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合田シリーズ。
とりあえず読み切った。
いろいろな人物からの視点で過去にあった未解決事件についてを語る体裁。
新聞で読んでいた人はいらいらしなかったのかなぁと思う。
合田も加納もおじさんになったというか老境に差し掛かってきたのだなーと時間の経過を感じるところが変に現実にリンクしていてリアル。
結局犯人はわからずじまいでなんだかなーというかすっきりしないというか。
事件解決が本題ではなく当時の風俗や社会的な倫理を書きたかったのかなぁ?
時間というのは不可逆的なものなので事件捜査という時間との戦いに負けちゃうと行くか後から物的? な証拠が出え来てもなかなか実証されないし。
ただ当時の人たちの感情に対して寝た子を起こすことになる。
刑事もお仕事なんだけど被害者の家庭も被疑者の家庭も関係者全員がなんか不幸。
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この小説の舞台はまさに自分の生活圏である。
東小金井駅から野川方向への道、また身内が住んでいるのも多磨駅の近くだ。
小説にたびたび登場する軽飛行機は、想像以上に低く飛んでいるため、爆音甚だしく、相当に五月蠅い。
高校生だった登場人物たちが自転車ですれ違ったJAは最近なくなって更地になり、近くにあった味も佇まいも昭和半ばといったラーメン屋もそれにひきずられるように店を畳んだ。
そこに住んでいる割には、というかそこに住んでいるからこそ目もくれない街の風景がこの作品では雰囲気のある描写で表されておりまるで違う街のようで、驚きつつもなんだかうれしい。
しかし、これだけ詳しい描写なのだから著者はこの辺りに足しげく通ったと思われるのだが、まるで見かけなかった(笑 仮にお見かけしたとしても、ぼんやり暮らしているただの一生活者たる自分が高村薫さんだと気づくわけもないだろうけど。
それにしてもこの著者、「」を使わない文体になってから、小説にさらに凄みと鋭さが出てきたなぁ。謎解き色のやや強めな『マークス~』も『レディジョーカー』もいいが、『照柿』をこの文体で読んでみたいものだ。
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1人の女性の死により、未解決のままだった12年前の殺人事件の再捜査が始まり、平穏だったはずの周囲の人たちの生活に波風が立ち始める。
すぐに風化しそうな地味な事件であっても、家族や友人など関係者たちにとってはその後の人生を左右しかねない大きな問題であるはず。
複数の視点で俯瞰するように淡々と語られるこの作品は、過去の事実を少しずつ掘り起こし核心に迫りはするものの、中心に描かれているのは残された人たちのその後の人生だ。何らかの形で事件の余波を受けた人たちは、それぞれの悩みを抱えて生きている。そこにスポットを当てているため、シリーズものとはいえ、単純な犯人探しのミステリーとは一線を画した趣がある。
個人的には、身近な場所が舞台となっているため、公園や駅周辺のショップなどの施設は、ほとんど訪れたことのある場所ばかり。あまりにも具体的な映像が目に浮かびすぎて、この書店は今はもうないとか、その場所を訪れたときの自身の思い出がオーバーラップするなど、ストーリーとは関係のないところにたびたび意識が飛んでしまった。
作品の舞台になじみがありすぎるのも、善し悪しかしら。久し振りにレモンドロップのケーキが食べたくなった。
追記
年明けに吉祥寺のレモンドロップのレモンパイを食べた。甘酸っぱくて懐かしい味。
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2020年最初の作品。合田シリーズでもありますが、中心人物というよりは登場人物の一人とした方がいいのかも知れません。一人の女性の殺人事件から12年前の未解決の殺人事件がクローズアップされてきます。その事件が解決されるのではありませんが、当時事件の周囲にいた人々の日常に大小様々な波紋を投げかけます。その描写が実に見事で読み入ってしまいました。合田さんも58歳。初登場の「マークスの山」では30代だったんですね。私も歳を取るはずだわ(^^;;
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合田シリーズ最新刊。
僕はたぶん「レディ・ジョーカー」しか読んだことないのだけど、さすが高村薫さん、と思った。とても重厚。
続きが知りたくて早く読み進めたいのに、重力が強くてそれが許されない感じ。しかし、不快ではない。
じっくり小説の世界と向き合うような読書となる。
12年前、元中学美術教師が東京郊外の公園で殺害された事件。合田が担当したが未解決のまま迷宮入りしていた。
風俗店で働く朱美が同棲相手に撲殺される事件が起きて、犯人の男が、朱美が12年前の事件現場で拾った絵の具を持っていた、と供述することから、朱美が重要参考人として浮上する…
事件を取り巻く複雑な人間関係。交錯する12年間の様々な人生を多視点で描き出す。
― 人は皆、説明できないことの説明を探して生きているのかもしれないねえ…
真弓が忍に言った言葉。
この小説の重要なテーマを一言で表していると思った。
小説はそれぞれの登場人物の「心」を掘り下げ、事件そのものの輪郭は浮かび上がっていくのだが、「我らが少女A」朱美の「心の闇」の正体がなんだったのか?そこだけ真空で謎として残った感じがした。「闇」がない怖さ、と言ったところか?
