紙の本
空の旅のともにはおすすめしません
2023/07/31 20:06
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投稿者:大和川葭乃 - この投稿者のレビュー一覧を見る
スティーヴン・キング&ぺヴ・ヴィンセント編「死んだら飛べる」。飛行機に纏わる「恐怖」を描いた短編を編んだアンソロジーで、SF、ゾンビもの、怪談風のもの、リアルに怖い話からファンタスティックなもの、ミステリーまで、多種多様。そして、最後の一編は小説ではなく詩、というところが、一ひねり加わっていていっそう印象深いものになっていると思います。
全17編中初訳が10編。編者のキング大先生とご子息ジョー・ヒルはこのための書下ろし!私はヒルのことを「もしかしたら父親以上の天才では」と思っているのですが、今回も「よくこんなことを思いついたな」というような、絶望と希望が入り混じった一編だし、われらがキング先生はやっぱりキング先生で、ただし「優しい方のキング」というのも、父子でバランスがとれていると思いました。
どれもこれも際立っていて、すべてを一つ一つ紹介したいのですが、さすがに多いので心に残ったものだけ紹介しますと、まずはコナン・ドイルの「大空の恐怖」から。飛行機が飛び始めて間もない時代にこの着想を得たドイル先生はさすがとしか言いようがありません。とある有名な飛行士が消息を絶ってのち、彼が書き残した手記が英国の片田舎の農場で見つかり、一部が欠損しているものの、その手記に書かれていたのは想像を絶する大空の恐怖、というもの。高度四万フィートがまだ人類未到達だった時代の大空への憧れと恐怖を描いています。
「高度二万フィートの悪夢」はみんな大好きリチャード・マシスンの作品。そう、あの映画(もとはドラマ)「トワイライトゾーン」の中でジョン・リスゴーが主演した一本の原作です。これは外せませんね!
レイ・ブラッドベリの「空飛ぶ機械」は古代中国を舞台にした不思議で残酷なお話。詩情と悲しみに彩られた幻想小説です。
「彼らは歳をとるまい」は「チャーリーとチョコレート工場」でおなじみのロアルド・ダールの作品。ダールは第二次大戦のエースパイロットであり、瀕死の重傷から一命をとりとめたという事実を鑑みれば、この短い物語はもしかすると彼自身が体験したのでは?と思いたくなります。
順番は前後しますが「戦争鳥(ウォーバード)」(デイヴィッド・J・スカウ)は爆撃任務を行う兵士たちの戦場(空中)での生々しい描写に息をのむ一編。松本零士の戦場まんがシリーズにも通じる戦場の恐怖と戦争のむなしさに慄然とします。
そして、最後を締めるのはジェイムズ・ディッキーの詩「落ちてゆく」。飛行中の旅客機の非常口が突然開いて、客室乗務員が空に吸い出される(放り出される)という珍しい事故の実話をに着想を得て書かれた、恐怖と美しさに満ちた短い叙事詩。大空を漂う客室常務員は、地上に墜落したあともしばらく息があったという・・・。なんというこのアンソロジーを締めくくるにふさわしい一編であることか!
