紙の本
下級武士の田舎暮らし日記 奉公・金策・獣害対策
2020/05/11 06:15
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雨読 - この投稿者のレビュー一覧を見る
仙台藩御鳥見役として農村で暮らした下級武士である矢嶋喜太夫が42年にわたって記録した「二樅亭見聞録」を著者が現代語訳し解説されています。
「二樅亭見聞録」は天・地・人の三冊からなってたと思われていますが、地が行方不明で14年間の記録が欠落しているのが残念です。
矢嶋喜太夫の役目は多岐にわたりますが農業経営、山林経営、御鳥見横目が主で貴重な史料と言え興味ある内容も多く勉強になりました。
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仙台藩の農村に居を構えた下級武士の、42年にもわたる日記と
記録から、江戸時代中期の武士の生活を読み解く。
・享保元年(1716年)~享保20年(1735年)
・寛保3年(1743年)~宝暦7年(1757年)隠居まで。
付録:矢嶋家系図、矢嶋家文書。
参考文献有り。コラム有り。
下級武士(御鳥見役)であり、開発地主。
更に藩有林の管理を任されていた、矢嶋喜太夫の書き残した記録
『二樅亭見聞録』の現代語訳(抜粋)と、その解説です。
町中に住む武士とは異なり、農村に暮らし、農林業に関わった
暮らしと自然と隣り合わせの生活の一端が綴られています。
米、穀物や野菜の不作、水害、猪対策(鉄砲使用の難儀さ)等。
村での武士と百姓の関係や管轄の違いもわかります。
また、狩猟禁止区域の管理や水鳥の保護等のお役目について。
特に屋形様(伊達吉村)の狩りに関わる記録の細やかなこと。
声を掛けられたときの、天にも昇るような心地の文章もあります。
約二か月で江戸の情報が届くこと・・・時は将軍吉宗の頃、
天一坊事件や江戸の大火、様々な噂話についても記録しています。
養子家督問題や米価の高下を心配するなど、私的な内容も。
当時の様子がわかる記録が残っていることは、現代の者にとって、
過去を知る良い財産だなぁと、しみじみ感心しました。
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18世紀初頭に仙台(伊達)藩で石巻近辺に十石ほどの知行地をもらい、伊達の殿様の鷹狩のお世話をする鳥目付けを仰せ付かった矢嶋喜太夫の日記をまとめた一冊。
日記と言ってもエッセイ的なコメントはほとんどなく、殿様の鷹狩がいつあって、獲物はどれくらいだったとか、畑をあらす猪の駆除をどうするとか、大雨で堤防が決壊したとか、事実の記述がほとんど。
ただ、当時の藩主伊達吉村から名前を覚えてもらって、お声をかけられた場面などは、非常に彼の感情が現れた記述であった。
「喜太夫、久しいな。息災にいたか。久しく務めるな。鳥はいたか」
獲物を得て、
「喜太夫、みませい。いつも外してばかりではないぞ」
よっぽど嬉しかったんでしょうね。
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のどかな田舎暮らしを謳歌しているのかと思って読み始めたがちょっと違った。
仙台藩のお鳥見役という、農村に住んで鷹狩の際のお世話をする役目の武士の暮らしを丁寧に解説した本。
江戸中期には鉄砲が武器ではなく農具として認識されていたというのもびっくり。
あと、家督相続の時のうんざりするほど何度も書類がやり取りされる様子、息子の結婚よりも娘の嫁入りのほうが何倍も費用が掛かる話などもあり、驚きの連続だった。