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合田雄一郎シリーズ。
マークスに感動し、レディで格差社会を痛感、照柿では歩留りと色作りを学び、太陽を曵く馬の仏門苦行に耐えきれなかった読者として、期待と不安を持ってページを開いた。
今度は何かと思ったら、問題を抱えて苦しみながらも暖かい、家族の話であった。
ロクでもない男に殺された女性が、生前持っていたという、12年前の殺人事件現場で1色だけ見つからなかった、被害者の絵の具。
そこから未解決事件が動き出し、彼女の周りの人間が警察とからみ、双方が苦くも甘い記憶を掘り起こしていく。
派手な謎解きがあるでもなく、静かに静かに進む物語。奇妙な読後感を抱かせる、シリーズ異端の作品でした。合田は還暦に近づき、かなり丸くなりました。
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久しぶりの合田雄一郎で、それがまずうれしい。どんどんと読み進めていきたいのに、思うようには進まない。思ってたより重厚だった。そもそもミステリーと思って読み始めたし。
2人死んでしまったが、それでも暗くはない終わり方で、それも予想外だった。
今後もどういうジャンル?であれ、合田シリーズ何作も書いていただきたい。
繰り返しになるが、合田雄一郎にまた会えて良かった。
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なんだか不思議な読みごこち。
ずっとカメラでこの事件を撮影でも
していたかのような。
雰囲気のあるミステリー。
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高村薫先生の作品であることで購入。
電子書籍非対応のため、久々に単行本で。電車移動には重すぎたかな(笑)
テンポも良く、初めのページに登場人物説明もあり、スイスイ読めた。
合田さん、年齢を重ねたせいか、丸くなったな。
武蔵野とか多摩は、全然知らない土地なのに、自分自身の気持ちに響いた。原風景というか。
今作も、寄り添えそうな人物は居なかった。少女Aもそうだ。自分の娘だったら、距離を置いていたかも。
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ずーっとトーンが同じ。
事件が少しずつ少しずつ動く。実際の事件解決ってこんなかんじなんだろうな。
様々な登場人物の目線から語られ、日常のなかに事件がある感じ。時々事件にひっぱられ、また日常に引っ張られ、という不思議な感じのする作品だ。
合田と加納の距離感が好きだ
2020.2.16
19
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+++
一人の少女がいた――
合田、痛恨の未解決事件
12年前、クリスマスの早朝。
東京郊外の野川公園で写生中の元中学美術教師が殺害された。
犯人はいまだ逮捕されず、当時の捜査責任者合田の胸に、後悔と未練がくすぶり続ける。
「俺は一体どこで、何を見落としたのか」
そこへ、思いも寄らない新証言が――
動き出す時間が世界の姿を変えていく人々の記憶の片々が織りなす物語の結晶
+++