ああ、最後に一つだけ。この本は空の旅へのおともにはお勧めできません。空の恐怖をリアルに味わいたい、というのなら別ですが。
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飛行機乗らないからな
2021/03/30 19:32
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投稿者:ツクヨミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
結構期待していたので、やや肩透かし。
面白いお話しもあったのですが…。
鉄道が進化している日本に住んでいると飛行機で長距離移動する機会も少ないので…私は大丈夫です。
カバーイラストが素敵です。
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これたぶん「トワイライトゾーン」で見たよね、と思われるマシスン『高度二万フィートの悪夢』は、やっぱり秀逸だなあ。
筒井康隆『五郎八航空』も入れていただきたいところ。
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スティーヴン・キング&ぺヴ・ヴィンセント編「死んだら飛べる」。飛行機に纏わる「恐怖」を描いた短編を編んだアンソロジーで、SF、ゾンビもの、怪談風のもの、リアルに怖い話からファンタスティックなもの、ミステリーまで、多種多様。そして、最後の一編は小説ではなく詩、というところが、一ひねり加わっていていっそう印象深いものになっていると思います。
全17編中初訳が10編。編者のキング大先生とご子息ジョー・ヒルはこのための書下ろし!私はヒルのことを「もしかしたら父親以上の天才では」と思っているのですが、今回も「よくこんなことを思いついたな」というような、絶望と希望が入り混じった一編だし、われらがキング先生はやっぱりキング先生で、ただし「優しい方のキング」というのも、父子でバランスがとれていると思いました。
どれもこれも際立っていて、すべてを一つ一つ紹介したいのですが、さすがに多いので心に残ったものだけ紹介しますと、まずはコナン・ドイルの「大空の恐怖」から。飛行機が飛び始めて間もない時代にこの着想を得たドイル先生はさすがとしか言いようがありません。とある有名な飛行士が消息を絶ってのち、彼が書き残した手記が英国の片田舎の農場で見つかり、一部が欠損しているものの、その手記に書かれていたのは想像を絶する大空の恐怖、というもの。高度四万フィートがまだ人類未到達だった時代の大空への憧れと恐怖を描いています。
「高度二万フィートの悪夢」はみんな大好きリチャード・マシスンの作品。そう、あの映画(もとはドラマ)「トワイライトゾーン」の中でジョン・リスゴーが主演した一本の原作です。これは外せませんね!
レイ・ブラッドベリの「空飛ぶ機械」は古代中国を舞台にした不思議で残酷なお話。詩情と悲しみに彩られた幻想小説です。
「彼らは歳をとるまい」は「チャーリーとチョコレート工場」でおなじみのロアルド・ダールの作品。ダールは第二次大戦のエースパイロットであり、瀕死の重傷から一命をとりとめたという事実を鑑みれば、この短い物語はもしかすると彼自身が体験したのでは?と思いたくなります。
順番は前後しますが「戦争鳥(ウォーバード)」(デイヴィッド・J・スカウ)は爆撃任務を行う兵士たちの戦場(空中)での生々しい描写に息をのむ一編。松本零士の戦場まんがシリーズにも通じる戦場の恐怖と戦争のむなしさに慄然とします。
そして、最後を締めるのはジェイムズ・ディッキーの詩「落ちてゆく」。飛行中の旅客機の非常口が突然開いて、客室乗務員が空に吸い出される(放り出される)という珍しい事故の実話をに着想を得て書かれた、恐怖と美しさに満ちた短い叙事詩。大空を漂う客室常務員は、地上に墜落したあともしばらく息があったという・・・。なんというこのアンソロジーを締めくくるにふさわしい一編であることか!
ああ、最後に一つだけ。この本は空の旅へのおともにはお勧めできません。空の恐怖をリアルに味わいたい、というのなら別ですが。
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様々な作者の飛行機に関する短編オムニバス集。同じテーマでも、それぞれテイストが違うところが面白い。
しばらく飛行機に乗る予定がなくてよかったです。
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飛行機にまつわる奇妙な短編集。
一話ずつ違う作者が書いているので、色んな話を読める。
長時間飛行機に乗る前には読みたくない。
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キング、ヒルは鉄板。リチャード・マシスン、懐かしいねぇ。ロアルド・ダールは紅の豚にパクられた?楽しませていただきました。
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人は二本足で立った時から、次に空を飛ぶことにあこがれてきた。
同時に、二本足になったことで感じる「不安定さ」を「不安感」という感情に置き換えて、遺伝子にインプットされてしまった。
「足元の無い」状態の「落下」に対する不安感は誰にでもあり、ある人は「刺激」として喜び、ある人は「恐怖」として忌み嫌う。
人類が自力による飛行を諦め、飛行機械を生み出したのは、ほんの120年前の出来事。以降は移動手段として、多くの人が「あこがれ」の空を体験することができた。
そんな時代だからこそ、この本が生まれた。
気の利いたスティーブン.キングの序文や、ベヴ.ヴィンセントのあとがきを含め古今の短編が19話。
映画「トワイライトゾーン」でおなじみのリチャード.マシスン「高度2万フィートの戦慄」や、アニメ「紅の豚」で飛行機乗りの墓場のエピソードとして取り入れられたロアルド.ダール「彼らは歳をとるまい」など、どこかで一度は目にしたことのある物語もあれば、今回のための書き下ろしも含まれている。
物語は「落下」以外にも、「密室」や「未知なる世界」など様々な「不安感」の仕掛けが施されて、短編一つ一つに原題「flight or fright」(fight or frightもモジっている)が凝縮されている。
「絞首刑に遭う旅客機」の表紙絵や、意味不明な邦題「死んだら飛べる」などと合わせて、テーマを「空の恐怖」とするアンソロジーは、見事に成功している。
スティーブン.キングは、本当に飛行機が嫌いなの?
