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○表題の通り、ケーキをまともに3等分できない。
足し算、引き算もできない。
漢字も読めない、書けない。
文がスラスラ読めない。
複雑な図形を写させてみると、全く違う図形になってしまう。(衝撃を受けた!)
認知機能が弱く、知能指数も低い少年達が、凶悪な非行に走ってしまうケースが多い。
○本来は、大切に守られ、支援を受けなければならない障害を持った子ども達が、気がつかれないまま、虐待、イジメを受けて、そのストレスから犯罪者になってしまう場合もあると知り、とても悲しくなった。
○認知力が低いと、自分のしたことも相手の気持ちも正しく認知できず、反省することもできないし、更生も難しい。
○非行少年だけではなく、学校でも、認知機能が弱いのに気付かれずに困っている子がいる。
昔はIQ85以下が知的障害者と定義されていたが、現在はおおむねIQ70以下。
その70〜85の境界知能の子どもは、障害者として支援を受けることもなく、ただ理解力がない問題のある子どもとして周囲に扱われ、生きにくさを感じてしまう。
だいたい小学校2年生くらいから、サインが出始める。
感情表現が苦手ですぐカッとなる、人とのコミュニケーションが苦手、集団行動ができない、忘れ物が多い、やりたくないことをしない、体の使い方が不器用、嫌なことから逃げる、漢字が覚えられない、計算が苦手…など
○自信を持てない子どもを根本から救うのは、褒めることではなく、勉強を分かるようにしてあげること。
○基礎学力を高めるのにも、認知機能を強化することが大切。それが叶うトレーニング方法(コグトレ)も紹介されている。
ゲーム感覚で、「写す」「覚える」「見つける」「想像する」「数える」をすることで、見る力、聞く力、想像する力が鍛えられる。文字を覚えたり、計算したりするためにも、大切な力。
気持ちを溜め込むことがよくないことを理解するためのワークが、とてもいいと思った。
○知能指数が高くても、認知機能の低い人はいる。
○犯罪者の中には、脳になんらかの異常があって、認知機能がおかしくなり、異常な思考になっていることも多い。宅間守死刑囚も、脳機能の異常が見られた。
○ 印象に残ったところ
想像する力が弱い→未来に向かって目標を立てられない→努力しない→成功体験、達成感がない→自己評価が低い
努力しない→人の努力も理解できない→簡単に人のものを盗んでしまう(人が一生懸命働いて手に入れたことが分からない)
→後先を考えられず、周りに流されてしまう。
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インパクト 2
かかった時間 60〜70分くらい?
ツイッターで、本書の帯にもある「ケーキの切り方」の画像を見て、これはすごい本が出たなあと思い、さっそく買って読んでみた。
しかし、中身は、帯以上のものではなかった。
本書の主張は、「発達障害は社会的な理解も支援の方法も広がりつつあるが、とくに軽度とみなされる知的障害は、幼少期に見いだされにくいし支援もほとんどされていない。適切な支援のなさから、適切な自己評価がてきなかったりストレスが不適切な出方をしたり周囲とコミュニーケーションがとれなかったりした末に罪を犯してしまう、というケースも多いのではないか?」というもので、それ自体は、なるほどなあと思えるものだったが、話の運び方やケースの選び方は必要以上に煽情的だと感じたし、その道の研究者・実践者として不適切な言葉づかい?表現?なのでは?と感じるところもあった。紙幅を稼ぐために不必要に箇条書きにしたり、行間をあけたりしているところも多くて、「ハイハイ、水増しした本なのね、わかるわかる」という感じがした。
さいきん、編集者?というか出版社?について時々考えるけど、筆者の問題はもちろんあるだろうが、新潮社ならもう少しちゃんと体裁を整えたり、もう少し中身のある本になるようにエピソードを求めたりという仕事ができそうなもんだけどな、と思った。
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2019年8月読了。
本書の帯にある「非行少年が“三等分”したケーキの図」が衝撃的だったので購入。
さらに本書20ページには「Rey複雑図形の模写」という複数の図形の組み合わせを非行少年が模写した者を著者がそのまま書き出した絵が掲載されているが、もっと衝撃的。ほとんど全くと言っていいほど図形の組み合わせや位置関係を認識できていない。「認知する能力」がこのレベルだと、おそらくは人がどんなことを言っているかという言語コミュニケーションだけでなく、表情を読み取るといった非言語コミュニケーションにも相当の難しさがありそう。
非行やそれを矯正するために“反省”させる一連のプロセスは、当人の性格的な資質や生育環境が根元にあるというよりは、そもそも他者とか自分以外の何かを認知する能力に何らか問題があり、「反省」することの前提がそもそも崩れているので諸々の問題があるという指摘。
教育というとつい知識/技能/技術の伝達に関心が向きがちだが、そもそもそれに堪え得る認知能力が備わっていることを前提としているわけで、いよいよ人に物事を伝えることの難しさを感じずにはいられない。
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個人が犯罪や非行を起こす原因は、性格や思考性(考え方)ではなく、考える地力が無いことだと述べる。考える能力が足りないために、行動の先にある不都合や、他者の気持ちを想像出来ずに、感情にブレーキをかけられないまま、問題を起こしてしまう。