著者の作品はあまり読んだことがなく、合田シリーズも初読みである。だが、初めてにして、あっという間に惹きこまれてしまった。12年前の水彩画教師殺人事件の周りにいた人々の、そのころの在りようと、12年経って、年齢も立場もそれぞれ変わった現在になったからこそ、新たに思い出される当時のあれこれ。捜査中には目も止めなかった人々の動きの中にある真実。などなど何もかもが、本作の魅力のひとつでもある武蔵野の自然の描写の細やかさとともに、凍える冬の朝の川霧の向こうに隠され、もどかしい思いに駆られるしかないのである。どうやら事件の核心にいるようであり、さまざまな意味でだれからも注目されていたにもかかわらず、それから12年後に同棲相手に殺され、話すこともかなわなくなり、いつからか少女Aと呼ばれるようになった上田朱美の胸の裡こそが、最後までいちばんよくわからなくてもどかしい。起こったことそのものよりも、そこに行きつくまでの感情の動きに、どうしようもなく興味をそそられる一冊だった。
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ふー、ひさしぶりに長編小説読める幸せ…。
物語の力でぐいぐい引っ張られる小説もいいけど、なにより文体がしっくりくるものって、長い時間をかけて一つの世界にどっぷり耽溺する快感を味わわせてくれますね。そういう意味で高村薫は自分にとっては外れなしの作家。
今作では、合田雄一郎は57歳で警察大学校の教授になっていて、12年前の未解決殺人事件というミステリらしき謎はあるものの、すべては多摩という小さな町に暮らす人々の心を揺らす小さな嵐として過ぎ去るだけ。小さな世界をめぐる、どちらかといえば鬱々とした話だ。人間ドラマというよりも、まるで互いに言葉を交わすことのない虫たちの世界をじっとのぞき込むような。しかし全体を見通して謎を解き明かす神はおらず、刑事たちも、主人公も、あるいは読み手もまた、どうしようもない突風に翻弄される虫たちの一匹にほかならないのである。
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代表作は、映像で観ただけだったので、今回が高村薫作品初読み、初読了。
さすがに重厚感はあるが、大きな展開があるわけではなく、それぞれの登場人物の行動、心理描写が淡々とかつ丁寧に綴られていて、自分も彼らが暮らす街の住人になった気持ちで読み進んでいく。すっきり事件解決とはいかないが、親子、夫婦、恋人、友だち…リアルな人間関係とは、そういうものなのだと思う。
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世界感はそのままだが、合田さんの活躍、というより出番が少なく残念。期待しすぎたか。
27歳の上田朱美が同棲中の男に、些細なケンカから殺された事件から、12年前の未解決事件が動き出す。当時の関係者がそれぞれ、何かを思い出そうとしたり、取り戻そうとしたり、見つめ直そうとしたり。
12年前のクリスマス、地元中学校の美術教師・栂野節子が、多磨霊園近くの野川公園で亡くなった事件だった。上田朱美を殺害した同棲中の男が、野川事件の現場で朱美が絵の具のチューブを拾ったと話していたと明かし、野川事件の再捜査が始まる。
上田朱美は女優志望で目立つ存在だったが、高校1年生のときに非行に走った。そして野川事件で少女Aとしてマークされていた。被害者の美術教室に通って、同い年で違う学校に通う、栂野節子の孫・真弓と知り合っていた。
小野雄太は、上田朱美の幼なじみ。今は多磨駅駅員で、優子と結婚間近。
合田雄一郎は、多磨駅の近くにある警察大学校で教えている。東京高裁判事の加納祐介は、合田の義理の兄。当時の捜査主任だった合田は、当時の関係者の足取りを記したダイアグラムを使い、事件を見つめ直す。
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12年前の未解決殺人事件が、周囲のさまざまな人に及ぼす影響を丹念に描いた小説です。結局、真相はどうだったのか、それぞれに変わったこともあり、変わらなかったこともありながら、みんな自分の人生を精一杯生きていきます。結局、人はそうやって一日一日生きていくしかないのだなと思いました。