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貫井徳郎の本は今まで何冊か読んできたが、この作品はそれらとはテイストが違う作品だった。
家々の壁に稚拙で奇妙な絵を描き続ける男。
常人には理解できない奇人が主人公なのか、と思って読み進めたが...
彼がどういう思いを抱えて壁に絵を描き続けているのか、是非最後まで読んでほしい。
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北関東の小さな集落で、家々の壁に描かれた子供の落書きのような奇妙な絵。決して上手ではないが、鮮やかで力強い絵を描き続ける寡黙な男の生き方。
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才能の有無で人の価値は決まらない。
絵の才能がある母が言うことはきっと正しい。
たどそれを真実として自分の中に持って生きられるほどまだ自分はこの考えに納得はできない。誰よりも才能が欲しいから。
ただ父の劣等感もよくわかる。
だからこの嫌悪感はきっと同族嫌悪なんだと思う。
笑里ちゃんのとこはただひたすらに辛かった。
生々しく、でも淡々と残酷に進んでいく時間。
伊刈を抱きしめてあげたい。
と思ってたら親父は弱さを一応認められる人だったし、謝れる人だった。でも本質はなかなか変わらない。
澤谷の子どもの名前は笑里。
なんかここらでわかった気がする。
だからえりなはえみちゃん、っていう若干距離のある呼び方してたし、家出てくなんてことをすぐに決められたのか。
絵を描いたのは、女の子の絵を描いたのはそう言うことだったのか。色んな人と関わってきた伊刈の人生だけど、その中でも重要な母、笑里、りえなのどれかかと思っていたけど、結局美里だったのか。
でも街に描いたのは違うのかな?
いずれにせよノンフィクションライターと同じで、
伊刈への興味がなくなることなく、かつ、これだけ人生を見せてもらってもわからないことは多いんだなと。人一人の人生を見せてもらった感覚。
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初めてと、2度目からでは物語の印象がガラッと変わる。大どんでん返しってわけではないのかもしれないけど、少しずつ真相が明らかになっていくうちに、伊狩の懐の深さと人間味がわかってきて、一緒に人生を歩んでいる気分になった。
あとは、子を持つ親として、読んでてとっても辛かった。読み終わって思うのは、一人の人間の歴史の深いこと。。「感動」の一言だけでは表せない。
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北関東の小さな集落で、家々の壁に描かれた、子供の落書きのような奇妙な絵。決して上手いとは言えないものの、その色彩の鮮やかさと力強さが訴えかけてくる。
そんな絵を描き続ける男、伊苅にノンフィクションライターの「私」は取材を試みるが、寡黙な彼はほとんど何も語ろうとしない。
彼はなぜ絵を描き続けるのか――。
という作品紹介で、そのまま、「なぜ」というのが静かな雰囲気でつづられて行く感じ。
最後まで読んでから、最初からまた読みたくなる……という構成。
取り立てて事件が起こるわけでもなく、淡々と孤独な男の半生が描かれるだけであるのにとても味わい深い。
これからも伊苅は変わらず静かに暮らしていくんだろうか……とぼんやりと思ってしまった。
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久々の貫井徳郎作品。
数年前に慟哭を読んで以来、10作近く読んで、「慟哭ほどの作品はないか〜」と思いつつあった中での今作。
かなりよかった。
伊庭(いかり)とリエコさんの距離の詰め方や距離感、エミリちゃんとの交りなど、最後にその関係性が集約されていく感じがたまらなかった。
これまでの貫井徳郎作品とは風味が全然違って、事件!という感じがしなかった。が、それがよかった。緩やかに流れる時間の裏に潜む深層が、重く、愛に溢れていた。
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男は何故、上手くもない稚拙で奇抜な絵を家々の壁に描いたのか?紐解かれていく男の悲しい過去が、じっくりと読ませる。伊刈と梨絵子の夫婦に何か違和感を感じてたけど、最終章で そういう事だったのね‥と、驚きと納得。しんみりとした読後感が良かった。
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この地味なタイトルで表紙も地味であらすじもこれまた地味で、何に惹かれて買ったのかも忘れたけど、読んでよかった。いろいろな角度からじんわりと沁みてきて、気付けば大きななにかに包まれた。良い本だった。
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最後の最後で思わず「うおおおおお・・・」とうなってしまう作品だった。
壁に稚拙な絵が描いてある家が立ち並ぶ奇妙な町、その絵を描いた主人公伊苅の半生、そして、なんでそんな絵を描くのか?という疑問が徐々に明らかになっていくストーリー。
なんでこう不幸は平等じゃなく、偏ってしまうのか。。こういう話を読むと自分の幸せを噛み締めないとなと思います。
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【仕事の休憩時間には絶対に読むな】
凄まじい文圧
文字で殴りつけてくる
何の身構えも無しに読み進めて完全に打ちのめされた
たとえこの作品が映像化や舞台化されたとしても
原作超えは絶対に起きない
それほど構成力以上に純粋な文章力、
人の行動原理を描き切るのが抜群に上手い
本作は絶対に仕事の休憩時間など
そんな半端なスキマ時間に読んではいけない
文章に横っ面を殴り飛ばされて精神が不安定になる
なんなら午後からの業務に多大なる支障を来たす
幼い娘の壮絶な闘病生活の描写など
あまりの文圧で胸が掻きむしられる
妻となる大学時代の高嶺の花に猜疑の目を向けなければならない場面は重苦しくて仕方がない
壁に絵を描く
部屋中に描く
それでは飽き足らず所有地の壁に描く
乞われて近隣住民らの壁にも絵を描く
金銭の収受は頑なに断り
ただただ無償で下手くそな絵を描く
作中でこの男の行動原理が様々な角度から語られる
SNSで話題となり観光地化された町の立役者として
闘病生活の果てに息を引き取る幼い娘を持つ悲劇の父親として
大学時代の高嶺の花と運命の再開を果たし、そんな彼女が抱える影に踏み込む青年として
他にも、嫉妬と劣等感によって崩れかけた父母の板挟で、自身もまた父と同じ仄暗い火を胸に宿す学生時代
そして無二の親友夫婦との絆を深めていく社会人成りたての頃──
絵を描く男の実直さ
その下地となった、様々な出逢いの末にそれら全てから惜別を告げられる壮絶な半生
この構成力も凄まじい
しかしやはり、まだ全貌が見えてこない状態から綴られる一つ一つの行動原理の描写
この描写があまりにも的確なので
否が応でも男の心情、そこから自ずと振る舞ってしまう言動が読んでいる自分の中にそのまま乗っかってくる
あまりに重苦しく、一文一文の圧力に揺さぶられる良作
文章で真っ向から組み伏せられる心地良い敗北体験でした
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子供に対する気持ちが、パパよりママの存在が薄くなっている点気になりながら読んでいましたが、最後の章を読んで納得。
最後の最後で、すべてがすとんと自分の中に入ってきた。
家族について、子供について、結婚について、諸々たくさんこことを考えさせられる小説。
もう一度最初から読み直そうと思う。