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途中までなかなか進まず読み切るのに時間がかかったが、後半は外出自粛も手伝って一気読み。
最初は木嶋佳苗事件をモデルにしたセミノンフィクション的な扱いかと思っていたが、あくまでそれをオマージュしたドラマ。とにかく料理の描写がどれも鮮明で、活字を追っているだけなのにお腹が空いてくる(凝った料理は苦手だが、バターかけごはんは絶対試してみようと思う)。カジマナが語る内容は最後まで何が真実なのか、読者をからかっているかのような展開だったが、それこそが彼女のキャラクターらしさなのだと思った。
また、この物語にはカジマナ事件のほかにもう1つ裏テーマがあり、それは女の友情だと思った。カジマナ・里佳・怜子というメイン女性3人の周りの女友達模様は純粋で、嫉妬深くて、リアルで、とても面白かった。(余談だが女子校の人間関係にまつわる描写があまりにも現実的だったので、柚木麻子さんは絶対女子校育ちだろうなと思って後で調べたら、やはりそうだった。『ナイルパーチの女子会』しかり、柚木さんは女同士の関係を描くのが抜群にお上手)
1冊一気読みというわけにはいかなかったのでマイナス1点させていただいたが、女の人間関係にせよ料理にせよとても臨場感あふれる鮮明な描写で、著者のリサーチの深さを感じさせられる内容。
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男性3人を殺害したとされる女、梶井を取材する主人公。彼女の話を引き出すために様々な食を体験し、打ち解けて?いくのだが、この描かれるご飯がなんと美味しそうなことか!読みながら私も「バター」を買ってしまった程。マーガリンではなく、バター。梶井が語るたくみな言葉に主人公だけでなく、読んでいるこちらも翻弄されてしまった。
読者までも洗脳されるようなこの感じは何なのか。驚愕の一冊。
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わたし的「柚木麻子の苦手な部分」が比較的薄まった内容で、わりかし楽しめた。サスペンスだと思ってたけど読んでみたら少し違って、飯テロ要素の強いヒューマンドラマ的な感じ。バターご飯食べたい。
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タイトルがここまで強く作品に影響している本を他に知らない。
出てくる食べ物が美味しそうと言うだけでなく、この作品を読んで改めて現実にあった事件について調べた人も多いと思う。
面白くて作品に引き込まれる物語。
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面白かった。
山本一力さんが解説で書いているように、話のきっかけ自体は有名なある事件だけど、みるみる話が展開して、いろいろな人が巻き込まれ、変わっていく。
心のなかで常々モヤモヤと感じていることが、叫びたいくらい鮮やかに開示されていく感じがする。
読後感はとても爽やかで、そして、焼けるほど羨ましくなった。
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人によって満たされる欲求は長続きしない。
この本は1人の容疑者の物語であり「ミソジニー」や、それに付随する社会における女性の「自己肯定」など近頃話題のワードも考えさせられるような一冊でした。
梶井が決して出来なかった、願望でありコンプレックスとも言えるもの。
「自分のための料理」
結局、梶井はいくらレシピを覚えても、自分流にアレンジすることは出来なかった。
教科書通りの王道が本物であり、王道以外を受け入れず見ないようにしてきた。
料理においても自己主張が強いと異性が嫌がる。好かれるために、あくまで相手より劣った、弱い立場でいることが身についてしまっていた。
梶井の「その時、一番食べたいと思う物を好きなだけ食べるのよ。」という言葉は、異性から求められることでしか自分を満たせない彼女が、唯一「自分のために生きている」と自己肯定感を感じる事ができる行為ではないかと思いました。
そして里佳に、自分は自分のために生きて周りを弄んでいるというイメージを植え付けたかった。
梶井にとって、自立し、男性と同じ立場で物事を考える里佳は心の深く、本人も気づいていないところで憧れであり嫉妬の対象だったのではないでしょうか。
だからこそ里佳を落としたかった。
ひやりとしたバターを口に入れて、そのまま舌先から身体が沈んでいくあの瞬間のように。
結局里佳は梶井に勝ったのか、それとも一度殺されたのか、それは人それぞれ見え方も違うと思います。
ただ決定的に梶井と梶井の被害者達と里佳の異なる点は、里佳は自分のために料理ができるということです。
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実際のあの事件の犯人とどこまで一致してるのかはたまた全く違うのか分からないけれどこれはこれで物語としては面白い。
読後胃もたれしそうでした(^^;;
