紙の本
どこに視点ー置くか。
2022/08/04 20:12
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公の老人の一週間の生活ぶりを延々と著述した、ただそれだけの一書です。本当にそれだけです。ですからそれが退屈な一書だと思う方があるかもしれません。実際的で自身に置き換える方もあるかもしれません。この老人の生活ぶりから何か普遍的要素を見出だす方もあるかもしれません。
老人になると時間の経過が若い頃とは変わってくると聞いた事があります。その点に関しては切実だと感じました。何かにつけ億劫になるという事も同様です。これらは正直物悲しく思いました。何か興味や打ち込む事柄を見出だして生活に「張り」を持ちたいです。
平穏無事は望みたいですが、何か自分として充足感を得るよう、趣味や読書や勉強をしていきます。
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これだけ本を読んでいますが京極夏彦さんの作品は読んだことありませんでした。何しろ分厚いしなんだかめんどくさい感じがするというのが理由です。
本書はほんわかな感じなのできっとめんどうではないだろうと踏んで読み始めましたが、ひたすら主人公徳一(72)の独白が続くのでこれはこれでめんどくさい・・・。
独り者で結婚もしていない彼なので、一人でひたすら地味な日常を送っています。心の中に時折嵐はあれど、基本的には何も事件が起きない本です。
実際に目の前に居たら理屈っぽいおじいさんで、話すのもおっくうに感じそうですが、人に寄り掛からず一人で平和に生きている所は、自分が独居老人なら理想とする所かもしれません。
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72歳の1人暮らしの益子さん
料理をしたり 買い物でヨーグルトを選ぶのにも悪戦苦闘!でも自由で気ままなオジいサンライフをユーモアたっぷりで描かれている 続編お願いします
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オジいサンの発音がね、なんともね。
私にとしては、おじいちゃん、なんだけれど、まあ、なんとなく分かるかなとも思うような。
独居老人の頭の中、というよりは一個人の頭の中をつらつら覗いたような、そんな感じだろうか。
途中、ちょっと中弛みします。他人が日常で考えている、どうでもいいことが一冊分、ですから、そりゃあ、中弛みくらいするでしょうけれど、最後はちょっとほっこり。
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「オジいサン」の発音にこだわるジイさん…、一体これは何の話なんだ…?
て思ってましたけど、最後はちょっとほろっときました。
よかったね、徳一さん。
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一人暮らしのちょっぴり偏屈なオジいサンの日常をここまでおもしろく描けるのはすごいと思った。
緩やかな日常生活が細やかに描かれていく中で、オジいサン自身の感情、亡くなった人、生きている人への感情の表現が細やかで、読み飽きないどころか最後はほんのり温かい気持ちになる。
ウインナーと格闘するくだりも大好き。
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面白かったー。72歳の益子徳一さんの日常。7日間のできごと。
日常も日常。ほとんど何も起こらない。せいぜいが数日前のことを頑張って思い出してみたり、近所の人と話したり、自分のお昼を作ったりするくらい。でも面白くて、飽きずにずっと読めちゃう。
日常をこなす徳一さんの心の動きが、よーくわかって楽しいんだよね。脳内のつぶやきやセルフツッコミ、展開しすぎてたまに哲学っぽくなる自分への分析。時間についての考察はしみじみ納得した。
読むうち、徳一さんにどんどん親近感が湧いてくる。年齢のせいか少し忘れっぽかったり、考えがループしちゃったり、最新の機械に疎くて間違った確信を持っていたりするんだけど、そういうところがすべて愛らしく思えた。
ラストもとても良かった。涙が出ちゃうくらい。
私の年齢は、先日挫折した「麦本三歩の好きなもの」の三歩ちゃんと、徳一さんのちょうど真ん中くらい。でも感覚的な年齢で言うと徳一さんの方に近いんだろうなあ。言ってることがしっくりきた(笑)。
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『遠野物語remix』以来、2作目に読む京極作品。
聞くところによると、彼の作品の中では珍しく、かなり温かい雰囲気の作品らしい。
主人公は、益子徳一という、リタイアした男性。
公団住宅に一人で暮らしている。
この人物の、何でもないといえば何でもない日々が、本人のとりとめのない語りで描かれる。
