紙の本
金剛石に
2020/02/03 19:44
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
尾崎紅葉の「金色夜叉」といえば、「金剛石に目がくらみ・・・」しか知りませんが、現代版になるとどうなるのだろうと興味を持ちました。最後が衝撃的でした。
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空に向かって登りつめれば
あとは休むだけ。
見下ろす気持ちはどうですか。
貴方が持ってる沢山の紙切れは何に使うのですか。
恨むのは
自分を突き飛ばした奴?
自分を突きはなした奴?
それとも突き飛ばしてきた自分?
思考も感情も持つモノに生まれたのなら
あまりバカに生きないで。
この絞られた心臓は今日の私だけのモノ。
治せない疵は誰に託す?
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自分自身にあまりに誠実であろうとした貫一と、うすらぼんやりとした万能感をまとい、自分自身が何者かわからずにいるMIA。『金色夜叉』の現代版リメイクという触れ込みではあるけど、原作(?)のテーマが「愛かカネか」だったのに対し、この作品で描かれているのは「いまという時代が抱えている『嘘くささ』への抗い」なのかなと感じた。それはもちろん、登場人物が嘘くさいやつが多いというだけの意味ではなく。
それにしても、アマゾンの書評がよくわからんものが多いのはなぜだ??
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橋本さんがお亡くなりになったのが今年の1月。ということはお亡くなりになる半年前まで新聞の連載小説執筆されていたのか。すごいなぁ。遺作ということでいいのだろうか。
「金色夜叉」は読んだことはないが、なんとなく筋は知っている。細かいところは知らない。なので比較はできないが、よくぞ古色蒼然とした明治時代の原作を現代にうまくアレンジされたなぁと思う。
貫一が熱海の後、ホームレスになりかけ、ネットカフェで暮らし、日雇い派遣で働き、町工場に短期間ではあるが馴染んでいくところが、とても良かった。
最終章の文章も、いちいちしみた。
" 相手のためを思ってなしがたい譲歩をして、その相手を宥してしまった人間の中に生まれてしまった傷の大きさは、誰にも気づかれない。宥した当人でさえ、「それを宥した手前、『傷』とは考えられない。そう考えるのはフェアではない」と、自分自身を追い込んでしまう。
貫一は、美也を恨んでいない。恨めない。なぜかと言えば、自分を振り捨てて行く美也を、貫一は宥してしまったから。(略)
愛は哀しい。それを可能にするだけの包容力を人に与え、それが終わった瞬間、根こそぎに奪う。一度失われてしまえば、そこに愛があったかどうかも分からない。
愛が消え失せた時、人は手探りで「あったはずの愛」を探す。愛が恐ろしいのは、愛が消えた時、「初めに遡ってその愛は存在してなかった」という錯覚に覆われてしまうことだ。
(略)
怒りさえもねじ伏せてしまう強い絶望。「こんなことがあっていいはずはない。嘘だ!」と思いたい願望が、怒りとなってしかるべきものを、無理矢理に押し潰した。
それは美也への愛でも執着でもなかった。「一切をねじ伏せ、葬り去らなければこの先を生きていくことが出来ない」と思う貫一の、あまりにも生真面目すぎる心のなせる業だった。" 368ページ
引用しながら泣けてくる。
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橋本治が命を賭して紡いだ長篇遺作。愛と金、人はどちらに飢えるのか? 愛する人に裏切られた美青年・貫一の空洞が今、輝き出す――
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ショーゲキのラストっ!
てか、今まで積み上げてきてそこでぷっつりって(´-ω-`)
なんかもったいない。。。
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橋本治の最高傑作の内の一つ。
ここまで人は悲惨になれる。
貫一を生きるのが辛くなる。
世の中を生きる人間がこうまでなってしまうとは。
それほどまでに私達が生きるこの「現代」という時代は悲惨なものなのかもしれない。その事に気付けるか、気付けないか―それを促す作品です。
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尾崎紅葉の有名な作品『金色夜叉』を橋本 治さんが現代に蘇らせた作品.実は,これまで橋本 治さんの小説で読み通せたものがなかった(エッセイを除く)のですが,この作品は読みやすい.そして引き込まれました.
現代の貫一はお宮を蹴飛ばせない.「怒ってすむなら簡単だよな」と矛先を内に向けるあたりが現代的.IT長者やネットカフェ,スワッピング・パーティーなど道具立ても現代的.そして哀しくも衝撃的なエンディング….さすがです.
