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読み進めていくにつれて謎解きをしてゆくようなワクワク感がよかったです。ただ、けっこう強引に論を進めているような感じは否めない。
そのため、あまり真に受けないようにおもしろ半分程度で読みました。その程度で読む分にはとても良かったです。
あとがきに「今回は、論理の詳細な隙間を埋めるだけの紙幅がなく、論理的資料的保証に頼らない主観を提示している部分も散見されると思うが、ご容赦願いたい」と書かれていたので、もしかしたら別の本や論文ではちゃんと書かれているのかもしれません。
本筋の部分の要約は次のようなもの。
・かつてヤマト朝廷によって地方豪族が討伐されたが、その討伐された豪族たちが「鬼」と扱われたと考えられる。
・その痕跡が各地に残る「鬼祭り」である。ナマハゲやねぶたなどが「来訪者の祭り」としてユネスコの文化遺産に登録されたが、それらは実は来訪者などではなく、元からの土俗神である。あえていうならヤマトこそが来訪者であって、ヤマトに鎮圧された「まつろわぬ民」が「鬼」とされたのである。
・鬼に擬せられた者たちは、あたかも悪鬼であったから退治されたかのように伝えられているが、実際にはヤマト朝廷に従わない者への武力行使を正当化する大義名分のために創られた伝承だった。
・また、ヤマト朝廷は、外から弥生人がやってきて元々住んでいた縄文人を制圧して建てられた国だと考えられる。そのとき東へ追いやられた縄文人が蝦夷と呼ばれ、西へ追いられた縄文人は熊襲(くまそ)や琉球となった。
・つまり、この本で「鬼」と呼ぼうとしているのは、漂着外国人や渡来人、犯罪者を除けば「縄文人」のことである。
他にも、江戸城鬼門の守護とされている寛永寺は実際には鬼門軸から30度ずれており、風水断ちを防ぐためのダミーとなっているという話や、桃太郎ではなぜ猿・雉・犬を仲間になるのかという話なども面白かった。