これに対し、現状の社会ではそもそも知的問題を検出する体制がなく、また、検出出来ても適切に対処出来ていない。知的能力に問題がある者に対して、叱る、教育して考え方を修正するといった行為は、ある程度考える力があることを前提としているため、効果が薄い。褒めて自信をつけさせるという行為も教育現場では多く見られるが、思考力の欠如に対するアプローチにはならない。
認知思考力の改善に重要なのは、適切な自己評価と自己評価の向上の2点であり、これらは他者からの働きかけでは無く、自発的に起こるものである。彼らが自分自身に気づくためのきっかけを多く与えることが大切だ。
本書は知的障害や非行少年に焦点を当てたものであるが、自分にも当てはまるポイントが多くあるように感じた。多かれ少なかれ、先々のことを考えずに行動することは日常生活でもある。勢いで物を買ったり、雰囲気に任せて酒を飲み過ぎてしまったり。
実感としては、大学受験で勉強していた頃に比べ、社会人になった今では直感的・感情的に行動する機会が増えたような気がする。
読み進めるにあたって、会社の後輩のことを思い起こした。彼は他の同僚とは異なり、上司や先輩からのフィードバックを基に対応を修正することがなかなか難しく、社内検定に受かることが出来ずにいた。叱りつける上司とは別に、私は自身の経験から、彼には国語力(文脈を読み、適切に解釈する力)が足りないのでは無いかと思い、彼を褒めつつ教育を行っていたが、彼は設定された期間内に社内検定に合格出来ず、他部署へ異動となった。
その部署では彼と同様に社内検定に合格出来なかった同僚たちが集まっており、入社時の志望とは異なる業務を行っている。ただ、外から見る限り彼は当部署内で生き生きと仕事をしており、成果を挙げているようだ。
本書を読み、反省したのは自分が彼の教育係だと、一線を引いていたことにある。上下関係はつけたくないと思い、雑談を交えながらラフに話せてはいたとは思うが、自分が教える側だと思い込んでいたのは確かだ。彼と同じレベルで一緒に作業をする、同僚と共に作業をしてもらうなどで、彼の自己評価が自発的に向上するのを待つべきだったのでは無いかと感じる。
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話題になっていた本。やっと読めた。
タイトルだけでなく、僕は優しい人間ですと答える殺人少年など、キャッチーな章が続く。
中身も衝撃をうける内容で、少年院の少年らが認知機能に問題があることが例のケーキの切り分けの図や複雑図形模写の図でダイレクトにわかる。確かにこういった人々には認知トレーニングが必要だろうと思わざるを得ない本だった。
日本の教育のあり方、支援のあり方を考えるきっかけになった。
バイトをしていた時、学年に対して明らかに計算ができない子がいたが、その子にもこういった支援が必要だったのだろうか。今となっては知る由もない事だが、読み進めながらそういったことを思い出した。
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話題の本ということで、興味を持った本。
少年非行の原因は、凶暴性や低学力などの理由以外に、心理障害が根底にあるのではないか、感性のちょっとしたズレから生きづらさを感じていたからではないか、との指摘に共感を持つ。
ADHDと言った障害には専門的なフォローを要するため、知らずにいるのと知っていることでは全然生き方が異なる。
大人でも生き辛いと思うのに、多感な若い時分には尚のことだろう。
ただ辛い面だけをクローズアップしているだけではなく、
その一部は日々のトレーニングで改善される点も紹介されているのが良い。
生き方に悩む老若男女も取り組めるからだ。この機会が当たり前になれば、モンスター化した者をも救うことにもなるだろう。
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大変勉強になりました。最後に具体的な実践方法なども記載されていた点が、なおよかったです。トレーニング方法も、遊びの中でできそうなものばかりで、非常に実践しやすいと感じました。
こういった類いの本や評論は、現状を嘆くだけ、注意喚起をするだけで、具体的な指導方法というのはありません。国からの文書ですら、「寄り添い、個々にあった支援を行う」ということしか書いてありません。
もちろん、現状を正しく認識し、注意すべきことを知ることは重要です。しかし、そういった類のものばかりに目を通している人からすると、「それで、具体的には?」と言いたくなります。
教師になるのは、基本的に「いい子」です。話の通じない子ではありません。認知能力のある子です。だから、話の通じない子、認知能力のない子が、どんな苦しみを抱えているかわからない。多少煽情的な面も見受けられましたが、ある程度仕方ないのかなと思います。
おもしろく感じたのが、トレーニングにあげられていたようなことをもっと発展させると、言語技術の教育にも繋がりそうだ、ということでした。ただ認知能力をあげるだけでなく、そこから一続きで言語技術の向上にもつなげられる。無駄なことはないな、と思いました。ぜひ取り入れていきたいです。
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世の中的にはベストセラーといってもよいほどの売れ行きだったのではないでしょうか。そのため、図書館で予約の順番待ちをしつつ、ようやく読むことができました。