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「金色夜叉」の現代版リメーク小説。
「金色~」の方は高校時代に読んだけど、男も女も頑なだったというイメージだった。橋本氏のリメークも本編に負けじ劣らず意固地でちょっと情けないくらいに世間知らず。
この結末を読んであら、本編はどうだったかしらとそちらを開いてみたら、よくこんな文章を読みこなせていたな、当時の私。というのが今回の一番大きな驚きだった。
結末までは辿れなかった。
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『夜空の下を埋め尽くす光の海のような夜景の煌めきに感嘆の声を上げる人達は、闇の中にただ一つ灯る小さな明かりの存在など気にもしない』―『摩天楼』
「金色夜叉」を読んだことはない。それが作者尾崎紅葉の死によって未完となっていることも知らなかったが、奇しくもその物語を下敷きとした本作が異才の人橋本治の遺作となったことに不思議な繋がりを感じる。尾崎紅葉が日清戦争後の社会状況を背景に物語を展開したように、登場人物の名前もそのままに受け継ぐ「黄金夜界」でもまた今の世の中に即して物語は進むが、その構図は驚くほど本質的に変わっていない。自分は根本的に人の善意というものを信じるものではあるけれど、二つの物語が共通して突きつけるものは本質的な人間の欲望であり、その欲望は本質的に性悪であるように映る。
尾崎紅葉が「金色夜叉」の結末をどのように構想していたかは兎も角も、橋本治は残された物語の中に極めて現代的な人間の在り方を投影し、未完の物語の枠組みの中で結末を用意した。それは120年前の人が感じたであろう刹那ですらまどろこしいと感じてしまう現代人であるからこその選択肢。すれ違いを修復する為に掛けられる時間の長さに違いがあればこその結末だったのだろうと想像する。全て理屈で選び取ることが出来ると無意識に信じている現代人は、身体的な思考が脳の表層で展開する意識よりも多くの情報を処理し判断を下しているということに理解が及ばない。いきおい身体的思考に資する時間を用意出来ないこととなる。そこに生まれるのはまさに刹那的、詰まりは持続性を欠く判断であるように思う。
橋本治の駒場祭の有名な口上「とめてくれるなおっかさん 背中のいちょうが泣いている 男東大どこへ行く」が人々の記憶に留まるのは、昭和43年という文脈の中でその言葉の指し示す意味が響いたからでもあるけれど、その「音」が直接身体の真ん中に入り込んでくる感覚があるからだと思う。七五調の調子への親和性、などと理屈を捏ねても、その「響く感覚」は何も解明されることはない。理屈を超えて受け継がれている身体性の本能に橋本治はとても敏感であったのだと思う。そのことが「金色夜叉」の展開を現代という場面に移し替える時に作家の本質として浮き上がるように思う。
思えば、それは「桃尻娘」から「双調平家物語」へ繋がる流れと同じ線上に在るものなのかも知れないと、橋本治という山の裾の広がりを無視して夢想してみる。遅まきながら橋本治を読み直してみたくなる。
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ちょうど「自転しながら公転している」を読んで、「金色夜叉」を読みたいと思ったが、文章が私には難しく、諦めたところ、たまたま読みはじめた本書が「金色夜叉」をモチーフにしていると知って驚いた。
初めはとっつきにくい印象を受けたが、途中から貫一の生き様に引き込まれ、どんどん先を読みたくなり、気がつけば読み終えてしまった。
機会があれば著者の「桃尻娘」も読んでみたいと改めて思った。
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尾崎紅葉『金色夜叉』のリメイクだそうだが、「貫一・お宮」を知らなくても十分物語に引き込まれる。
特に、美也に捨てられ、社会の最下層に転落した貫一がどのように這い上がっていくのかをリアルに描いていて、とても読みごたえがあった。
貫一の周りに登場する女性の貸金業者の赤樫や居酒屋チェーンの社長鰐渕など、こういう人も居るかもなと思った。
美也の夫の俗物っぷりも期待どおりだが、美也本人の凡庸さ、考えのなさにも驚く。もう少し感情移入できるヒロインだったら良かったかも。
そして、結末は何とも言えない気持ちになる。何もかも消化不良に終わる。最終盤の赤樫と美也の罵りあいは非常に不自然だし、貫一のこのような最期も作者自身が納得してたのかとっても疑問です。
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貫一はなにもしない。なにもせず、なにも求めないーそのことが女達を惹き寄せる。求めない男の中にある「欠落」を感じて、求めない男に代わって、女達が男を求める。男の空疎は冷たく、女の空疎は熱い。
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博覧強記の著者がどのような小説を書くのか気になって読んでみたが、間貫一と鴫沢美也が主人公のドタバタ劇でやや期待外れだった.美也が富山唯継と結婚したことで話が展開し、貫一が自活するストーリーが語られる.川嶋製作所の夫婦とのやり取り、鰐淵興産・狐の酒場での孤軍奮闘、さらに辞職後に開業資金のことで赤樫満枝との交渉等々.個々のエピソードは楽しめたが、結末はあっけない.
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※再読しました
再読して星付け足しました
再読して、一度目で分からなかった楽しさや発見があり、橋本治さんに興味がわきました
血眼になって神保町で彼の絶版本を探しましたが、見つかったものの、あまりにも高価で泣く泣く断念!
代わりに、「いつまでも若いと思うなよ」を買って、積読中です
黄金夜叉の現代版というが…
ストーリーは、ありきたりっちゃありきたり
しかし、作者の経済や社会についての知識をフル動員したかのような描写は、やっぱ頭ええんやなと感服。
まだまだ「現役」の人で色んなことに興味を向けてたんだな。
あと登場人物が全て、とても魅力的!
イケメンのボンボン、美人のお嬢様、おばちゃん金貸し、ブラック社長…型にはまってはいるが、ステレオタイプでは決してない。
個人的に、ブラック企業社長が、ただの性悪ではないところがとても面白く、「彼は本当は良い人だった」みたいな所に落とさなかったところにも、また感服。
番外編として彼を主人公を読んでみたくなったけど、これが遺作だったとは知らず…
あと私も、ブラック企業で鬼のような社長のもとで働かされ、社長のことも「死ねやこのドアホ!!」と恨んでいたが、私の働いてたアパレル会社より飲食チェーン社長の方が、なんていうか、本当に「叩き上げ」「自分の力だけでのし上がる」感が凄くて、織田信長を尊敬していうところも、再読し、納得。
作者自身、なぜ、こんなに有り難がられているのか不思議な人物でもあるが、これを遺作と知り、好きなことを好きなだけやって死んでいったんだ、気持ちの良い人だなあ、と思ったのも、おまけで。