紙の本
新聞連載だったので
2022/01/21 16:13
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
新聞連載だったからだろうか、少しずつ話が進み、高村薫さんの他の作品のようなダイナミックな展開に乏しい気がした。引き込まれるのだが、結局、最後まで解はなく、もやもやする。
紙の本
今の時流では無いかもしれないけれど
2019/09/29 10:05
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投稿者:ねこまるた - この投稿者のレビュー一覧を見る
事件にまつわる人たちの思いが丁寧に描かれています。世間では些細ですぐに忘れ去られてしまう事件が、それでも関わった人たちにどのような影響を残していったかが淡々とした文章で書かれていて高村薫先生らしい本だと思いました。
ハッキリとした起承転結がある訳では無いのも、好みが分かれるところだと思います。
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題名の“我ら”とはいったい誰を指すのかと疑問におもいながら、待ちに待った合田シリーズ最新刊のページを開く。そうしてじっくりゆっくり読み進めたのち「ああ、そういうことか」としっくりきた。これ以上ない題名だとおもう。12年も前の事件をどういったかたちで進めていくのかが判ってからは、円熟した髙村さんの文章を堪能した。これは犯罪小説であり家族小説であり青春小説でもある、とても多面的な読み方ができる作品だ。還暦まであと3年となった合田さんの人間的落ち着きぶりにも驚いたが、髙村先生の分け隔てない描きぶりにも感嘆した。
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殺された女は、昔の未解決事件と繋がりがあるのか。
当時の記憶を辿り、見逃していた事はないのかと、再度周辺を探ってみる。月日が経つたこと歪めないが、その時見落としていた人間関係に気づかされる。
老齢刑事の忸怩たる思いを感じる。
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スリリングなミステリーを期待すると肩透かしになるかもしれない。
人は誰も他人の人生を知らず、自分の過去さえも記憶の迷宮の中から取り出せない。
合田は有能だが完璧な刑事ではない。
作品の中で合田は登場人物の一人に過ぎず、事件の真相を見ようと行動するだけだ。いわば方向だけを持つもので、捜査を進展させる力を発揮するでもない。彼は人間の無力感を体現しているかのようだ。
それぞれがそれぞれに対して持つ印象と印象が食い違い、串刺しになった事実から真相を想像するしかない。
定常を象徴するような武蔵野という背景が彼らをより立体的に見せる。
事件が主役なのではなく、その周辺の人々が主役である。
謎を謎のまま愛せる人に読んでほしい。
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池袋のアパートで一人の女が同居する男に殺された。男の供述から、女・上田朱美と12年前の野川公園で起きた老女殺人事件との関わりが浮かび上がり、迷宮入りした事件と共に止まっていた関係者たちの時間がゆっくりと動き出す。
当時事件の捜査本部にいた合田雄一郎もその一人。なんと齢57歳になり、今は捜査畑を離れのんびりと(笑)警察大学校で教鞭をとっている。今までの合田シリーズと違うのは、雄一郎が捜査本部の刑事としてではなく、かつて捜査し迷宮入りした事件の当事者として、特命班の継続捜査に協力するという立場。
朱美(少女A)は野川事件当時15歳、合田をして「こちらが30年若かったら、間違いなく惚れていただろう」と言わしめるほどの少女(合田相変わらず惚れっぽい)。事件が動き出したことで、朱美の当時の同級生たち、家族、そして合田も大きな時のうねりに巻き込まれていく。
何より美しいのは、言葉による武蔵野の情景描写。髙村さんがかつて通った大学が近く、武蔵野への思いは強いと語るだけあって、季節折々の描写は眼前に景色が立ち上がるほど。
そして、関係者それぞれの些細な日常を描きながら、そこに潜む諦めや寄る辺なさといったものが、「柔らかな産毛に覆われた、地下の室の真っ白なウドを思わせる陰気な美しさ」とか「生湯葉のような薄い皮膚」といったユーモラスかつ絶妙な比喩表現をもって語られる文章そのものに心酔。
髙村さんならではの乾いた硬質な文体は健在だけど、マークスから二十数年、若かった合田も57歳になり彼の思考過程にも変化が。「合田は私である」と著者自らが言うように、それは髙村さん自身の変化なのか文体も以前ほどの尖った印象は感じられない。
盟友加納祐介との仲にも病気や老いといった要素が入り込み、確実に年を取った二人のこれからも気になるところ。
マークスのようなミステリー色や、照柿、冷血のような雄一郎の内面世界の彷徨を期待すると肩透かしの作品かもしれないが、雄一郎vs.犯人という構図ではなく、雄一郎も含めた事件関係者たちの人間そのもののを描くドラマとして、私自身非常に馴染みのある情景と相まって、しみじみと心に染み入る作品でした。
ところで、警大教授になったから流石に革靴かな~と思っていたら、219頁の挿絵のスーツに白いスニーカーで自転車に乗る雄一郎らしき姿に思わずニヤリ。
そう、この作品は、新聞連載時の挿絵がところどころに差しこまれるのも魅力です。
ところで、雄一郎が警視庁に異動になったということは、次作を期待していいんですよね?
