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古典は本当に必要なのか、否定論者と議論して本気で考えてみた。 みんなのレビュー
- 勝又 基 (編), 猿倉 信彦 (ほか著)
- 税込価格:1,980円(18pt)
- 出版社:文学通信
- 発売日:2019/09/19
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紙の本
拳を握って読む
2020/02/06 22:05
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:象太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
大学は文学部を出て、今は言論関係の仕事に携わっている自分としては、本のタイトルをまず看過できなかった。大学文学部の不要論が世に盛り上がっているのはちらちら気にはしていたのだが、古典そのものの価値まで問われなければならない状況まで来ていたのか、と。
古典は必要だ。そんなの自明である。この本を、そういうバリバリの肯定派の立場から読んだ。
前半は「高校生に古典教育は必要か」をテーマにしたシンポジウムの再現である。古典否定派のパネリストが論を張る。鋭い。対して肯定派は弱い。泳いでいるのか溺れているのか分からないようなことを言う。否定派の質問にきちんと答えられず、何やっているんだよ、とついつい拳を握りしめてしまった。通勤電車の中で読んでいたのだが、仕事場の最寄駅に着いたのにも気づかず、乗り過ごしてしまった。本の最後で、「オーガナイザー」の先生が否定派意見への立派な反論を展開してくれた。おかげで、ようやく溜飲を下げられた。読んでライブ感を楽しめる本だった、ということなのだろう。
反対派の先生の指摘はもっともな点が多く、肯定派が正面から考えなければならない点は多々あった。だが、次の下りは聞き捨て(読み捨て?)ならなかった。
「言葉の数が多い方がいいかどうかという問題は結構大事だと思うのです。最近のアメリカ英語(米語)は50年間でものすごく簡単になってきているはずなんです。それはなぜかと言うと、簡単な米語を話さないと選挙に勝てない、ビジネスができない。(中略)日本語は意図的に簡単にすべきなんじゃないかと思います。政策として。語彙は減らすべきです。」
これ、ジョージ・オーウェルの名著『一九八四年』が描く全体主義社会で、為政者がこう述べていることを思い出させた。
「ニュースピーク(新英語)の目的は(中略)イングソック(イデオロギー)以外の思考様式を不可能にすることであった。ひとたびニュースピークが採用され、オールドスピークが忘れ去られてしまえば、そのときこそ、異端の思考を、少なくとも思考がことばに依存している限り、文字通り思考不能にできるはずだ、という思惑が働いていたのである」
人間は、言葉が貧しくなると、洗脳されやすくなる。オーウェルはそう見通していた。語彙を減らすべきだ、というのは非常に危険な提言なのである。
肯定派の自分の意見は次の通り。古典は言葉を豊かにする。言葉が貧しい人間は、それだけで魅力がない。まずモテない。高校生にはそれを理解してもらえば十分である。以上。
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