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飛行機ネタの怪奇、幻想とのことだったが好みに合わず一部読んだだけで敗退。映画「トワイライトゾーン」の飛行機のエピソードの原作と思える話が出ていた。
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飛行機をテーマにしたアンソロジー。ホラーやサスペンス、SFが多いです。これを飛行機に搭乗した際に読むと……臨場感がありすぎて取っても素晴らしいことになりそうですが、お勧めはしません。
お気に入りはリチャード・マシスン「高度二万フィートの悪夢」。まさしくこれは悪夢! あれが本当にいたとしたら恐ろしいのはもちろん。いなかったのだとしても恐ろしい物語。
E・C・タブ「ルシファー!」も恐ろしい……というか嫌な話です。つくづくこんな目に遭うのは嫌だと身に染みて思います。
でもリアルに一番恐ろしいのはジョー・ヒル「解放」だったりして、という気もするなあ。しかしとにかくどれも、飛行機に乗っているときに読むのは勇気がいるぞ。
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飛行機に関するアンソロジー。どれも良かったけど、「第五のカテゴリー」と「落ちてゆく」はあまり合わなかった。お気に入りは「高度二万フィートの悪夢」と「ルシファー!」かな。 作品群にはホラーがあり、戦争物があり、ミステリがあり、SFがあり、ファンタジーもゾンビもあり…こうみると、飛行機というだけでも幅広く読めるなぁ、と。
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スティーブン・キング編の飛行機を題材にした恐怖小説アンソロジー。
当たり外れが大きいように感じたけど、訳文の読みにくさのせいかもしれない。
中村融訳の作品は読んでて意味がとれないような箇所が結構多くて難儀したので、正直途中から雰囲気で読んだ。
以下個別感想
「貨物」★★★
カルト宗教により毒殺された大量の子どもの死体を運ぶ貨物機の話。怖いというより物悲しい話。あまり面白くはないけど、最後の「あの子たちを外で遊ばせてやったんですか?」って台詞は良かった。
「大空の恐怖」★
コナン・ドイルの恐怖小説。まだ飛行機が登場して間もない頃の作品で、流石に時代を感じてピンとこない描写が多い。ダラダラしている。
「高度二万フィートの悪夢」★★
旅客機の翼にグレムリンを発見した男性が、何とか他の人に伝えようとするも信じてもらえず孤立していく。あらすじ通りの話で、想像通りに終わる。いまいち印象に残らない。
「飛行機械」★
航空産業を皮肉ったショートショートなんだけど、小説としての面白さも皮肉としての面白さもあまり感じず。
「ルシファー!」★★★
時間を戻せる指輪を拾った邪悪な男の顛末。オチよりも指輪の力で、殺人や暴行をしては無かったことにする主人公の邪悪さが怖い。
「第五のカテゴリー」★★
米政府の法律顧問として、拷問を正当化するための覚書を作成した法学者が航空機内で異常な事態に遭遇する。
一番楽しみにしてたけど、とにかく読みにくくて苦労した。
「二分四十五秒」★
シンプルな話のはずなんだけど、これも読みにくい。あんまり印象にない。
「仮面の悪魔」★★★★
呪いの仮面による機上の惨劇。シンプルでおどろおどろしいホラーらしいホラー。
「誘拐作戦」★★★
未来人による飛行機事故で死ぬ予定の乗客らを対象にした誘拐作戦。SFらしいSFで普通に楽しい。オチが嫌な感じなのも好み。
「解放」★★★★★
飛行中に核戦争が勃発した旅客機の混乱の様子を描いた群像劇。本アンソロで一番好き。段々状況の最悪さが判明していく様子はスリリング。誰かにとっては悪質なレイシストの男性が他の誰かにとっては人生の救世主だったり、そういう多面性を描いていたのもよかった。
ここまで書いて疲れちゃった。気が向いたら残りを書くかも。
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17編の航空機にまつわる恐怖短編集。
恐怖と言っても、化け物が出てくるような怖さもあれば、墜落の恐怖もある。
こんな鉄の塊が空を飛んでいるってこと自体、そもそも恐ろしいこと…
ささ、搭乗手続きが終わったのなら荷物を持って快適とはほど遠い空の旅へ。
本書を旅のお供に持ってきた、だって?