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合田雄一郎シリーズ7年ぶりってことに驚愕。ええっ?もうそんなに経つんだ…。
読み始めて、あれ?合田シリーズってこんな風に時系列に沿って淡々と事実を積み重ねていく感じだっけ?と。
紙の本で一気に読めるからいいけど、これ新聞連載で読んでいたヒトはたまらんかっただろうなぁ。早く続きプリーズ!と毎日思っていたことでしょうね。
「よくある」同棲相手殺人事件から転がり出た12年前の未解決事件の新たな1ピース。12年前には見えなかった事実、切り捨ててしまっていた証言、関係者たちの記憶の隅から掘り起こされていくそれらの断片。
こうやって「真実」へと近づいていくのか、こりゃすごい忍耐が必要だ。その忍耐と対極にいる当時別件で逮捕された忍。ADHDの忍の内外の記憶が少しずつ「真実」を明らかにしていく、その過程にページをめくる手が止まらない。
ADHDの忍の脳内状況、そしてそれに直結する行動がとてもわかりやすい、彼らには世界がこういう風に見えているんだろうな、と。あと、私にはまったく理解できないゲームの描写。髙村さん、相当ゲームの取材されたんだろうな。
多磨の風景とゲームたちに関する知識があったらもっと楽しめたと思う、ちょっと残念。
事件には必ず真実がある。誰が何のためにどうやってその事件を起こしたのか。
その真実を明らかにすることと、事件と少しでもかかわりのある人たちの時間と記憶と思い、というものについてのひとつの完成形。
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7年ぶりの合田雄一郎シリーズ。
池袋で一人の女性が交際相手に殺された。
その女性は12年前、合田が捜査の指揮を執っていた未解決事件の関係者だったことから、合田を始め、事件を巡る関係人物の過去の記憶が動き始める。
同級生やそれぞれの親など、様々な人物の記憶が時間軸に沿って、丁寧に蘇っていく。
かすかな輪郭だった記憶が、淡々と、しかし、だんだんくっきりしていく。
あくまでも淡々。そして、会話も鍵かっこを決して使わないことから、ページ数よりもさらに物語の量感は多く感じ、読み進めるのは結構しんどい。それでも、最終的にそれぞれの記憶がどのように繋がるのか、先が気になり、読み手も淡々と読み進める。
最終的に大きな真実が明かされるわけでもなく、そして、決してラストに救われる物語ではない。
それでも、読み終わった後に何か考えさせられるものが残る。
個人的には「レディー・ジョーカー」を機に合田シリーズの面白さが半減してしまっていて、前作ほどではないが、今作も難解で少しギブアップ気味。
でも、合田の定年までもう1作ぐらい続きが出そうだから、出たら、やはり読んでしまうのかも。
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人物描写が素晴らしいのはいいが、冗長すぎる。新聞連載だから理解できなくもないが、内容的には半分に出来る。またこの終わり方は無いと思うなあ。折角の好きな合田シリーズの魅力が半減。
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一人の女性が殺害されたことから、過去の未解決事件が掘り起こされる。
交錯する人間関係とそれぞれの思い。とても丁寧に描かれており、長編であることをあまり感じさせない。
そして、自分にとって土地勘のある舞台であるため、感情移入するには最適だった。
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合田雄一郎シリーズ。
まずは、7年ぶりの新作長編であること、合田が57歳で警視で警察大学校の教授をしているのに驚きました。
リアルに年を重ねていく警察小説シリーズは寡聞でしたので。
時間軸が2017年の現在と2005年の合田が捜査責任者にして未解決の殺人事件が発生した過去とが混じりあった構成になっています。
2017年の被害者と2005年の被害者以外の周囲の人物視点で描かれていくわけですが、現在の同時間帯の我らが登場人物達をパラレルで描くことから、過去の事件の真相を炙り出していく手法だと思います。
12年前の調査では踏み込めなかったところの新たな情報が登場人物たちの記憶からにじみ出てくる様子はすごいリアリティを感じました。
昔のようなエンタテイメント性やサスペンス性がないものの、真相が浮かび上がってきそうなジワジワ感は作者しか書けない描写と思います。
捜査の前線に戻った合田の定年前の最後の活躍が見てみたいです。
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高村薫は丁寧に読み進めたい。書き下ろしではなく、毎日新聞連載。
合田さんシリーズ。アラフィフすら超えた合田さんは警察大学で教鞭をとってる。担当した未解決事件の関係者が殺された。少女Aの死で、周辺の人間も動く。
事件は動かない。ただただ少女Aのまわりがさざめく。
合田さんの元妻(死去)の双子の兄(判事)も入院。ペースメーカー。