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読み応えのある小説だった。
ストーリーはもちろんのこと、登場する料理の描写が、心と食欲を刺激する。
バターを食べた(くなった)人は結構いるのでは。
私は生憎…
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この作品、こってり感がすごい。
少し変わった味でスパイスが効いてるのに美味しくて最後まで食べて少しもたれる多国籍料理みたい。
最後まで書き上げた作者さんが純粋にすごいと思った。
主人公の心理描写や、世論の描写がかつてないくらい鋭かった。
書き手はもちろん読み手もかなり疲れたのではないかと思う。
実際に起きた犯罪がベースになってはいるが、人の感じ方、生き方の話だったと思う。
世間の目って本当は内にある自分の目なのではないかと思う。
最初は世論や、他者の生き方に翻弄され、縛られている登場人物が適量=自分の生き方を見つけていく。
苦しいことも嬉しいことも味わいながら模索する主人公がすごいと思った。
ラストはある意味衝撃的だったし、主人公に惚れそうになった。(私も同じ女子高にいたら主人公を王子様扱いしていただろう。)
恥の文化が色濃く残る日本にとって、救世主となる小説なのではないかと勝手に思っている。
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やっぱりこの先生の描く小説は好き。どこか少女漫画のような雰囲気があるというか、内容は全然そんなものではないのに。出てくる女が魅力的なんだよね。私はやはり伶子がいちばん好き。可愛い。カジマナが泣く場面では、何故か自分も涙が出てしまった。私も自分の家を買いたいな
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この本を、読んでる間、お料理にバターを使う頻度が、多かったです(笑)
家族や友達、自分の大切な人に振る舞う料理は、
私を幸せにしてくれます。
美味しい顔!を、見る!
時間をかけて作っても、一瞬で、なくなるけれど、それが、又、楽しいのです。
実際にあった事件を元に作られた本という事で、そちらに惹かれて読んだ本でしたが、
色んな素敵な言葉に出会えました^_^
「里香のレシピに手を加えて、自分のものにするだろう。自分が、考えた名もなきものが、色や形を変えながら、世界に波紋のように広がっていければいい。スープに加えた隠し味のように。そんな連鎖を心のどこかで微かに感じながら生きていきたいと思った。」
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奇妙な友情で里香が変わっていく話だった。女の美しい友情というものが、存在しないものくらいに感じていた自分にとって新しい何かを発見できた気分になった。同時に、料理を自分のためにしてみたくなり、特にカトルカールを作りたくなった。
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『私が欲しいのは崇拝者だけ。友達なんていらないの。』ずぶずぶ。ずぶずぶ。梶井真奈子に飲み込まれていく。ぐるぐる。ぐるぐる。溶けていくバターと共に頁をめくる。2020年の暮れにとてつもない本に出逢ったんだな。読みごたえ抜群。人間模様に、匂い立つ描写に本を読んでお腹も一杯になった思いだ。柚木麻子さん、最高です。
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男たちの財産を奪い、殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子(カジマナ)。若くも美しくもない彼女がなぜ──。週刊誌記者の町田里佳は親友の伶子の助言をもとに梶井の面会を取り付ける。フェミニストとマーガリンを嫌悪する梶井は、里佳に〈あること〉を命じる。その日以来、欲望に忠実な梶井の言動に触れるたび、里佳の内面も外見も変貌し、伶子や恋人の誠らの運命をも変えてゆく。
最後まで展開が読めなかったという意味では面白かったけれど、里佳や伶子のキャラクターには最後まで違和感が拭えなかった。なんかなあ、過去を引きずっているにしてもここまで梶井に飲み込まれてしまうものなのだろうか。心の弱さにつけ込むという意味で梶井には明確な悪意があって、結果的に殺人へ繋がっていった。最近のSNSでの誹謗中傷を契機に自殺した著名人の事件を見てると、人間の悪意には果てがないなあと思う。直接手を下さなくても、そこにあるのは人を殺す力だという事実を忘れてはいけないですね。しかしこの本を読んでいると、とにかくおいしそうな描写が多くておなかが減ります(笑)
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決してつまらなくい訳でもなく、読みづらい訳でもないのに何故か読むのに時間がかかってしまった。
それはバターの濃厚さのためなのか!?
犯罪者を取材していくうちに、相手の思考に侵食されていく展開は目新しくないが、価値観とか男女の性差とか色々考えさせられる。