をコアにするのか、考え抜いて実行していくことの重要性を感じました。
ロジ的なところに目を向けると、滞在時間短すぎ!というツッコミはせずにいられません(笑
旧ユーゴ旅行では、モンテネグロ⇒セルビア⇒北マケドニア⇒コソヴォの4か国の首都をたった1日で回るという無茶苦茶な旅程があり、北マケドニアの首都は「飛行機で到着後、バスで街に出て、30分後に出るコソヴォ行きのバスに乗車」という扱い…。
著者も正気ではないという表現を使っていましたが、時間をかけても知見が得られないコトは結構あるので、これはこれで旅のやり方の1つかなと。。(1人旅で「ヒマになる」というのは結構な悲劇ですし…)まぁ、行かなくても8割方の原稿は埋められそうですが、現場に行くことがスタート地点である著者はそれを絶対にしないんだろうなぁとも思いました。
ただ、短時間だと「天気」と「曜日」に印象が大いに左右されそうです。
ちなみに、本著の内容とは関係ないですが、著者はプライマリー・バランス論者のようで、本著の中には2か所ほど日本の財政収支不均衡を嘆く記述がありました。この問題も勉強しないとなぁ。。
何はともあれ、いつかまた(できれば遠くないうちに)、異国での街歩きやふれあいができることを祈りつつ。。
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おもしろ…
世界のいろんな地域を、まちかどを、そこに暮らす人々のいまを、歴史を絡めながらおしゃべりしてもらっているよう。
著者の知識が膨大すぎるので難しい箇所もたくさんあるが、それもまた「おしゃべり」の一興、みたいな。
『デフレの正体』の頃から、世間の空気に惑わされず自分の目で見て考えたことから自分の論を造り出す桁外れにスマートな脳みその持ち主、という著者のイメージは変わらない。
そこに、地理オタク乗り物オタクだったり旅先でパソコンが壊れて絶望したり「ご機嫌に歩いていると~」みたいなお茶目な描写が突然現れたりして、かわいいおじさん的なイメージがプラスされつつある。
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旅をしているような気分で読める、好奇心を満たしてくれる本。
ただ、一カ所に長く留まるような旅ではなく、次々と移動するので、深く味わうというよりも、テーマをもって確認してそれを満たすという「社会人旅」という感じ。象徴的なのは、空港ラウンジで一息。ビジネスクラスでの移動など、バックパッカーというよりも取材旅行だ。
例えば、途上国の成長とそこに潜む問題点の探求。ラオス、東ティモール、パラグアイ。治安が悪かったニューヨークのサウスブロンクス、今はどうなったのか。バルカン半島の複雑な歴史と現状を、旧ユーゴスラビア諸国とアルバニアについて。ルクセンブルクの経済と社会。レバノンとヨルダン、戦争と平和。
インドシナ半島内陸の要地としてのラオス。そこに中国資本がワールドトレードセンターを建設。ラオスでも日本でも農民や職人が確実に担っていた経済的な付加価値の生産機能を失って、単にワークシェアリングの一手法になっていないか。会議や店先に所在なげに座る忍耐力の対価を得ているだけで、実際には、産業用ロボットや化石燃料、ODAが付加価値を生んでいるだけでは、と著者。ブルシットジョブ。
経済の事は、実地で感じろ、という事なのだろう。短期間でその目的が果たせるのかは分からない。確証性バイアス等の主観も入るだろう。しかし、読書をして思ったのは、やはり自分の目で見てみたいという事だ。文字で読むよりも、言葉にならない視覚的情報、空気感を味わう事の意義は大きい。