そりゃああなた、いいセンスだ。
どうぞご無事で。
いきなり最後に収められた話だが、「落ちてゆく」は本書の締めくくりにふさわしい。
荒唐無稽?
いや、この信じ難い出来事は実際の事件に着想を得ている。
流れるような詩が、近づく死が、美しく残酷に迫る。
空から人が落ちてくる、なんてラピュタじゃあるまいし。
「彼らは歳をとるまい」は、ロアルド・ダールの作品だ。
『チャーリーとチョコレート工場』で有名な著者だが、別人の作品に思える。
本作の飛行機乗りが見たのは幻だったのか。それとも。
既に他界した私の親族に第二次大戦時の飛行機乗りがいた。
似たような体験をしたこともあったのだろうか。
言葉少なに語ってくれたのは、「戦争は、絶対だめだ」の言葉だけ。
幸いなことに、親族は歳を重ねて家族に見守られて亡くなったが、若くして消えた人々も多くいただろう。
本作は怖くて不思議で、とても、悲しい。
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SF、ホラー、幻想ファンタジー、推理もの、詩、100年前の著作から最近のものまで、あらゆる方向から飛行機の恐ろしさを訴える、スティーヴン・キング編の恐怖短編集。
キングは飛行機嫌いとのことで、飛行機のイヤさ加減に遠慮がない。
特に好きなのはSF的な「ルシファー!」「誘拐作戦」、今の世界情勢だとリアルすぎてただただ怖い「解放」(キングの息子も作家だとは知らなかった!)、飛行機から投げ出されたスチュワーデスの墜落までを描く、悲しく美しい詩「落ちてゆく」(実話が下敷きだと聞くとちょっと思うところもある)
飛行機という物自体が、生存不可能の場所を限定条件で移動するというものであり、戦争や軍と強いつながりがあるもので、そこにさらに「恐怖」をかけ合わせるのだから、読後感が重いものが多い。
私はあまり飛行機に乗る機会はないのだけど、もし次の機会があったら、この本のことは忘れているといいな。
ーーーーー
以下、内容ではなく本の作り的なメモ。
Kindleには見出しリンクが全くないので、読み返したいときに目次から行く必要があり。解説や思い出しの際にとてもめんどう。
また、巻末の「作者について」に作品のないロアルド・ダールが入っていたので調べてみたら、原書と日本語版の紙の本には「They Shall Not Grow Old」が入って全17編なんですね。翻訳の権利関係かな?
私はKindle Unlimitedなので文句は言えないけれど、購入を考えている方は紙の方が良さそう。
そしてその作者一覧の順番が収録順でなく、作品名も書いていないので照らし合わせが大変(上記のように見出しリンクもないし)。姓のアルファベット順だった。カタカナ表記だしわかりにくい。
訳の読みにくいのもあり、本の作りが荒いなという印象。