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ビジュアル医学全史 魔術師からロボット手術まで みんなのレビュー
- クリフォード・ピックオーバー (著), 板谷史 (訳), 樺信介 (訳)
- 税込価格:4,620円(42pt)
- 出版社:岩波書店
- 発売日:2020/01/26
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紙の本
人類の挫折と苦難の歴史から、発展「医学」の恩恵を教えてくれる本
2020/08/06 20:27
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投稿者:永遠のチャレンジャー - この投稿者のレビュー一覧を見る
新型コロナウイルス感染症の大流行(コロナ禍)の最中に本書を読むと、切ない気持ちで一杯になる。
「旅行が容易となりグローバリゼーションが進む中、世界のどこかで起こった流行は全ての国にとって脅威となりうる」(25頁)
「病院は1つの建物にすぎない。(中略)苦痛と安堵に満ちた内的空間をもつことがわかるだろう。そんな場所は、人間を英雄的行為へと誘うのである」(59頁)
未知のウイルスは勿論、種々の病疾患と闘ってきた(現に今も闘い続けている)人類の挫折と苦難に満ちた歴史を通じて、発展を遂げた医学の恩恵を当たり前に享受する我が身の有難さに改めて気付かされた。
「PCR」(ポリメラーゼ連鎖反応)の項目(238頁)も今では誰もが毎日耳にする用語だが、キャリー・マリスの自伝を読んだときは、正直、どんな化学方法を発見し開発したのかよく判らなかった。
製薬会社や医学学会への辛辣な批判に満ちたHIV=エイズ原因否定論、「人間中心主義の幻想」として地球温暖化による気候変動を認めない博士の奇人変人ぶりに反感を抱いたのだが、ノーベル化学賞受賞に見合う人類への貢献は認めざるを得ない。
掲載項目のうち、「生物兵器」(25頁)、「『チフスのメアリー』の幽閉」(142頁)、「風邪」(147頁)、「自己免疫疾患」(197頁)、「抗体の構造」(208頁)などが、時節がら興味を惹いた。個人的に子供時代の疑問が氷解した「理容店のサインポール」(22頁)が役立った。
思うに、人類の英知は、経験に学ぶことも然りながら、とりわけ<想像力>にある。これは、換言すれば、他者への<共感力>に優れているということだ。
だからこそ、コロナ禍にあって自分だけは大丈夫との独りよがりな考えは過信と映る。感染者を過剰に恐れて差別し、根拠のない言動で他人を傷つけてしまう行為は、人間らしい<想像力>や<共感力>に欠けているから、ひどく残念である。
著者が巻頭に引用するヒポクラテスの言葉、「医術への愛のあるところ、必ず人類への愛あり」は、医学が<想像力>と<共感力>という二つの人間特性に支えられつつ発展してきた科学領域であること、文学や芸術は感性を刺激しそれらを研ぎ澄ませる研磨剤の役割を担うことを示している。
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