人が死ぬということは、生きている人間に影響を及ぼす。を重厚に書いたな、っと。
捕まらなかった少女A。同棲相手に殺された少女A。そもそも彼女は幸せであったはずがない。と私も思う。
巻末では、ADHDの忍も、少女Aの母もすでに亡く。真弓の子は幸せな感じで育っている。
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数十年前の昔、池袋の文芸坐辺りでアラン・レネの映画を観ているときの感覚を想い出す。それは他人の夢を見せられているような感覚である。幾人もの夢のカタログのページをめくるような感覚。移り行く風景。心の変化。場面転換。脳内スペーストラベル。心象から心象への旅を通して、次第に明らかにされてゆく12年前の殺人事件とその真相。
あまりに久々に手に取った高村作品は、やはり巷間に溢れる凡百のミステリーとは格段の別物であった。気高くさえ感じられる文体の凄み。観察眼の精緻。人間内部の幾層もの意識の深部へ沈潜して照射してゆく光の明るさ。彼らを囲繞する世界の仄暗さ。季節の匂い。風の触感。様々な言い尽くせぬ表現方法を総動員した小説作法は、やはり高村流と言うべき感性の豊かさによって編まれているかに見える。
ミステリの畑から長らく遠ざかっていた高村文学が、また再び合田雄一郎とともに帰ってきた。同棲相手に殺害された少女の掌から零れ落ちた絵の具のチューブが、12年前の武蔵野に置き去りにされた未解決殺人事件の記憶に結び付く。合田は、警察大学校の教授として教鞭をとる。驚くべき立場だが、また翌春には捜査畑に帰ってゆくという立場で、過去の事件を現在の捜査責任者へ積極的に協力をしてゆく。
しかしこの小説の主人公は合田ではない。彼ですら登場人物の一人でしかない。ここでは誰もが主人公である。巷間に埋もれる小市民たちでありながら12年前の事件に関わったことで、現在の状況にいくばくかの影響を感じつつ、始まった再捜査の状況にそれぞれに再び関わってゆく人間たちの数だけ生まれ、終息する悲喜劇でもある。
フーダニット・ミステリでありながら大がかりな犯罪を扱っているわけではないが、多くの人の生活や時間が見事に事件に絡んでゆく様子が素晴らしい。ADHDの少年の意識の入れ替わりや、浮き沈みする記憶、彼の運動力が物語を掻き回す状況のメリハリも本書を一つの個性な作品として際立たせる。
なおこの作品は2017年夏から一年間、日々連載された新聞小説である。連載時、日替わりで交代したという挿画家たちへの作家からの謝辞があとがきで表されている。単行本化された小説のページを、いくつもの異なる挿画が彩るという計らいも嬉しい。東京都下の事件を描きながら世界レベルの芸術性と、挿画も含めた美しい風景たちを混在させる素敵な本である。読後にぎゅっと心で抱きしめたくなるような物語でもある。
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んーこれは何の話なのだろう…
合田シリーズではあるけども、サスペンスではない…
二十代後半の人々とその親の世代の人々、大勢の群像劇だろか。彼らの糸が12年前の殺人事件を結び目につながってるという…
ます最初に、合田が捜査官やめて警察大学校の教官になってるのにびっくり。加納も判事だし。
やたら、彼ら、五十代後半、もう定年も近いし、て歳が強調されるのだけど、
…私はそもそも上川隆也のドラマから合田シリーズどころか高村薫にハマったので、合田というと脳内で上川が動いてるし、現実の上川が作中の合田とさして歳が変わらないので、ちっとも合田が初老って感じがしない。
と思うと、後半、合田が知り合いの子供らとモンストに興じてたりするし、やっぱりこの合田も老けてないや。
モンストもそうだけど、やたら、ゲームの名前が出て来るのが、「今」を強調してるのだろか。
シャドバ、ドラクエ、モンスト、太鼓の達人…
ただし出て来るのはあくまでカジュアルゲームで、ゲームオタクと呼ばれてる人物にしろ、それほどゲーマーというわけでもない。ゲーセンでもあくまで入口付近の音ゲーくらいで、格ゲーやシューティングには手を出さないし、家でもコンシューマやパソコンでオンラインゲームをやったりするわけではない。
登場人物たちの世界は狭い。舞台がほとんど東京の多摩地域って、地理的な狭さだけでなく、大著のわりに個人個人の狭く密な世界でドラマが進行して、殺人事件さえなければほんとに、ただの市井の人々の点景でしかない。
一方でスマホがインターネット越しに人々をつなぐけども、それも、Twitterやブログといったオープンなネットではなく、LINEやインスタといったクローズドなサービスに過ぎない、ていう。
どこまでも密な世界。
まるで、この小説自体が、SimやDwarfFortressのような箱庭系SLGで、読者は神の視点でマップを眺めているプレイヤーの気分になってくる。
そして最後のオチ…え、加納さんどうしちゃったの?! 事件の決着はっ?!
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過去の事件に複数の関係者が向き合い、複層に話が展開していくので、読み応えはあったし、久々に前のめりに本を読むということに取り組めた。