内容もたしかに、納得のおもしろさ。脳・心理系の専門的な内容にも関わらず、平易な言葉で一般の読者にわかりやすく説明されている点、非常に読みやすかったです。
あわせてタイトルにある非行少年たちに対する更生プログラムにおける問題点についても著者の説明でよく理解できました。プログラムの内容としては間違っているわけではないが、そもそもその内容自体を理解できる状態ではない、という点を踏まえたプログラムの構築が必要である、ということだと理解しました。
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認知能力の弱さから来る歪んで見える世界、
自分にも当てはまる認知能力の弱さ、
自分はたまたま非行に走らなかっただけで、
書かれている非行少年達と何ら変わらないと思った、
前半は非常に興味深い内容で一気に読めた、
後半、対策方法など説明があるが、
著者の他著書の紹介などもあり、若干冷めてた、
後半の内容に関しては、
もっと大学等を巻き込んでの大規模な実験して欲しい感じ、
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7/22 東洋経済オンライン記事で紹介され話題
少年院には「ケーキを等分に切る」ことすら出来ない非行少年が大勢いた……。
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自身の職務経験をもとに書いた伝記のようなもの。科学的な考察や、実地調査の手法が取られておらず、特段見識は深まりません。
最終的には、自身が主宰する組織がしているトレーニング法の宣伝になっています。
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非行少年に対する指導をいくら行ってもそれを認識できなければ意味がない。認知能力の低さは本来学校で気づくべきポイントだが見逃され、罪を犯してから「発見」される。
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「ケーキの切れない」ということ。色々な体験上、薄々そういう世界を持っているのでは、と感じてはいたが、それにしてもそれは想像以上の世界だった。
この本も教育関係者のみならず、人をより深く知っていきたいと思う人達には必読の書です。
〈本から〉
「反省以前」の子どもたち
世の中のすべてが歪んで見えている?
褒める教育だけでは問題はかいけつしない
「僕はやさしい人間です」と答える殺人少年
ケーキを切れない非行少年たち
計算ができず、漢字も読めてない
計画が立てられない、見通しももてない
そもそも反省ができず、葛藤すらもてない
非行少年に共通する特徴
【認知機能の弱さ】見たりきいたり想像する力が弱い
「不真面目な生徒」「やる気がない生徒」の背景にあるもの
想像力が弱ければ努力できない/悪いことをしても反省できない
【感情統制の弱さ】感情を統制できないと認知機能も働かない/
ストレス発散のための性非行 (略)
【融通の利かなさ】頭が悪いとどうなるのか?/BADS(遂行機能障害症候群の行動評価)/学校にも多い「融通の利かない子」/融通の利かなさが被害感につながる/【不適切な自己評価】自分を知らないとどうなるのか?/なぜ自己評価が不適切になるのか?/【対人スキルの乏しさ】対人スキルが弱いとどうなるのか?/嫌われないために非行に走る?/性の問題行動につながることも/【身体的不器用さ】身体が不器用だったらどうなるのか?/不器用さは周りにバレる/身体的不器用さの特徴と背景
以上、第1章から第4章まで
第5章 忘れられた人々
第6章 褒める教育だけでは問題は解決しない
第7章 ではどうすれば? 1日5分で日本を変える
と続く。
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色んな人たちの顔がよぎる、まあそうよねえという件。字も大きく行間も広いのでスルスルっと読める。当事者、保護者、支援者、関係機関様々な立場へ広くアプローチしてきたからこその伝わりやすさか。
割と教育機関への提言が強いように感じられたけれど、現場からすれば家庭で身につけてきて欲しいスキルであろう。それでも家庭の機能不全をフォローするほど、学校を含めた社会の役割は整理されていないのでは。
数字がほぼ出てこないので先生の経験の記録。根拠は…と思わなくもない。
家庭が孤立していっていることは確かだけれど、情報がセンセーショナルに出回りやすくなったから表面化しただけなんじゃないのかしらと「現代の社会問題」に対してはある程度冷静にいたいものである。
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反省以前の子供たちがいる
認知機能(見る、聞く、匂う、触る、味わう)は全ての行動の基盤であり、教育を受ける際の土台になるが
そもそもの土台が歪んでいると間違って整理してこちら側の伝えたい事がうまく伝わらずに支援が空回りしてしまう。
教育というと知識技能等々の伝達をする事に意識が向きがちだが
そもそもそれが理解できる程度の認知能力を持っている事が前提なので、のれんに腕押しになることも
非行少年たちの認知能力の実態、
まわりに気づかれない事の悲劇、
認知行動療法の限界。
とても興味深く読ませていただきました。