地デジとやらに変えねばならないとやってくる「田中電気」二代目とのやりとり。
スーパーでうっかり試食してしまい、欲しくもないウィンナーを買うことに、自分で追い込まれていく過程。
きっと、自分に余裕があったら、こういう徳一さんにおかしみを感じたりするのだろう。
が、今は時期がいけなかった。
忙しくて、「だから何?」と思ってしまうのだ。
お正月も三日目、もはやなにもすることがなくなった午後に、おもむろに読んだら、もっと楽しめたのかも。
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とある老人の一週間。一週間の何気ないひと時をあの文量にするのが京極夏彦だなぁ…と思った。最後に電気屋の二代目が結婚するとは思わなかった…。
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のんびり穏やかにくらす、益子さんの日常。
目玉焼きとソーセージについて考えている様子がとても可愛いなとほっこりしました。
驚くような大事件はありませんが、とにかく益子さんの脳内でひとりボケツッコミが繰り返されていて、思わずくすっと笑ってしまいます。
最後に田中電気さんからのお願いが、これからの益子さんにとってプラスになって、さらに楽しく生きていくんだろうなぁと期待が持てました。
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主人公である益子徳一さんのモノローグがメインのお話です。近所の人との会話では多弁ではないけど、頭の中ではよく喋るオジいサン。
深夜営業についての下りとか、”それでは徘徊老人である”の下りが個人的にツボでした。そして淡々と終わるのかと思ったら、終わり方があったかくてほろりとしました。
京極氏の作品は百鬼夜行シリーズしか読んだことがなかったので、こんな平和なお話も書かれるんだとびっくりしました。会社で昼休みに少しずつ読みましたが、クスッと笑えて良い気分転換でした。
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最後の話がとってもほっこり☺️した〜!
電気屋の繁くん(くんという歳でもないが)、うだつの上がらない人?て感じのぽやぽやな印象だったけど、なんやかんや可愛げのある人でした。
波乱万丈も山あり谷ありも何もない徳一さんのささやかな日常を、ちょっと覗かせてもらう。穏やかな話を読みたいときにオススメです。
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年末に本屋に寄ったら目についた、
京極夏彦の文庫本。
なんともゆるいタイトル、
紙粘土のお爺さん、フォントの文字も気が抜けていて装丁がどことなくかわいらしい。
鵺の碑で久しぶりに骨のある京極本を堪能したから、こんどはいかにも軽そうなのを読むか…、と手に取った。
公団アパートでかれこれ40年一人暮らしをしている、72歳6ヶ月の益子徳一さんの1週間のとある時間を、端折ったり飛ばしたりせずにその時間のままツラツラと書き記すスタイルの小説。
基本的に徳一さんのモノローグで話がすすむので、最後まで特になんのイベントも起きない。
何日か前に「オジいサン」と呼びかけられたその記憶を、起き抜けに徳一さんが一生懸命思い出すモノローグだけで終わってしまう第1章。
思考があっちへ行ったりこっちへ行ったり、忘れたかと思えば思い出したり、思い出しては腹を立てたり反省したり…、
ずーっと徳一さんの頭の中の声で進むので、少し退屈に感じたりもするんだが、不意に描かれる徳一さんの人生哲学や老いや時間についての考えに、妙に納得したりする部分もあり、なんやかんやで読まされてしまう不思議。
2章、3章も外に出て誰かと話したり、料理をしたり、なんてことない日常を徳一さん目線のモノローグで追っていくだけの物語なんだけど…、
どんどん引き込まれるんだよなぁ。
頑固で面倒くさいお爺さんのようなところもあるんだけど、それだけじゃない。
人間にはいろんな側面があるんだなという結構不思議で当たり前のことに気がつく。そしてなんだか徳一さんを好きになる。
何がいいって、定年退職してからはありあまる時間をなんの生産性もなく過ごしていて、地デジもわからないし、携帯電話もわからない。社会にこれと言った貢献してもおらず、生涯独身で妻も子もいないからもちろん孫もいない。ただただ面倒くさい一人暮らしの頑固爺だと自認しながら、自暴自棄にならず、自分なりの道徳を持って倹しく生きるその生活を、なんだかんだでちゃんと肯定しているところが本当に良い。
本人は嫌だと感じている独り言のように、モノローグの中でふとしたはずみで出る、しあわせだな、の感情が、
読んでいてめちゃくちゃ愛おしくなるのだ。
一見ネガティヴに見える老いを描きながら、その実、あるがままの時間をあるがままに生きる、その清々しさ。
とても好き。
気持ちの良い小説でした。